俺が生きる意味 1 (ガガガ文庫)

【俺が生きる意味(レゾンデートル) 1.放課後のストラグル】 赤月カケヤ/しらび ガガガ文庫

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愛憎入り交じる、生き残りを懸けた物語

「斗和くん、何読んでるの? 試験前なのに余裕だね」
人生最後の平穏の日。
人類が生態ピラミッドの頂点から転がり落ち、人間が捕食される側にまわった日の学園生活は、青葉萌由里のそんな言葉からはじまった――。

放課後、萌由里とその親友である赤峰寧々音から同時に別々の場所へ呼び出しを受けた。それが自分への告白であると気付いた斗和は、返事をするために移動を始める。
そのときだ。ピィンと弦を弾くような耳鳴りが聞こえ、世界が一瞬、暗転したように感じた。自身がどこか、高い所へ上っていくような錯覚を覚える。夢から覚めるときの感覚に似ているような気がした。
それは単なる錯覚だったのかもしれない。耳鳴りが消え去った後も、教室や自分自身にもなんら変化はなかった。
いや、何かが違う。どこかおかしいと思った。漠然とした不安が渦巻いているような気がする――そう、この予感は正しかったのだ。

第5回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞『キミとは致命的なズレがある』で異彩を放った赤月カケヤ、待望の新作!
イラストを担当するのは、表情豊かなキャラクター描写が好評のしらび。
しまった。てっきり、デビュー作と同じ種類のサイコサスペンスか、青春モノかと思い込んでいた。だって、タイトルからして内省的に自問自答を繰り返す青春の悩みが主題みたいじゃないですか。ちと読むの面倒臭いな、と思ってスルーしてたんですけれど、一応1巻確保はしてたんですよね。それで年末に余裕ができてタイミングも合ったので(たまたま掘り返した)試しに読んでみたら……これ、閉鎖環境のパニックホラーものじゃないか!! あらすじも見ずに読むまで気付かなかった方も気づかなかった方なんだけれど、いやあ事前に情報入れずに読むと面白いですよね。なかなか何の前知識もなく読む、という事は叶わないので新鮮でした。
それ以上に面白かったなあ。学校という日常の環境が突然、怪物の跋扈する檻となり、良く見知っているそこを命がけで逃げまわることになるという恐ろしさ。昨今だと、ゾンビものなんかで妄想するシチュエーションですけれど、ハッキリ言ってこれに出てくる怪物の不気味さ、理不尽さ、おぞましさは衝撃的ですらあります。初っ端から生徒や教師がなで斬りのように虐殺されていく、これぞ阿鼻叫喚の地獄絵図。最初から人数が少ないんじゃなくて、恐らく数十から百人近く残っていたはずの殆どの生徒たちが殺されてしまい、一息つく頃には一握りの人間しか残っていない、というのは生き残った人たちの精神の追い詰め方としては極まっていますよ、これ。
単に怪物に襲われて追いまくられて、じゃないですもんね。目の前で次々と自分の友人や顔見知りが、まともな死体も残さない殺され方をしていくわけですから。ただ死ぬだけじゃない。こんな死に方をしたくない、と心の底から思ってしまうような惨たらしい死に様を嫌というほど目にした末であります。そりゃもう、冷静さなんて残ってないですよ。
それで考える余裕もなく大量の怪物に襲われる、というのならとにかく逃げ惑っていればいいものなんですけれど、いやらしい事にここでは怪物は決して数が多くないわけです。しかも、怪物がうろつくテリトリーも明らかになってくる。つまりは、一端息をついて話し合う余裕がある、という事なんですよね。これは、生き残るための対策を練り、協力しあう体制を作るのに大変ありがたい余裕ではあるんですけれど、同時に追い詰められた人間心理が暴かれる事にも繋がるわけです。正気を失ってもおかしくはない状況、皆の理性の糸がギリギリまで張り詰められている中で、生き残るために何が出来るのか、何が起こるのか。単に怪物の脅威だけじゃない、迫真性が、緊迫感が常に背中を突き飛ばしてくる、これは面白いに決まってますよ。
操と卓二の関係が明かされないままだったので、凄く気になるのは気になるんですけれど、それよりも引っ張られているのが青葉なんですよね。あんな思わせぶりな前振りしておいて、結局勿体つけたまま2巻に続く、になっちゃったからなあ。最初はアレ、口絵と合わせて絶対に初っ端から脱落するのかと本気で思っちゃいましたがな。でも、違ったとなると微妙に様子が異なるのと冒頭の描写と合わせて、凄く怖い予想が成り立ってしまうわけで、その可能性を秘めたまま次の巻に移行とか、凶悪ですよ、引っ張り方がえげつないですよ!!
出来れば王蛾先輩はテンプレートから逸脱して欲しかったなあ。もうこの人、キャラがたった時点でお約束としてどうなるかわかっちゃったし。むしろ、お約束を逆手に取ってくれるんじゃないかと期待はしたんですけれど。でも、思ってた以上に〆方が男前すぎて……あかん、かっこ良すぎるぜ、先輩。尚更に、ダメージデカイですわ。
もう完全に次回に続く、というところで終わってしまったので読んでるこっちも息も絶え絶えです。幸いにも、自分が追いかけそこねていた分、続刊出ているのですぐに読めるのですけれど。早急にゲットせねば。