魔王殺しと偽りの勇者2 (ファミ通文庫)

【魔王殺しと偽りの勇者 2】 田代裕彦/ぎん太 ファミ通文庫

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残る《勇者候補》は、不死身の傭兵と伝説の大魔導師!

《勇者候補》も残すところ、不死身と噂される《傭兵》と、かつて王宮に勤めていた《大魔導師》の二人となった。
この中に魔王を倒した真の勇者がいる――すぐにでも行動を起こしたいエレインだったが、相も変わらずユーサーの腰は重い。
そんな態度にしびれをきらし、エレインは一人で《傭兵》ダリオンに会いに行くのだが……。
各人の思惑が錯綜する中、すべての事柄はひとつに繋がり、隠された真相が浮かび上がる――。
証言の矛盾を突き、嘘を暴く疑惑のミステリアス・ファンタジー第2巻!
くわぁ、なにこれ面白い! うん、大魔王殺害事件の真相と、その裏に横たわっていた大きな事情が明らかになっていくミステリーとしての構成も面白いんだけれど、それ以上に真相を突き止めていくにつれて思慮深くなっていくエレインの成長物語としての要素がとかく素晴らしい。最初は深く物事を考えることが苦手で表面的な部分だけ見て短絡的に判断し、短慮を繰り返すばかりだったお馬鹿な脳筋だったエレインの、この変わりようときたら、第一巻の最初とこの2巻のクライマックスを見比べてみるとよくわかるだろうし、読み終えた今となると感動すら覚えてしまう。
何よりこのエレイン、確かにお馬鹿で脳筋なんだけれど本当に素直で人の話を良く聞くんですよね。気が早いものだから短気に見えるけれど、何気に辛抱強くて、ユーサーの皮肉屋で意地悪な言動に対して怒りながらも決して無視はしないし、怒って席を立ったりもしないし、聞かなきゃいけないところはちゃんと聞き逃さずしっかりと受け止める事を欠かさなかったわけです。ユーサーって、最初かなり適当にエレインをあしらって済ますつもりだったように見えたんだけれど、ユーサーが魔族にも関わらず聞いていて正しいと思ったことは世間の常識とかけ離れていても素直に受け止めて、公正に判断するところにナニカ感じるものがあったのか、この2巻では積極的にエレインに自分で考える事を促し始めるんですね。前はもっと意地悪が目的でしたけれど、後半に行くと明らかにエレインの成長を促そうとしているのが見て取れました。
考えが足りないのは無知だからで、エレインはスポンジが水を吸うように固定観念に煩わされず自分で「考える力」をユーサーによって呼び起こされ、蓄えていくわけです。
ほんと、最初は知力一桁、みたいな感じだったのになあ。彼女を見ていると、頭が悪いのと自分で考える能力がないこととは一切関係がないことがよく分かる。
偏見も常識も取り払って、自分の目の前に取り揃えた事実だけを材料にして真実をたぐり寄せることが出来る。これは素晴らしいことだと断言できますよ。そして、脳筋と言われながらもエレインはそれを素直に、誠実に、出来る逸材だった、と。
だからこそ、誰が大魔王を殺害したか理解し、またこの事件が起こった背景に考えが及んだ時に、思考停止せずに自分がどうするべきかを自分で考え、自分で決断出来たのでしょう。多分、ユーサーが安易に答えを教えてしまっていたら、エレインは真実を持て余してしまったんじゃないかしら。
だが、ユーサーが導いたエレインの成長は、彼女に真実に耐えられる力を与え、どうするかを判断する思慮を与え、それを実行する勇気と自信を与え、そしてユーサーの思惑をも上回る知性を与えたわけだ。
最後のシーンは、ついにエレインがユーサーに対して対等のパートナーになったことを想起させる、思わず微笑みを浮かべてしまう良いシーンでした。

うん、確かにこれ、上下巻だけで終わってしまうには勿体ないくらい良い作品ですわ。事件は解決しましたけれど、次なる新しい事件が起こって、という展開ならなんぼでも続けられそうですし。終わるのが勿体ない。ユーサーとエレインのコンビが思っていた以上に良い感じになってましたし、何よりエレインの成長が本当に清々しかった。元々、素直さと吸収力が、短慮な部分の愛嬌と相まって凄く好感の持てる娘だったんですけれど、弄られ可愛いだけじゃない出来る娘になってくれましたし、ピカイチですよ、このヒロイン。
この調子だとユーサーにイジられて涙目になるだけじゃなく、このまま成長して強かに反撃してくれるくらいになってくれれば、さらに良いコンビ、良いカップルになってくれそうなんですよね。そんな二人をまだまだ見たいなあ。あの、エイレンより頭悪そうな魔女っ子が、微妙にパーティーに加わっても面白そうな配置になってるし。続き、出てくれないかなあ。

1巻感想