量子魔術の王権魔導<レガリアコレクション> (Hj文庫)

【量子魔術の王権魔導<レガリアコレクション>】 ハヤケン/miz22 HJ文庫

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その手に禁断の魔導書をダウンロードせよ!

集積回路上にデジタル化した魔法陣を展開することで、魔術を汎用化する最新技術《魔術式》。
聖珠学院科学部に在籍する二神和也は、大切な人を守るため、不得手ながらも日々魔術の訓練に励んでいた。
和也は妹をさらった魔術式使いに対抗するため、自らが考案した禁断の魔術式《王権魔導収集》を執行する!
携帯端末で魔術を操る本格バトル起動!
うははは、確かにこれは愛すべきバカだ。あとがきで主人公のキャラクターは愛すべきバカにした、と記されてあるんですけれど、まさにそんな感じなんですよね。うわぁ、バカだなあ、と思うような突っ走り方をする男の子なわけですよ。損得抜きに一途にガガーーッと邁進しちゃう、みたいな。性格もネアカでとにかく明るい。深刻な場面でも暗くならずに、やったるぜー!みたいな勢いを失わない。結構、しんどい立場なのにそれを表に出さないんですよね。周りの人間に決して辛い表情を見せずに、ニコニコケラケラ笑ってる。本気で笑っていられる奴なのです。バカですよねー、ほんとバカなんですけれど、これが無性に愛しくなるバカなわけですよ。頑張れ頑張れ、と応援したくなるようなバカなんだなあ。
というのも、彼の場合考えなしのバカじゃないんですよ。何も考えずに短慮ばかりして周りに迷惑をかけてしまうようなバカとは一線を隠している。何にも考えていないようで、彼は常に物事に対して思慮を巡らしていますし、自分の置かれた立場や苦しい現状に対して深く思い悩んでいますし、それに対して思考停止もしていない。常に努力を欠かさず、今の立場を覆そうと頑張っているわけです。苦しいでしょう、辛いでしょう、悔しいでしょう。でも、そんな負の感情を八つ当たりに周りにぶつけることなく、平気な顔をして周囲の親しい人たちに心配をかけまいとしている、健気じゃないですか、ひたむきじゃないですか。凄く気持ちの真っ直ぐなバカじゃないですか。そりゃあもう、見ていて可愛くなりますよ。
ネーミングセンスのアホさ加減まで愛しくなってきてしまうほどに。いや、深刻にあのネーミングセンスはヤバいと思いますけれど。二周回って実はイカしてるんじゃないのか、と妄想してしまうほどに。いや、なんか本気でかっこ良く思えてきてしまったぞ、洗脳か? 洗脳なのか?
そんな愛すべきバカに夢中なのが、幼なじみの綾芽さん。世間的には劣等生の和也とは釣り合いが取れない、と言われるほど家柄も能力も将来就く立場も突出している彼女ですけれど、中身はかなり残念です。いやあ、和也にべた惚れなのはいいけれど、若干アホなんじゃないか、というくらいの親バカならぬ和也バカみたいな惚れ方をしているような。バカ同士、良くお似合いだとは思うのですけれど。とはいえ、変にベタベタしすぎず、或いは素直になれずに云々じゃなく、かなり自然なカップルなので見ていても思わずニコニコしてしまうお似合いっぷりなんですよね。好き、という感情すらもバカ正直、というべきか。
和也の方も、子供っぽい信念ですけれど、自分こそが綾芽を守ってやるんだ、という挟持は真っ直ぐで気持ちのよいプライドであり、男前な姿勢だと思いますし。綾芽の方も、あれでちゃんとお姫様幻想の持ち主で守られたい、という思いもあるようで噛み合ってますし。一方で自分こそが和也を守ってあげないと、というお姉さん気質というか過去の裏返しと現状の関係が相俟った幼馴染としての思いもあるようですけれど。でも、それを劣等感として感じないのが、和也の愛すべきバカなところなんだろうなあ。
つまるところ、お互いにバカなんで変に拗れないんですよね。実に噛み合ってる。

……ってか、ここに出てくる登場人物、概ねバカな気がしてきたぞ。綾芽の側近である環も、しっかり者みたいな風貌をしてかなりのおっちょこちょいだし、金づる、じゃなくて財布、じゃなくてえっとなんだ?? ともかく、仲間みたいになる美咲なんか、和也を倍増ししたみたいな頭の悪いヒーロー願望のバカですし。あの子はバカだろう。アホの子、とすら呼んでイイくらいダメだろう。そのあまりのアホっぷりがこれまた二周回って可愛く思えてくるんですけれど。アホの子、かわいいよね?

とまあ、こうしてみると他にも妹ちゃんやロリババア先生などキャラクターについてはかなり充実しているというか、魅力的というか、お笑い的に面白い逸材が揃ってるし、ラブコメとしても良いカップリングになってるし、掛け合いのリズムも軽快の一言で実に楽しい。設定の方も科学と魔術のミックス具合が結構バランスよく見栄えよろしくできていて、これはこれでよく出来てるんですよね。んで、ストーリーの方も王道ではあるんですけれど、盛り上がる箇所をちゃんと抑えている質の悪くないものだと思うんですよ……。
こうして、要素要素だけ見てるととてつもない傑作になって不思議はないんですけれど……何故か漂うちゃちぃ感じは何なんだろう。鼎が軽いというか、バタバタしすぎていて落ち着きがないというか、せわしないというか。なんか、凄く惜しい感じがつきまとってるんですよね。妙に大事なひと味が足りないというか。うーん、なんでだろう。理由がわからん。面白いのは間違いないんですよね、面白かった。何が足りないんだろう。
薄くは全然ないと思うんだけれど、軽すぎるのかなあ。って、何が軽くてどうすれば軽くなくなるんだ、と言われると言葉に詰まってしまうのですけれど。いやでも、好きですわ、これ。主人公の和也含めて、凄く好き。
出来れば、この子たちの物語をもっとじっくり隅々まで深く味わいたいなあ。