あそびにいくヨ! 18 (MF文庫J)

【あそびにいくヨ! 18】 神野オキナ/西E田 MF文庫J

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修学旅行!それは高校生最大のイベント!テロ対策として出発直前まで行く先の告げられなかった牧志高校二年の騎央やエリスたち。那覇空港に集合した生徒の一人から声があがる。「あのー、ガイドさん、俺たち行く先教えられてないんだけど?」「はぁい、では発表でーす。今回の修学旅行は四泊五日、京都大阪の旅でーす!」騎央は記録映映画用にデジタルビデオカメラを構えて、クラスメイトたちの笑顔を収めていく―。その先に待ち受けるのは子狐のつれた謎の美女!?はたして、こねこたちのびっぐ・じゃーにぃの顛末は如何に!?
ああ、ついにここまで辿り着いたか。ってか、このシリーズってMF文庫Jの黎明期から存在するホントの古参なんですよね。ガチで十年続いているシリーズだと考えると、なんかしみじみ感じ入ってしまいます。しかも、最近になって【キャットテイル・アウトプット】というスピンオフ作品まで登場しているのだから、まだまだ元気なシリーズなんですよね、大したもんだわ。
そんなこんなでついにエリスたちの関係はひとつの完成を見ることになりました。ぶっちゃけ、ここに真奈美が加わる形になるとは、途中までホントにその可能性を除外していたので、三人じゃなく、エリスと騎央、葵に真奈美という四人で関係が完成したのは感慨深いです。真奈美は当初から幼馴染にも関わらず、キッパリと一線を引いて距離を置いていましたからね。逆に幼馴染キャラで最初は離れていたのに、最終的に結ばれるというパターンは
だいぶ珍しいんじゃないだろうか。果たして、最初からこの形になることが計画されていたのか、それとも途中で物語の、キャラの要望から路線変更することになったのかは定かではないのですけれど、今となってみるとエリスと騎央と葵の三人だとやっぱりバランス悪いんですよね。どうも押し出しが弱いというか、エリスの動性にまかせてもイマイチぎこちなさが残ってしまいそうな人間関係のバランスだったんですよ。葵も騎央も随分と人間的に成長してましたけれど、根っからの性格というものがありますからね。でも、ここに押しが強くて時々弱腰な真奈美が加わると見違えるように関係性が頑丈になったのは、今の四人の揺るぎなさを見ても否定しづらいところでしょう。
結局発情期のアレは、思ってたのと違ってリアルじゃなくてバーチャルだったみたいだけれど、もうあのレベルだとどっちでも関係ないよねw

成長したといえば、成長著しいのがアントニアだったのでしょう。いい意味でも悪い意味でも、大人になった、というべきなのでしょうか。今の彼女は逆にもう少し物分かりが悪いふりをしても良い気がするんですけれどね。大人になったことが、現実を割りきらなければならない事を理解した、というのはちょっと寂しいじゃないですか。まあね、でもわがまま言うのって、あるラインを超えると逆にしんどくなっちゃうもんなんですよね。わがままを言った結果のどうにもならなさと、言われた人たちの苦労を事前に察してしまえるようになるとね。言うのが辛くなるもんだ。言っても辛い、言わなくても辛い。誰が悪いわけでもないから誰も責められない。仕方ない、仕方ないんだけれど、さて仕方ないを諦めの言葉として使うか、妥協として次に繋げる可能性に仕立て上げるか。アントニアはどうするんでしょうね。

一方で、物語の核心部分も介入してきて、騎央の元に現れることになる。ある意味SFの定番ともいうべき展開なのかもしれないですけれど、なんていうんだろう、あのオーさん。階梯の降りっぷりが太っ腹というかなんというか。行き詰まっている存在のわりに、結構楽しそうな風に見えたのは気のせいだろうか。行き詰まってしまったが故に後戻りして、後発の生命体たちに新たな可能性を見出そうとしているはずなんだけれど、そこに悲壮感とか無機質さはあんまり感じなかったんですよね。むしろ、ワクワクしているような、無邪気でちょっと無責任な稚気がかいま見えた気がして、なんとも不思議な部分に。なんとなく、取次を狐さんに頼んだこと自体、今のオーさんという存在は、狐さん寄りになってる気がするなあ。
騎央からすると、大迷惑以外の何者でもないんでしょうけれど。気楽に、というのも渡されたものを思えば言えたもんじゃないですけれど、少なくともオーさん相手に肩肘ははらんでも大丈夫そうな気がするなあ。

さて、時系列も【キャットテイル・アウトプット】の方に合流し、物語はいよいよクライマックスだ。

神野オキナ作品感想