スカイ・ワールド6 (富士見ファンタジア文庫)

【スカイ・ワールド 6】 瀬尾つかさ/武藤此史 富士見ファンタジア文庫

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スカイワールド―それは魔法と科学技術が同居する世界で、無数に浮かぶ島から島へと飛空艇で旅をするオンラインRPG。封印都市シャッカイの地に降り立ったジュンたちは、第三軌道への手がかりを探しつつも、レベルを上げ、装備を整えて、チームの戦力をアップさせるべくクエストを進めていた。そんな中で遭遇した神話的クエスト『真なる竜への試練』。六人しか入れないダンジョンのため、ジュン、かすみ、エリ、ユーカリア、ヒカルといういつものメンバーに、サクヤ班からアサシンのチョココロネを借りて挑むことになり―。竜の歴史の扉を開く、熱きオンライン冒険ファンタジー!!

あれ? 六人パーティーでのクエストというから、いつものジュン班にサクヤが加わるものかと思ってたら違うのか!  代わりに参加してきたのがチョコちゃん。……こいつ、ちびっ子のくせにサクヤの同級生なんだよなあ。エリよりも年上なんだぜ。年下の女の子の膝の上に座ってご満悦の幼女先輩。
でも、ホントに意外だ。ここでサクヤがパーティーに加わって、他のメンバーと交流を深めて人間関係に化学反応を起こすことは、物語の展開的にちょうど要求されている時期だったはずなんですよ。ところが、そんな制作サイドの必要性を見事に無視して、サクヤたちが置かれている状況が要求している配置を優先してるんですね。確かに、ここでサクヤが【覇者の御旗】の総指揮を抜けるというのは、ユズに死ね、と言っているようなもんで、まあそうでなくても様々な判断や決断が要求される大事な時期に、サクヤとジュンという要の二人が抜けてしまうと、あっちこっちで不備が出て一気に【覇者の御旗】やシャッカイの安定性が瓦解しかねないのも非常に理解できる話なんですよ。だから、ここでサクヤがパーティーに加わらなかった、というのは理解できる。ただ、そのしわ寄せがどこに行ってしまったかというと、回り回ってエリのところに出てしまったのが今回のトラブルの原因だったんじゃないだろうか。
ぶっちゃけ、エリとサクヤは早いとこ直接面と向かって決着つけんことには、エリの性格的にもどうしても歪みがここに出てしまうんですよね。ジュンの野郎は身の程知らずにも、というべきなのか、チームの人間関係を理屈で管制しようとしていたわけですが、これはサクヤの切羽詰まったちゃぶ台返しで台無しにされた上に、エリの感情的負担を考慮しきれてないものだったので、ヒカルとユーカリアから総駄目だしを喰らってしまったわけで……。悪気はないんだろうけれど、恋愛が中心と成った人間関係を、ゲームの戦闘みたいに管制しようというのは無理とは言わないけれど、かなり難しい案件だぜ。実はサクヤもこの当たり、ジュンと同じロジックで人間関係をコントロールしているんで、ホント似たもの同士だなあ、と苦笑せざるを得ない。
ヒカルとユーカリアは、ジュンとサクヤが何をやってるか概ね理解出来てるんだけれど、この娘たちは汚れ役というか自分の気持ちにも人間関係にも割り切りという名の受容ができているので、ジュンもサクヤもやろうとしていることは決して自分にとっては損ではない、として受け入れる判断ができているんだけれど、エリはそもそも自分の感情について判断ができてない上に、サクヤの存在を受け入れきれていない、ときて真面目な分妥協しにくい上に、自分の中で貯めこんじゃって概ねそれを我慢できる娘だから、とにかく一切合切の歪みが彼女のところに集まっちゃったんだなあ、これ。おまけに、このチームのバランサーというか、人間関係の調整役、支援役という要がエリなんですよね。彼女こそがそうした歪みを捌いている肝心要でもあったわけで……。
そりゃ、エリに頼りすぎだ、と怒られても仕方ないわなあ、これ。だいたい、一番年下だってのに、エリが。

さて、久々に6人という少人数のパーティによるクエストに焦点が集まったわけですけれど、改めて見るとMMORPGモノの中では、この【スカイ・ワールド】がやはり頭ひとつ抜けてガチでMMORPGというゲームしてますよね。とかく、ゲームシステムの描写の緻密性がパないです。たとえば【ログ・ホライズン】と比べても、純粋なゲームシステムの活用としては、こちらの方が描写としては濃い気がします。あっちは、ゲームから一皮剥けちゃってまた違うステージに行ってますからねえ。向かった方向が違うのですけれど。
そして、この物語の舞台が「ゲーム」の枠から逸脱していないということは、作中で語られているようにゲームヲクリアした、その後、という観点が現れてくるんですよね。二周目については、ジュンやヒカルが拒絶的反応を示しているのを見ると……ゲームが終わったあと、という点については結構重要なポイントなのかもしれないなあ。どこまでも、どこまでも、飽くなき先を望んでいく……。ふっと、作者の最初期の傑作である【クジラのソラ】が頭をよぎったり、ふぅむ。

瀬尾つかさ作品感想