覇剣の皇姫アルティーナIII (ファミ通文庫)

【覇剣の皇姫アルティーナ 3】 むらさきゆきや/himesuz ファミ通文庫

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あたしは帝都へ行くわ。たとえ、そこに暗闇が待っていようとも。

難攻不落の敵要塞を見事に制圧したアルティーナ。そこへ一通の書状が届く。
それは第二皇子ラトレイユから建国記念祭に出るようにとの要請だった。
宮廷には軍権を握るラトレイユだけでなく、その参謀ジェルマン、第一皇子オーギュスト、地方貴族を束ねる公爵家の女傑など、幾つもの勢力が策謀を巡らせていた。
アルティーナの大望を阻む政敵たちに軍師レジスは後手を踏んでしまうが……!?
覇剣の皇姫と読書狂の青年が織り成す覇道戦記ファンタジー第三弾!
あ、ダメだこの娘。絶対に王様にしちゃいけないタイプだ。理想というだけの明確なビジョンもなく、善意だけで邁進しようとしている。結果を気にせず過程に拘り近視眼的に目の前のことにかまけて全体を台無しにするタイプだ。堪え性もないし、遠回りとか今は我慢して、とか出来なさそうだし。
神輿に徹することができればいいんだろうけれど、バカで直情的だからなあ。
じゃあオーギュストならいいのか、というとこの人はこの人であんまり視野が広くなさそう。国益というものについて損益を考慮するのは当然のことなんだけれど、この人の場合その損益の判断基準の見方が恐ろしく狭い感じなんですよね。自分の理解の及ぶ範疇でしか物事を捉えていないようで、為政者としてはどうにも片手落ち。ワンマン経営者にありがちな在り方なんですよね。自分の周囲にもイエスマンしか置いていないようですし。

というわけで、宮廷に赴いての、アルティーナの兄たちのお披露目と彼らとの宮廷暗闘劇が今回の目玉。ぶっちゃけ、アルティーナが戦力外どころか足を引っ張るのはわかりきっていたことなので、宮廷とは縁のなかった平民のレジスがどれだけ巧く立ち回れるかが見極めどころだったんだけれど……流石は軍師というべきか、戦術戦略のみならず、人の間を立ちまわる謀略戦も駆け引き込みで行えるのは良い傾向でした。この手の謀略戦は、先を読めれば読めるほど有利になるわけで、その点においては様々なパターンを読書によって脳内に収納しているレジスからすると、もしかすると戦場よりもまだ手の打ちやすい展開だったのかもしれない。相変わらず、前例がないパターンでは硬直してしまう危なっかしさがありますが。
でも、やはりレジスには政治は無理だよなあ。あれですよ、政争と政務はまた違う。選挙に強くても政治活動はからっきし、みたいな感じで、実際アルティーナの治世となった時にレジスが宰相として振る舞えるか、というと疑問を抱かざるをえない。政治経済の実務ほど、教科書が役に立たないものはありませんし。何が正しいかやってみなくちゃわからないし、実際に結果が出てもそれが正しかったのか分からない場合すらあるわけで。とてもじゃないですけど、レジスにアルティーナへ適切な献策が出来るとは思えん。
やはり、ここはちゃんと政治が出来る人材が欲しいですよね。アルティーナには絶対無理、ということがわかったので尚更に宰相、外務大臣候補が欲しい。今回、流れで囲うことになった人たちが、それを担ってくれたら助かるんだけれど……そこまで求めるのは立場的にも能力的にも難しいかなあ。むしろ、あの地方貴族の束ね役の人の方が有望かしら。あれは、キチンと信義を保ちつつ汚れても構わない覚悟も持ってそうだし、いい意味でも悪い意味でも強かに立ち回れそうだし。