男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。 (1) ―Time to Play― (上) (電撃文庫)

【男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。 1. ―Time to Play― (上) 】 時雨沢恵一/黒星紅白 電撃文庫

Amazon

僕は高校生にして電撃文庫で作家デビューを果たした。執筆のため1年間休学した後、転入した高校で出会った彼女・似鳥絵里は新人声優で―僕の作品のアニメの出演者だった。僕らは、学園内で自分の仕事を秘密にしているけれど、似鳥はクラスの人気者、僕は一人ぼっち…。そんな僕らが会話を交わす唯一のチャンスは毎週木曜日、アニメのアフレコに向かう特急列車で、隣の席に乗り合わせるときだけ―。よりよい演技のためにと、彼女からの作家業についての質問に答えていくうちに―どうしてこうなった?これは、僕が、やがて意識を失うまでの、走馬燈のような、お話。
長いよタイトル!! 長文タイトルの季節はもう随分と前に過ぎ去ったんじゃなかったのか(笑
敢えて時期外れの流行りに乗ってみるのはこの人らしいのかもしれないけれど、それはそれとしてどう略せばいいんだろう。首絞めか、首絞めなのか!? あと、タグ入れたら長すぎるって怒られた……。
事実、この作品って首絞めが圧倒的なエッセンスになってしまってるんですよね。この首を絞められている、という状況が挟まれているお陰で、作品のジャンルそのものが定まらずに予断を許してくれない緊張感を漂わせてるのである。これがなければ、もっとダラダラと中に入り込まずに読み通してしまったかもしれないのだけれど、なぜ先生が彼女に首を絞められてしまっているような状況に陥ったのか、という疑問が常に突きつけられていて、喋っている内容は先生が作家になるまでの事を似鳥さんから問われる形で答えていく質疑応答、或いはQ&A、もしくはハウツー本といった様相にも関わらず、首絞めという一点があるお陰でサスペンスの要素が介在していて、常にドキドキしながら読み進めるはめになってしまったのである。時雨沢さん特有のユーモア、ウィットに富んだ軽妙な掛け合いの中に、果たして首絞めへと至るヒントが隠されているのか、なんてことを気にしながら読んでいくものだから、緊張感が途切れないんですね。
これで、ハウツーの部分がつまらなかったらさすがに疲れるんだけれど、これがまた丁寧かつわかりやすい説明で非常に理解しやすく、面白い。なるほどなあ、と思う部分も多くて、この手の主人公がライトノベル作家という作品は最近ちらほら見かけだしたけれど(【エロマンガ先生】とか)、応募する時のコピーの仕方とか冊子のまとめ方なんか、為になる話なんじゃないだろうか。
一方で、実際の執筆の仕方については、これは作中でも念を押して書かれているけれど、人それぞれですよねえ。プロットは大事、としつつもプロット無しで一気に書いてしまうケースも有る、という風にいろんなやり方があるのを実際に示してみせてくれてるところなんか、凄まじく親切ですらあると思いますけれど。実際、プロット無しで書いてると豪語している作家さんもいらっしゃいますしね。まあ、書き方については参考までに、と言ったところなんでしょう。
しかし、【エロマンガ先生】の先生が全ボツ食らいまくってる一方で、こっちの先生は全ボツ喰らったこと無い、というのはスタンスというかスタイルの違いが見えて、面白いなあ。
あと驚いたのが、原作者ってアニメ化した場合毎週アフレコ見に行ってる、なんてケースもあるんだ。もちろん、中にはこうしたケースもある、というぐらいで全部じゃないんだろうし、ホライゾンの時なんかの話聞いてるとそれどころじゃなかったみたいだしw ただ、アニメ化なると途端に執筆ペースが落ちるパターンが多いのは、執筆する以外の仕事や作業がどうしても増えてしまうから、というのはこれ見てもわかる気がする。
かなり電車代掛かりそうだけれど、これって経費落ちるのかしら。って、自営業作家の確定申告ってやっぱり面倒そうだ。
作家というものを生業とするということは、仕事である以上ただただひたすら書くことに没頭するわけには行かなくものなんだよなあ、というのが自身の経験を反映したラノベ作家主人公の作品を見て大いに感じたところである。要フットワーク。社会人とはそういうモノなのよね、実際の話。そしてあれこれ必要の余分が増えたその上で、ひたすら書くことに没頭しなきゃいけないわけで……兼業作家とか、そりゃ大変どころじゃないわ。

ともあれ、どうして首絞めになるのか、こうなると気になって仕方がない。時雨沢さんのやり口からして、身も蓋もない形に終わることも考えられれば、容赦なくやっちゃうパターンも大いに想定出来るだけに、予測がつかないというのが正直な所。次回は三月か。

シリーズ感想