フルメタル・パニック!  アナザー7 (富士見ファンタジア文庫)

【フルメタル・パニック! アナザー 7】 大黒尚人/四季童子 富士見ファンタジア文庫

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カルパチアの戦闘で旭を撃ち、その引き金の重さに苦悩する達哉。アデリーナやクララ、ユースフたちD.O.M.S.の仲間も、今はそんな彼を見守ることしかできない。そして最愛の弟を失った菊乃もまた、孤独の中で自身の弱さや脆さと向き合っていた。だがそんな少年たちをよそに、世界は危険な方向へと動き始めていた。中央アジアの紛争で投入された無人AS“ケントゥリア”の存在は、米ロ両大国の均衡すら揺るがそうとする。激動への予兆の中、D.O.M.S.が得た新たな力とは?不撓不屈のSFミリタリーアクション、一意専心!!
折れず歪まず撓まず砕けず、強靭に鍛えられたか。初めて人を殺したことは、達哉にもっとダメージを与えると思ったけれど……いや、違うか。ダメージが少なかったわけじゃない。大きなダメージをちゃんと受け、痛みにのたうちまわりながらも、彼はそれを表に吐き出さず、きちんと自分の中で抱えて処理して、前に進む糧にしたのか。
偉いよ。
もっと女々しくじたばたするかと思ってた。そうだよなあ、覚悟はきちんと既に済ませてたもんな。その覚悟は口先だけのものではなく、ちゃんと彼の性根に据わったものだった、というわけだ。そして、達哉は逃避せず、機械のようになるなんて真似もせず、正しく戦士に成ることを選んだのだろう。
彼のこの姿は、少なからず彼をこんな道に引き込んでしまったことに罪悪感を感じていたアデリーナにとっては一抹の救いになるかもしれないし、女の子としてはグッと堪えて雄々しく立つ男の姿は胸にビビッとくるものがあるんじゃないだろうか。
その意味では、菊乃の存在はベストタイミングだったかもしれない。
うん、菊乃は正直どうなるか危惧していたところがあるんだけれど、バッドエンドを回避してくれたのは素直に良かった。ぶっちゃけ、クララは甘すぎると思うけれど、子供ながらに見る目はちゃんとしてるよなあ、この子も。いや、実際テロリストの捕虜に対してあれやらせちゃうのは、幾らなんでも暴挙の類だと見做されて仕方ないんだろうけどさ。いや、これに関しては彼女なりの判断というか信頼があったから決断自体は出来ただろうけれど、むしろ溝呂木さんの方が大胆だよ。クララみたいな根拠があったわけじゃないんだから。つまるところ、それだけクララって部下から信頼されてるって事なのかね。菊乃が最後まで一線を越えなかった、というのも大きいだろうけど。
いずれにしても、菊乃がヤンデレを卒業して純愛系にクラスチェンジしてしまった今、リーナとしても今までみたいな曖昧な態度でいつづけることは許されなくなってきたわけだ。何しろ、菊乃ってば完全に真っ向から宣戦布告してきた上に、アプローチためらうウブな性格とは遥か彼方に遠いもんなあ。今回の一連の出来事でもう完落ちしちゃってて、曖昧な恋心じゃなくなってますし。まあ、リーナもグジグジするタイプじゃないので、決断したら早そうですけれど。冥利に尽きるな、達哉は。ちゃんとそれに足る良い男になってきているのがまた彼の素晴らしいところですけれど。技量の超抜進化もそうだけれど、何よりイイ男になってってるよ。
まあ、わりと真っ当な恋の鞘当てがはじまりそうなメイン組からさておいて、実はユースフサイドの方が結構気になるんだよなあ。もちろん、幼妻は鉄板だろうけれど、幼馴染のメイドさんの態度がまた微妙なんですよね。部下に徹しているはずだったのに、菊乃に突かれた時の反応は意外なほど大きかったですしね。表に出していない感情がどれほどあるのか。

あと、チラッと登場したロシアに喧嘩売った小国の大統領の息子近辺も、なんか面白そう。あそこ、完全に詰んでいるだけに、むしろそっからあの幼馴染組がどうするかが意外なほど興味出てきた。あれはあれで、なかなか良いカップルかと思うんだが。

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