千の魔剣と盾の乙女12 (一迅社文庫)

【千の魔剣と盾の乙女 12】 川口士/アシオ 一迅社文庫

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熾烈を極める魔王城の戦い。難敵ケンコスをついに退けたロックたちは、バルトゥータスとの久方ぶりの師弟再会を果たす。しかし、再会を喜ぶまもなくバルトゥータスはロックに真剣勝負を挑む。魔王との最終決戦を前に、愛弟子が魔王との戦いについてこられるか、その実力を見極めんとしているのだ。バルトゥータスにはたしてロックは打ち勝つことができるのか。そして、魔王との最終決戦。バルトゥータスとロックは魔王を倒すことができるのか、そして蒼輝の勇者サーシャを助け出すことができるのか。川口士が贈る本格魔剣ファンタジー、ついに魔王バロールとの最後の戦いへ!
ふわぁ……いやあ、これだけ正統派の魔王戦って果たして今まであっただろうか。この場合の正統、というのはドラクエ3とかあの辺ですね。魔王城に突入して、一番奥の玉座で待ち構えている巨大な怪物状態の魔王に立ち向かうスタイルでの魔王戦。意外と、このスタイルの魔王戦って小説系統では全然浮かんでこないんですよね。なんかあったっけ。
ラスボスが等身大の人間サイズだとまた違うんですよ。ちゃんと巨大サイズで知性があり、様々な特殊攻撃を仕掛けてくるという醍醐味がないと、RPGで味わったようなラスボス戦じゃないんですよ、こここだわりね。
その意味では、このバロールは百点満点と言ってイイラスボス魔王でした。初手の魔眼による即死攻撃から、肉弾攻撃、大威力の範囲攻撃に状態異常、などなど読んでてなんだか無性に嬉しくなってくるほどの魔王らしさで、今回ページの大半を割いての膨大な分量で魔王戦が描かれることになったのですけれど、最初から最後まで手に汗握りっぱなしの白熱した大激戦で、これもう文句なしの大満足のラストバトルでした。最近どころか古典までさかのぼっても、ホントここまで立派な魔王決戦見たことないよ。
しかも、囚われのお姫様ならぬ勇者様を救出するという王道イベント付き、ってあれ? 主人公バル師匠じゃね、これ? バル師匠絶体絶命の際に彼のために手を差し伸べられた救いの手がまた完全に主人公イベントなんですよね。まあ仕方ないか。こればっかりはバロール相手の戦いはバル師匠がメインでしたもんね。ぶっちゃけこの手の師匠キャラは死亡フラグ立ってるものなんですけれど、彼に関しては師匠キャラというよりももう一人の主人公だもんで、そういう気配全力で振り切ってたもんなあ。
それでも、バル師匠はともかくとしてサーシャの方が大丈夫なのかと不安が残っていたところだったんですけれど、文句なしに見事に救って見せたもんなあ。二十年近い執念が結実したわけで、大したもんである。
挙句、巻末ではバルトゥータス関係ないところでサーシャとニーウが仲良くなっちゃってる始末。あかん、こっちも嫁が二人になりそうだ。これでサーシャが一番年下で、ニーウがお姉さん、しかしサーシャの意識ではバルはまだ十歳の子供で弟みたいなもんだけれど、実際バルは三十超えたおっさん、という倒錯した三角関係なんですよね、なにこれ面白い。
しかし、バロール戦から間を置かずにそのままクロウ・クルワッハ戦になるのかと思ってたら、完全に予想外のとんでもない展開に。なるほど、今回の表紙がエリシアなのも相応の理由があったのか。
いやあ、バロール戦があまりにも激戦すぎたので、ほんとに今回で終わるのかと思ってしまいましたがな。まさか、リャナンシーがあんなことになるとは予測もしてなかったもんなあ。彼女の思惑が、あそこまで決意篭ったものだったとは思わなかっただけに。もうちょっと感情として冷たいものと思ってた。これも妖精の情、というやつなんだろうけれど、切ないのう。

ともあれ、二部関係でそのまま三部突入という思わぬ自体に。もっとも、続きは残り二巻だけみたいですけれど、バル師匠の旅はこれで終わり、これからは本格的にロックたちの物語だ。いやでもこれ、パーティーバランス的に彼女抜けたのめちゃくちゃ痛いんじゃね?

川口士作品感想