0能者ミナト(7) (メディアワークス文庫)

【0能者ミナト 7】 葉山透/kyo メディアワークス文庫

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七人ミサキ―入れ替わる魂を求め永遠に彷徨う、悪夢のような怪異。三年前、孝元が助力を求めたのは、今と変わらず横柄で奔放な湊だった。依頼人を守るために汲々とする総本山の手練れをよそに、まったくやる気を見せない湊。すでに悪命高い“零能者”に、僧達は忌々しげな態度を隠さない。だが、湊の自由な発想とアプローチは次第に皆の心を捉えていくのだった。連鎖する呪い、そしてその数の多さ。永遠に途絶えることがないという怪異に、湊は思いもよらない方法で迫る。
孝元さんの人の良さって、場合によってはコイツ黒幕なんじゃないのか、と疑ってしまうくらいのレベルなんだけれど、この人ホントに素でこれなんだもんなあ。せめて並外れたお人好しなだけで、他は無能力のろくでなし、だったらダメ人間属性の女性がひっかかりそうなんだけれど、むしろ逆に有能で何でも卒なくこなしてしまう、というのは一種の嫌味になってしまうんだろうか。あの時計占いを見ると、意外と食わせ者なんじゃないか、と思えてくるけれど。
しかし、孝元のお人好しさはミナトの無軌道の原因なんじゃないか、とすら思えてくる。ミナトの孝元への接し方って、もうこれ警察に通報してもいいレベルですよね。よくまあこんなのと平気で付き合ってるなあ。

さて、お話は「七人ミサキ」と、一夜にして、どころか目撃者がいる前で一瞬にして村人が消え去った村の謎の二編から。

最近、七人ミサキをお題にした話をよく見かけるんだけれど、つまるところそれってミナトが言っているようにそれだけ七人ミサキがメジャーな怪異、と言う事になるのか。ただ、普通の怪異と比べても危険性は段違いに高い気がするけれど。この作品の七人ミサキだと、一度狙われると場所を問わずに襲ってくるようだし。それにしても、年間二千人近い犠牲者が出てる、というのはとんでもない話だ。怪異の犠牲者数としては並外れてるんじゃないだろうか、これ。
だからこそ、現れたものを1つずつ潰していくというこれまで通りの対処療法ではなく、ミナトが企画したのが根本的な削減策だったんだろうけれど、その方法が素数ゼミの話を元にした生物科学的なアプローチ、というのが厳然と実在する怪異に対して科学的な方法で対処する霊能力を持たない0能力者ミナト、らしい方法で、そう言えばこの作品って、そういう話だったなあ、というのを思い出した。いや、最近って物語性がだいぶ濃くなったせいか、怪異を科学的に退治する、というテーマがあんまり印象に残ってなかったんで。
でも、素数ゼミの淘汰の理論は理解出来てるんだけれど、それを七人ミサキに当てはめてもセミと同じように淘汰しあって減っていく、というのがよくわからなかったんですよね。幽霊に生存競争って当てはまるのか? 理解力の乏しさを痛感した。
この話での犠牲者となる女性について、ミナトが殊更胡乱な目で見ているように見えたのは、確かに彼女自身の人格に問題があったのは間違いないにしろ、多分にミナトの罪悪感が含まれていたようにも見える。良心の咎めを少しでも宥めるために、この女はろくでもないやつだ、と強調して思い込もうとしていたような……。
結果として、彼女を切り捨てる形になってしまったわけですしね。こういう事に一切罪悪感を感じない男なら生きるのも楽なんだろうけれど、多少なりとも感じるくせに小を切り捨てる真似が出来てしまうのが彼の苦しいところなんだろう。その意味でも、孝元みたいな優しい人と理沙子みたいな口うるさくも律儀な人が離れずそばにいてくれたというのは、思っていたよりもずっと大きな意味を持つのかもしれない。

そしてもう一遍の「化」。
いやもう、なにこの仔狸。可愛さが凄まじいんですけれど!! この子がミナトの事務所のマスコットになってくれてレギュラー化したら、この作品自体が人気爆発しそうな凶悪な可愛さだったんですけれど。あまりに可愛すぎて、ミナト以外のキャラクターが蕩けきってまともな話にならない気もしますけれど。
この人が消え去ってしまった村の真相については、過去に起こった災害の話なんかからも概ね予想がついていたんですけれど、実際の真実はそんな予想を軽々と上回る、いっそ壮絶と言っていいくらいのものでした。
動物の恩返し、というのは昔話の定番だけれど、ここまで凄絶極まるものはちょっとお目にかかったことがない。ただ、自分の命を捧げて報いるよりも過酷で想像を絶するような時間を費やして成し遂げた、たった一匹の小さく健気な怪異がつくりあげた本物の楽園が、ここに在り、そして役目を終えて潰えたわけだ。
なんとも胸が一杯になるお話でした。ほんと頑張ったね、お疲れ様でした。

最後に掌編の「占」
腐れ縁を拗らせたミナト、理彩子、孝元の大人三人組の益体のない雑談話。これ見てると、ほんとにいいトリオというか、良い友だちなんですよね、この三人。……良い友だちなのかどうかは言い切る自信がないけれど。でも、あのミナトが縁を切らずになんだかんだと付き合い続けてる、他の二人もミナトと距離を置くこと無くなんだかんだと付き合い続けてる、という時点でもう、言い訳できないんですよね。まったく、困った大人たちである。
時計占いの話は、これ自分も当てはまるなあ。ミナトと理彩子のコンビに逆襲されてへこまされる孝元さんが、微妙に可愛かったですw

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