東京スピリット・イエーガー 異世界の幻獣、覚醒の狩人 (このライトノベルがすごい! 文庫)

【東京スピリット・イエーガー 異世界の幻獣、覚醒の狩人】 大泉貴/ 泉彩 このライトノベルがすごい!文庫

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数十年前からこの世界には、異世界からモンスターがやってきている。東京に暮らす高校生・久住大吾は、ゲームアプリ『ソーシャル・スピリット・イエーガー』に現れた謎のメッセージに従って三鷹駅に行く。そこで彼が見たのは、暴れるゴブリンと、それを倒すクラスメート・高屋敷瑠奈の姿だった。異世界から現れるモンスターを、妖精の魔法と武器で討伐せよ!第1回『このラノ』大賞作家が放つ、現代バトルファンタジー開幕!
うわ、これモンスターの来襲で発生した被害はなかったことにならずに、事故や災害に置き換えられるものの、そのまま残っちゃうのか。
ゲームのスタイルを取っているけれど、その実体は現実に起こっている異世界から現れるモンスターの駆除。なるほどなあ、現実の世界を舞台にしつつ、そこで定番のモンスターと戦うというのは、なかなか絵になるビジュアルである。隔離された場所じゃなくて、ちゃんと一般人が居る所にモンスターが現れて、というのも臨場感がある。ってか、これ知ってたら怖くて街中歩けなくなりそうなんだけれど。いきなりデパートの中にゴブリンが居ました、とかメガテンじゃないけれど怖いですよ。
事が終わってしまえば、イエーガー以外からはモンスターに纏わる情報は記憶から消えてしまう、さらには世界的なバックアップ組織が存在して、モンスターとの戦闘の痕跡も政治的に消し去ってくれるのだから、アフターケアは万全なわけだけれど。でも、これゲーム感覚でイエーガーたちは参加してるし、ランキングとか競ってるわけですけれど、同時にモンスターを退治しなければ街は破壊されて大変なことになるし、戦闘如何によっては実際に死んでしまうこともあるわけで、そのへんの危機感とかイエーガーの戦闘に対する見方の緩さが、状況との齟齬として馴染まないまま微妙に張り付いてる気がするなあ。なんというか、リアルよりかゲームよりか、どっちつかずで中途半端なんですよね。ともあれ、それがいけない、とこの段階で決めつけてしまうのは良くないかもしれない。この中途半端で足元がしっかりしない感じのところから築きあげる事が出来るものもあるかもしれませんし。それに、このモンスターと現代で戦う臨場感はなかなか得難いものがありますからね。
それに、この作品、キャラクターがイイ!!
とくにメインヒロインの高屋敷瑠奈の素の顔の素晴らしさよ。いきなり彼女が「ウッヒョー!!」とか叫びだしたときにはほんとにどうしようかと思いましたけどね!!(笑
優等生の顔の裏に秘めていた、中二病全開の残念な暴走気質。この隠してた、のがいいんですよ。あからさますぎるといけない。でも、やる時は恥ずかしがらずにノリノリでやっちゃうのがまた良い! 前作でも思ったんですけれど、この人のしつこくはないけれど、丁寧な人間関係を絡ませ深めていく描き方は、なかなか素敵ですよね。今回は主人公の大吾と瑠奈にほぼ絞っていましたけれど、それぞれに過去に傷、今に思う所を秘めながら、お互いに徐々に心をひらいていって一緒に頑張っていく姿は、凄く素敵なものでした。妹ちゃんを含めて、周りの人たちの彼らを見守る優しい視線も、とても心地よいものでしたし。
うん、これは素晴らしいボーイ・ミーツ・ガールだったんじゃないだろうか。繰り返しになりますけれど、瑠奈のキャラはとても魅力的でしたし、明るさと影と、傷を見せない強さと、傷を見せられない弱さを併せ持った、ついつい目で追い続けてしまうヒロインでした。彼女の存在だけで当たり、と言っていいくらい。主人公の大吾との噛み合わせも、バッチリでしたし。うん、続きが楽しみになる作品でした。あとは、足元の築きよう次第かなあ。

大泉貴作品感想