ナイツ&マジック 2 (ヒーロー文庫)

【ナイツ&マジック 2】 天酒之瓢/黒銀 ヒーロー文庫

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安全だったはずの演習中、突如現れた師団級魔獣ベヘモスの襲撃を何とかしのいだ、エルネスティをはじめとしたライヒアラ騎操士学園の学生たち。
戦いは終わり、彼らは平穏な日常に戻ってゆく――はずが、エルネスティの日常は平穏ではありえない。
国王から無茶振りを受けたことにより、彼は幼馴染から学生たち、さらには学園そのものまで巻き込んだ大暴走を始める。
その果てに彼は世界の常識すら踏み越えて、ついに新たなる幻晶騎士を生み出すにいたる。
異形の知識によって形作られる、強力な力を秘めた新型機。その力をめぐって様々な人間が動き出す――。



ナイツ&マジック 3 (ヒーロー文庫)

【ナイツ&マジック 3】 天酒之瓢/黒銀 ヒーロー文庫

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異世界の記憶を持つ少年エルネスティは、ロボット好きという趣味が高じるあまり、新型幻晶騎士テレスターレを生み出した。
彼の身を案じた国王アンブロシウスは、彼の護衛として、またその力を生かすために銀鳳騎士団の結成を命じた。
騎士団を率い、エルネスティは今日も元気に暴走する。
作り上げる新型機は、もはや人型ですらない半人半馬の異形の騎士。さらには新型推進器まで開発し、挙句空まで吹っ飛ぶ始末。
どこまでも止まらない彼の爆走は、やがてフレメヴィーラ王国全土へと大きな変化を与えてゆく。
そんな折、アンブロシウスは彼と交わした、とある約束を果たす決意を下していた。
自身が求める最大の秘密を前にして、エルネスティは期待に胸を高鳴らせる。
しかし同時に、彼は衝撃の事実を告げられた。「秘密を守る隠れ里に、大きな危機が迫っている」と――。


うははは、すげえすげえ、たったひとりのブレーキ知らずの暴走が、彼個人のものじゃなく周りを巻き込んでの大暴走になってきた。エルが狡猾というか強かというか上手いな、と思うのは彼が提示するものは決して荒唐無稽で彼個人しか手が出ないものじゃなくて、その概念さえ飲み込めばだれでも理解できて、しかも実践出来るものなのである。つまり、誰でもやろうと思えば手が出る範囲に、ちょこんと餌置いていきやがるんですよ。今まで食べたことのないようなご馳走を、目の前に置かれて我慢できる奴がいるだろうか。
いや、ほんとに感心してしまった。最先端を突っ走りながら、エルって常に後続との距離を図っていて、他を置いてけぼりにする、という事はしないんですよね。プレゼンテーション能力の高さはたびたび言及されていますけれど、企画段階から量産性や汎用性などもちゃんと重要な要素として取り込んでいるあたり、ただの技術バカとは一線を画しています。そのくせ、そのあたりの実用化に向けての細かいあれこれを他所に丸投げして、自分は新開発にかまけてしまうところなんぞ、強かもいいところです。組織というものの扱いが尋常じゃなく上手い。それでいて、その野心はひたすら「趣味」に向かっているのだから、面白い。
この作品の気持ち良い痛快さは、ひたすらにエルという主人公にあります。でも、ただ彼の凄さに酔いしれるのとはまた違うんですよ。いわゆる「俺TUEEEE」系主人公にありがちな、崇拝や無辺の好意を集めるのとはまた違って、彼への作中の登場人物たちの見方は、まず第一に手綱の取れない問題児以外の何者でもありません。みんな困ったどうしようもない子を見るような目で彼を見ています。と、同時に彼への視線は年齢や立場を越えて、みんなが慈しみに溢れてるんですよね。そして、これは、読んでいるこちらの気持ちとシンクロしていると思うのですけれど、エルが次は何をしでかすのか、何をやらかしてくれるのか、とみんなが目をキラキラさせてワクワクしているのです。しかも、作中のキャラたちはエルの暴走を見ているだけじゃなくて、エルを知れば知るほど彼の暴走に対して、我も我もと一緒になって大はしゃぎして参加し出すのです。最初は学園のみんなが。続いて国王陛下をはじめとする国の重鎮たちが、エルのしでかす数々の出来事に度肝を抜かれ、でもそれが彼一人のお祭りではなく、自分たちも頑張ればそれに加われる、一緒になってこのワクワクする見たことのない景色を楽しく共有できるのだと気づいた瞬間、我先にそのお祭りの中に飛び込んでいくのです。
なんて、楽しそうなんだろう。なんて、嬉しそうなんでしょう。1巻の終わりに、エルの突出しすぎた特異性を聞きおよび、その危険性に思いを馳せ眉根を寄せていた国王陛下の、2巻、3巻での爺のくせに年甲斐もなく童心に戻ったみたいなはしゃぎようを見てしまうと、ついつい笑みがこぼれてしまいます。
ってか、孫と本気でおもちゃの取り合いをするなw
それだけでなく、本来ならエルに否定的だった、秩序を乱すものには容赦なく牙をつきたてようとしていた保守派の公爵が、頑迷で地位にしがみつこうとしていた王立工廠の長が、無邪気で強かなエルの暴走に感化され、胸の奥から湧き立ってくる「ワクワク感」に身を任せて本分を思い出し、奮い立っていく姿の、なんと痛快なことでしょうか。
誰も彼もが自分の出来ることをひたすら磨き上げ、高め、鍛え上げ、エルの大暴走に遅れまいと、目をキラキラさせながら夢中で楽しそうに頑張りまくる姿が、素敵で仕方がないです。
エルの全身全霊の「趣味」への突貫に巻き込まれ、熱気に包まれた国全体のフィーバーっぷりが、読んでいてもこっちのテンションまであがってしまって。ワクワクしっぱなしでした。
さて、これは早々に次を出してもらわないとこらえきれんですね。3巻が出たのが去年の九月、とだいぶ間があいてしまっているので、そろそろ予定もあがらんかしら。

1巻感想