聖剣の姫と神盟騎士団 IV (角川スニーカー文庫)

【聖剣の姫と神盟騎士団 4】 杉原智則/Nidy‐2D‐ 角川スニーカー文庫

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ラグナの谷に戻ったダークたちは、もう一つの反魂珠を求めて新たな旅に出る。その行き先は、死霊たちの王国が支配する『皆殺しの島』!!死霊たちが王と崇める英雄レイドックの霊と会うため、ダークとフィーネは王国の奥深くへと進んでいくが、その直後に死霊の騎士団の襲撃にあってしまう。フィーネの剣も届かない不死の騎士団を相手に絶体絶命のピンチに陥るダークたちだが、そこに美しき僧侶ロナが現れ―!?

ちょっ、リアルファンタジー世界でTRPGをやろうって発想、ダークって天才じゃね? TRPGだったら、別に科学技術とか必要ないので、中世ベースのファンタジー世界でも全然問題ないし、何よりリアルダンジョンを元にしてるからリアリティもあるし、英雄や冒険に憧れる子供たちにとっては娯楽も少ない世界だろう事も相まって、夢の様な遊びですぜ、これ。もちろん、相応にGMの能力は優秀である事が求められるだろうけれど、ダークはその辺うまそうだもんなあ。
まあ、これを子供たちから小金をせしめる小遣い稼ぎに使っているあたりに、彼の素晴らしい小物根性が窺い知れて、なんか逆に微笑ましくなってくるのでありました。やりようによっては、なんぼでもがっぽり稼げそうなアイデアなのに。

さて、イアンが完全にフィーネと同類の剣バカになっている一方で、ハスターさんは生き急いできた今までを省みるように何故か所帯じみたことに……エプロン姿の若奥さま風がえらい似合ってるじゃないですか!! ハスターさん、やたら露出がキツい衣装よりも、楚々とした大人しい格好の方が実は似合っていたという奇跡。若干、袖から蛇が顔を出しているという変なオマケがくっついていますが、これは意外なインパクトだったなあ。とは言え、イアンと違ってハスターさんの方はかなり成り行きでラグナの谷に居るだけなので、弟を国元に残している事もあって、裏切りというかスパイとして自主的に活動している疑惑はかなり濃いんですよね。手土産持参で帰る機会をうかがっているような感じで。もっとも、ハスターさんメインの事件が起こりそうなフラグは、きっちりと立っているんですけれど。

聖剣団の部隊長たちは、みんな一癖も二癖もある、というよりもかなり人格破綻してるような危なっかしい人ばかりなのだけれど、その中でも唯一一番まともそう、或いは常識人で思慮深そうだったのが、このハゲ坊主【死霊神官】ベアラーさんだったのですけれど、この人も他に漏れず周りを顧みない暴走状態。人の話を全く聞かないという意味では、【竜殺し】ラッセルにも負けず劣らずという体たらくで、いやほんとにいい大人がなにやってんだ。この人も、若い頃はヤンチャをしていた、と言うどころではない大暴れをしていた来歴の持ち主だったようで、この人もこんな辺境の傭兵部隊の一部隊長やってるようなレベルの人じゃなかったんだなあ。まさに【英雄】に名を連ねるに相応しい格の持ち主ではあったんだけれど、結局のところベアラーさん含めてどの人も元から高い場所に立っていたからか、さらにグラジス団長という英雄の中の英雄というべき偉大な人物に魅せられてしまったからか、上ばかり見ていて足元が全然お留守になっている。ふわふわと浮ついてばかりで、地に足がついていない。
ひたすら底辺を歩んできたダークからすると、部隊長たちの尽くが、英雄と呼ぶに相応しい力を持ちながら、幼稚とすら言えるような夢見がちな足取りでフラフラと覚束ない足取りでふらついているのが我慢ならんかったんだろうなあ。面白いことに、ダークに「叱られる」ことで、部隊長たちは現実を受け止めたかのように、夢から覚めたみたいに、今までの自分とこれからの自分を省みて、地に足がついた様子になってるんですよね。
ダーク自身は、自分の言葉は誰にも届いていないみたいに思っているみたいだけれど、思いの外彼の言葉って芯を貫くように届いてるんだよなあ。フィーネなんか特にそうで、うん、ダークの意図は全く伝わってないんだけれど、意外と彼が本当に心の奥底で思い滾らせている想いについては、凄く伝わって感化されてる気がするんですよね。傍から見てると、フィーネってもうダークにべったりとなっているようにすら見えるわけです。
そんな二人の関係が一方通行で済むはずもなく、ダークの方もフィーネの愚直さにどうしても感化されていってしまっているのが、なんとなく垣間見えて、思わずニマニマ。ダークは相変わらず、聖剣団が元の姿を取り戻すにつれて疎外感を感じだしているようだけれど、カラス師匠の宣う通り余計な考えですし、むしろ彼自身思いもよらないようだけれど、疎外どころか主だった人物たちからするともうダークの存在って無視できないものにすらなっているのです。まあ、彼が中心核、とは間違っても言えないのですけれど。でももう、ダークなくして聖剣団はまとまらないところまで来ちゃってるんだろうなあ、これ。

とりあえず、ロナくんが男というのは、未だに信じられません。こんなに可愛い子が女の子のはずがない理論なのか、これが。

あと、死霊の島でダークが垣間見た過去の映像。そこでは、グラジスと思しき人物がこの島を訪れていた、ということがわかったのですけれど、もう一人、団長に同行している謎の人物がいたのですけれど……んんん?
これ、さり気なく重要な伏線なのかしら、もしかして。何故団長がこの島を訪れていたのか、など謎は明かされないまま次回に流れてしまった事は、余計に重要性を指し示しているような気がする。

そろそろ、大きく事態も動き出し合戦も勃発しそうな勢いなので、盛り上がってまいりましたよっと。

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