すずみんは肉食系火竜(3) (ファミ通文庫)

【すずみんは肉食系火竜 3】 西野吾郎/あなぽん ファミ通文庫

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「すずみと一緒にいるのは、ただ俺が一緒にいたいからなんだ」

「貴殿の両親を紹介してくれ」という言葉は告白ではなかった。微妙にガッカリしつつも、白刃さんの熱心な訴えに応じ母親を紹介することに。そこで明かされたのは、俺自身も知らなかった出生の秘密と、隠された能力。
それは異常な鋼化能力をもたらすだけでなく、すずみの力とも深い繋がりがあるという。そのため、すずみといつも一緒にいなければいけないという。
でも、それは当然のことだと思っていた。夏祭りの夜までは――。
大波乱の学園ファンタジー第3弾。
雫はさいごまで期待通りブレなかったですなあ。急に家族の不和とか過去の傷みたいなものを匂わせ出して、今のこの感情が表に出ない冷たい性格には相応の理由があったのよ、と言わんばかりのアピールをしだした時にはどうしようかと思った。雫、そのクール系無感情キャラはあくまで自称であって実際は出歯亀好きのみんなをむやみに引っ掻き回して場を混乱させて喜んでる変態じゃないか。誰も無感情キャラとか認めてないから。案の定、雫の家庭の事情とやらもおおむねツッコミ待ちでした。思わせぶりにしといてそれかい!!
白刃さんが気づいた鋼平の家系に秘められていた血の秘密、というのも白刃さんがピリピリと張り詰めて緊張していた意気込みに比べると、実際はあっけらかんとしたもので、すずみの力との関係は過去の出来事の不自然な状況を詳らかに紐解く、という意味ではわかってよかったことだけれど、その事実が明らかに成ったからといってこれからの事がナニカ変わったか、というと結局今まで通りに、という事でしたからね。最後まで徹底して真剣ではあっても深刻にはならない、いい意味で前向きな明るさを失わない話でした。
しかし、これまで通り、鋼平とすずみが常に一緒にいることが大事、という結論は、すなわち蓮華の恋心に終止符が打たれる、という事でもあり、前巻ですずみへの想いを確かなものにして二人の関係の進む道が選択された以上、今回の肝は蓮華が自分の気持にどうケジメをつけるか、という所だったんですよね。
個人的には、もう最初から最後まで一部も入る隙間がなかった蓮華は、そのまま黙って目の前を通り過ぎていった恋心を見送るのも決して悪くはないと思っていたんですが、この強い娘は敢えて傷ついてでも踏ん切りをつける道を選びました。彼女の悲しい告白シーンは、彼女の悲痛でしかし吹っ切った真剣な告白は、珠玉と言ってもいいシーンだったんじゃないでしょうか。あれほど感情の込められた告白シーンはなかなかないですよ。失恋シーンて見てるだけで辛いけれど、気持ちがこもっていればこもっているほどやっぱり素晴らしい。
終わってみれば大仰な陰謀も事件もなく、和やかに終わってしまいましたがこのシリーズはむしろこんな風に平穏に徹してくれた方がらしくて良かったです。綺麗に3巻でまとまったハートフルストーリーでした。

シリーズ感想