路地裏のあやかしたち (2) 綾櫛横丁加納表具店 (メディアワークス文庫)

【路地裏のあやかしたち 綾櫛横丁加納表具店 2】 行田尚希 メディアワークス文庫

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路地裏にひっそりと佇む、加納表具店。店を営むのは、若く美しい環。実は彼女、五百年以上も生きている化け狐だった。掛け軸や屏風などにこめられた思念を鎮める仕事を引き受けている彼女のもとには、様々な事情を抱えた妖怪が相談を持ち込んでくる。環に弟子入りした人間の高校生・洸之介は、さまざまな妖怪と知り合い、やがて心を通わせていくことになる―。人間と妖怪が織りなす、ほろ苦くも微笑ましい、どこか懐かしい不思議な物語。待望の続編が、いよいよ登場!

今回は「鎌鼬」「座敷童」「ぬらりひょん」という各話とも、人と密接に触れ合う妖怪たちの話が描かれている。その為か、前巻よりもより顕著に人間の世界に寄り添って生きている彼ら妖怪たちの姿が浮き彫りになっていた気がする。彼らは、人間とは違う時間、数百年の時を悠々と生きているのだけれど、かと言って彼らと人間との間には隔てられた壁のようなものは一切感じられないんですよね。この手の生きる時間の違う存在同士が交じり合う物語は、それだけそのすれ違いがピックアップされるものなんだけれど、環さんをはじめとしてここで描かれる妖怪たちは、現代に染まりきってしまっているわけでも過去に縛られているわけでもなく、凄くフラットに、自然に今を生きてるんですよね。何十年、何百年も前のことをつい一昔のように懐かしそうに語りながら、その同じ口で現在の出来事を楽しそうに喋ってる。そんな彼らの姿を見ていると、歴史の彼方にあるような時代が地続きなんだなあ、と実感できると同時に、彼らがそんな長い時間を生きることを苦にして居らず、その時々に生きていた人間たちと一緒の時間をすぐ側で共有してくれてたんだなあ、と思うとなんだか嬉しいようなありがとうとお礼を言いたくなるような、そんな気分にさせられる。大切な人たちとの別れも沢山あったんだろうけれど、鎌鼬も座敷童も、ぬらりひょんもその別れを悲しい思い出として抱え込むのではなく、宝物のような思い出として大切に連れ添ってくれている。そんな彼らの今を生きる姿は、なんだかとても楽しそうだ。
洸之介の兄弟子であり、加納表具店に集まる妖怪たちの良き弟分である人間の表具師、兵介に訪れた人生の岐路に対して、みんなの態度は環さんをはじめとして、みんな親戚みたいな親しさで、ほんと家族みたいな優しい関係なんですよね。
表具の知識を血肉として自分のものにしていく洸之介を見る、嬉しそうな環さんの笑顔とか、優しさの塊みたいなんだよなあ。遠くから見守るのでも、高みから見下ろすのでもなく、一緒の時間を過ごしてくれるのがそれだけで嬉しい。
ただ、高校3年生の洸之介は、ちょうど将来の展望というものを具体的に突きつけられている真っ最中で、変わらずに居てくれるだろう彼らの存在が、前回は安心へとつながっていたのだけれど、今は逆に不安へと転じてしまっているんですね。周りが変わらない中で、しかし自分は変わって行かなければならないにも関わらず、その未来への展望が思い描けない。彼らが一緒に歩いて行ってくれると確信しているからこそ、自分がどう歩いて行けばいいのかわからないことに焦燥が募ってしまう。安らぎが、逆に彼を追い立てる心地にさせてしまっているわけだ。
こればっかりは、誰かが手を引いてゆくべき道へと引っ張ってくれるのを待つわけにはいかない。環さんたちは決して離れていったりしないけれど、だからと言って先導してくれる存在ではありませんからね、洸之介自身が自分の道を見つけなければいけない。
個人的には、自然なくらいに表具に夢中になっていると思うのだけれど、洸之介にとってはそれは盲点なのかなあ。環さんに表具について指導して貰い、実践している時の彼はとても楽しそうなんだけれど。

ところで、揚羽さんのあの反応は、つまりそういう事なんだろうか。おやおやまあまあ。

1巻感想