バロックナイト4 (MF文庫J)

【バロックナイト 4.Love Is Over:幻象煉獄】 葉村哲/ほんたにかなえ MF文庫J

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囚われたバロックを取り戻すため、立ち上がる京耶―だが目覚めるとそこは新妻瑠璃子の家で、しかも監禁されていた!日常風景と狂気が交錯する現象都市で、キョウコは京耶に最後のゲームを仕掛ける。バロックを助けるためにレイニーデイズと共にレガシーに立ち向かう京耶達だが、それぞれに喪ってしまった運命を取り戻すことができるのか。「信じているよ、京耶」「愛してます、京耶さん」「そんなに、私のことを愛してくれてありがとう京耶」永遠の因果を結ぶ、アンノウンバトルアクション第四弾!
うわぁ、これはもう思う存分好き放題やったなあ。ここまで読者の理解をぶん投げて、マイワールドに没入したのはデビュー作の【この広い世界にふたりぼっち】以来なんじゃないだろうか。一乃さんの方で何か鬱憤みたいなものでも溜まってたんだろうか。ヒロインにしても主人公にしても、総ざらえで破滅志向の権化となって手と手を取り合って終焉へと踊り込んでいく姿は、もうここまで行くといっそ痛快ですらある。個人的には、葉村さんの破滅へと至る滅びの道は、もっと静謐で胸がキュンとなるような儚い美しさに彩られているのが好きだったので、あまりに狂騒的すぎて論理破綻以上に情緒が崩壊している今回の楽園パレードは好みとは少しズレているのだけれど、ここまで吹っ切れた狂気三昧は清々しいくらいなので、嫌いではないんですよねえ。
バロックも瑠璃子も、キョウコも挙句に早香にしても、愛に狂い独占に耽溺して自ら破滅しようと狂乱していくのだけれど、誰もがその狂気の果てに幸福とか欲望を満たして満足しよう、という気はさらさらないんですね。表層的には近似のセリフを吐いているけれど、究極的には四人とも滅びをこそ志向している。同じ京耶に想いを寄せる女性たちを出し抜いて、自分こそが京耶に愛される事を望むのだけれど、それは同時に京耶を滅ぼし、京耶に滅ぼされ、一緒に破滅する事を望んでいるのである。滅びこそが、破滅こそが愛し愛されることなのだ、彼女たちにとっては。色々と言葉を飾り言葉を弄り遊興に勤しんでいるバロックや瑠璃子に対して、この点はこわれた早香のセリフこそがシンプルにすべてを表しているように思える。これも一つの殺し愛の極地であり、さながら、心中モノの様相すら呈している。まあいつもの葉村作品、と言ってもいいのかもしれない。その極端系と考えれば。
そのまま投げっぱなしにせず、どれだけとんでも展開であろうとキチンと京耶がバロックを選んだ、という結果を尊重しながら、それでいて見事に瑠璃子、キョウコ、早香の全員に対して京耶エンドを迎えさせた豪腕には、ちょっと笑ってしまったけれど、それ以上に感嘆させられた。これって冷静に考えてみると、ヒロインそれぞれのキャラを融解させて歪ませ切ってしまっている、という恐ろしい結末なんだけれど、狂気の産物の結果にして終焉の幕引きとして捉えるなら、いい具合におぞましく狂ってて良いハッピーエンドなんじゃないだろうか。私は結構お気に入りのエンドである、これ。
なにげに早香さんが役得w

葉村哲作品感想