ストライクウィッチーズ アフリカの魔女 ケイズ・リポート3 (角川スニーカー文庫)

【ストライクウィッチーズ アフリカの魔女 ケイズ・リポート 3】 鈴木貴昭/島田フミカネ:本文イラスト:飯沼俊規 角川スニーカー文庫

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マルタ島の激戦から数日。そこで浮き彫りになったネウロイの不可解な出現パターンから、サハラ砂漠を突破して襲来している可能性が浮上する。この危険性に、各国が連携し大規模な偵察作戦を展開。次々と届く情報の断片からケイが大型ネウロイの新たな進化に気づいた時、最悪の場所が襲撃されるのだが―「ふん、地味な戦いに飽きてきた所だ」。待望の外伝第3弾、アフリカの空が戦火に染まる時、マルセイユが最高の輝きを放つ!
アフリカ戦線にとどまらない、まさにワールドウィッチーズ。
当然のことなのだけれど、戦争というものは一つの戦場で完結しているものではなくて、どこかで起こった戦闘がそのまま全く別の遠く離れた戦場に波及し、戦局全体に影響を及ぼしていくという事が当たり前のように起こるわけです。ついつい、視点を限定して一個の戦場ばかりに注視して一喜一憂してしまうのは現実でもフィクションでも大いにありがちな事なのですが。
なぜ遠く、扶桑やリベリオンのウィッチたちが欧州に派遣されているのか。また、各国のウィッチたちが自分の国だけではなく、違う土地で飛び回っているのかを鑑みると自ずと答えとなっているのです。伊達や酔狂で送り込んでるわけじゃなく、回り回って自分のところに悪い波が来ないように切実かつ現実的な考えによるものなんですね。
しかして、まずはかの有名なマルタ島の戦いであります。アニメ版でもマルセイユがゲスト出演したことで有名なマルタ島の戦いですが、あれは二度目の戦い。すでに一度、マルタ島を舞台にした激戦が繰り広げられたことはアニメ作中でも語られていましたが、本作ではその第一次マルタ島防衛戦の激闘が描かれています。のちに第504統合戦闘航空団「ARDOR WITCHES」の隊長となるフェデリカ・N・ドッリオが事実上ウィッチを引退することになる重傷を負うことになるほどの激戦で、それこそ近隣から投入可能なウィッチや海空軍戦力を根こそぎ動員されるほどの規模の戦いとなっています。それだけ、連合軍が総力を投入するのも当然で、マルタ島の位置を地図で確認してもらうとわかるのですが、まさに地中海の要。ここを抑えられると、アフリカ戦線そのものが根こそぎ崩壊し、さらにはイタリアから南欧戦線まで共倒れしていきそうな、まさに要衝地なのです、マルタ島って。史実でも、この島の攻防が欧州戦線のターニングポイントの一つとなっているほどです。
まあそれほどの要衝を、アニメ版ではあっさり奪い返され、その奪還をほぼ501だけに任せちゃうという、結構無茶苦茶な事をしてるんですけどね。第一次防衛戦で投入された戦力規模や死命をかけて送り込んだ補給「ペデスタル作戦」を考えると、ちょっと考えられないんですけれどw
ちなみに、このケイズレポートの2巻では、そのペデスタル作戦がこれでもか、という濃さで描かれています。
ここで小憎い演出なのが、スムオス派遣軍のいらん子小隊からブリタニアのビューリングがゲスト参戦してる所なんですよね。史実では、ドッリオ隊長の元ネタの人をマルタ航空戦で撃墜したのが、まさにビューリングの元ネタの人なのです。それが、ストパンの世界ではドッリオ隊長の生命を救うのがビューリングになっているわけで、まさにストライクウィッチーズならではのネタだなあ、とニヤニヤしてしまったり。

さて、これもマルタ攻防戦を見てた時に疑問に思ったことなんですけれど、マルタ島ってネウロイの行動範囲外にあるんですよね。あのネウロイはどこから来たんだろう、と随分と首をひねった覚えがあるのですが、どうやら実際のウィッチーズの世界でもマルタ島に現れたネウロイについては相当に頭を悩ませたようで、空母を含めたかなり広範囲での索敵が行われることとなりました。第一候補地だったヒスパニア沖のバレアレス諸島には敵影見えず。様々な情報を検討した結果、おケイさんは一つの可能性に思い当たるのです。
ブレニム爆撃機はともかく、英国の長距離砂漠挺身隊 LRDGとかが出てくるとか、どんだけ美味しいんですかw しかし、これ見てると北アフリカ戦線はほんと、各国の協調がスムーズなんですよね。腰が一番重そうなブリタニアからして、フットワーク軽いもんなあ。将軍はともかく。これもおケイさん効果なのか。

ダカール、というとまず思い浮かぶのがダカール・ラリーのかつてのゴールであり、ガンダムなんかだと元地球連邦の首都なんかだったりするのだけれど、これも地図を見るとよくわかるのですが、アフリカ大陸の南回り航路における重要な中継地点なんですよね。スエズ運河が使えない現状からすると、太平洋をつなぐ航路の要衝の一つと言っていい。ちなみに、元はフランスの植民地だったので、ここの軍港には本国を失ったフランス海軍の艦艇が逃げ込んで、えらい悶着が史実でも発生しているのですが、このストパンの世界でも数ある自由ガリア政府の一つが居を構えた上に、戦艦リシュリューが鎮座していて、のちに第502統合戦闘航空団に参加するジョーゼット・ルマールが護衛に参加していて、ダカール軍港防空戦ではたった一人で孤軍奮闘することになります。
アフリカ戦線の最前線であるトブルクから遠く離れたダカール近郊に、新たなネウロイの巣が構築されようという危機。北アフリカ戦線も大事だけれど、さりとてアフリカ西岸を抑えられると、スエズとダカールというアフリカの両サイドをキメられることになるわけで、これまた致命的。このダカールでの戦いは、そこにいたウィッチがジョーゼットしかいなかった為に、数少ないガリアの海軍、航空戦力が死力を振り絞る戦いになっていて、戦闘機による体当たり攻撃で中型ネウロイを撃墜するような出来事まで起こってます。ジョーゼットも何度も被弾と弾切れを起こして、補給帰還と出撃を一日になんども繰り返すような状態で、途中でリベリオン海軍の救援がなかったらどうなっていたことか。
幸いにもアフリカを横断するような長距離移動は、ネウロイも大きな戦力を集中できなかったようで、ダカールは攻め切れないままリベリオンの救援により支えられ、巣が構築されそうだった拠点もブリアニア艦隊の攻撃に破壊される。これも、おケイさんの進言によっる大規模な索敵作戦が行われてなかったら、迎撃も後手に回ってアフリカ西岸を抑えられてたかもしれない事を鑑みると、結構危機一髪だった?
一方で北アフリカ戦線も、トブルクを迂回したイコニウムへの襲撃が行われて、トブルクを基地とするマルセイユたちアフリカ軍団も決断の時。
ここでの長距離移動用の大型地上戦ネウロイの登場や、ネウロイの巣と対峙する戦いが、のちのちのスフィンクス作戦へと繋がっていくことになるんだろうか。
まさにアフリカの北から西まで、あるいは地中海から大西洋を股にかけた対ネウロイ戦線の激戦の数々。今回は、色んな場所にスポットがあたることで、マルセイユの活躍も限定的なんですけれど、それってつまりマルセイユがどれほど凄くても彼女という存在は一人だけで、あっちにもこっちにも飛んでいけるわけではなく、同時に戦局を左右するような戦場はそれこそ各地に飛び散っていて、そこが崩れると友崩れでしわ寄せがあらゆるところに押し寄せてくる、という局面が幾つもあるわけです。それこそ、マルセイユだけでなく、あるいは501だけではない多くのウィッチが世界各地で死力を振り絞って戦い、人類戦線を支えている、というのがこの巻ではよく伝わってたんじゃないかしら。
近々、アニメでも新たな企画がスタートしているみたいですし、ちょうど【島田フミカネ THE WORLD WITCHES】という世界各国のウィッチが紹介された画集も発売され、とストライクウィッチーズも新たな局面を迎えているようで、さらなる世界の広がりがなんとも楽しみな昨今です。

しかし、ビューリングは格好いいのう。あとロンメル将軍、遊びに来すぎ! まあ、ほんとに忙しい時にはさすがに来なかったようですけれど。

1巻 2巻感想