よろず屋退魔士の返済計画 3 時を越えた再会 (オーバーラップ文庫)

【よろず屋退魔士の返済計画 3.時を越えた再会】 SOW/蔓木鋼音 オーバーラップ文庫

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過去からの依頼、よろず屋退魔士最大のミッション開始!

「おう、我が息子よ、久しぶりだなぁ! 」
今日も借金返済に励む狗朗とみぎりの元に借金の原因を作った追儺獅郎が帰ってきた。これまでの恨みをぶつける狗朗に対し、獅郎はある人物からの依頼を持ってきたという。渡された手紙を開くと封印されていた術が発動し、二人はなんと過去の世界に飛ばされてしまう。
20年前の東京で困惑する彼らの前に現れたのは、死んだはずの狗朗の母親、神堂杏花だった。杏花が持っていたトランクには狗朗とみぎりを過去へと飛ばした術と同じ封印が施されていたのだった。
借金返済コメディ、今度は過去からの依頼に挑む!
運命って言葉、最近はネガティブな意味合いで使われる事が多くって、「運命を打ち破れ」みたいな立ち向かうべき壁、或いは檻のようなものとして捉えられてるじゃないですか。でも、本来「運命」という言葉はもっと素敵で晴れやかでキラキラと輝いているものだったんじゃないかな、と思うのです。無数にあるはずの選択を消し去り、決まった結末へと収束していく、終わりへと至る「運命」ではなく……出会いであり再開であり、そこから無限に広がっていく起点となるべき始まりとなる「運命」。
「運命」とはきっと、祝福された奇跡のことなんだろう。それも、ただ与えられるものではなく、連なり積み上げ紡ぎ上げた想いの結実として、産まれい出たるモノなのだと……この狗朗とみぎりの運命の物語を読んで、熟とそう願ったのでした。
きっとこれは、終わりへと至るはずだった運命が、始まりへと生まれ変わる偉大な恋の物語。
元々、狗朗とみぎりの関係って凄く特別感が漂っていたんですよね。ただの女性上位の幼馴染関係、というには新堂本家に行ってしまった狗朗を、みぎりは七年間も誰も帰ってこない家で待ち続けていた、というみぎりの姿が普段の行動的で活力が漲っていて腹に一物も二物も抱えている腹黒で、常に一手二手先を読んでいる聡明さとは裏腹で、その愚直で一途で想い人の帰還をじっとじっと耐えて待ち続ける女という姿とのギャップがみぎりという少女のキャラクターに一言で言い表せない情の深さを纏わせることに成功していたように思う。
普段は狗朗を顎でこき使い傍若無人なくらいに振舞っている彼女だけれど、その根底には彼に対して自分の人生をまるごと捧げて悔いる事がないだろう一途さと献身が垣間見えて、もう一方の狗朗のみぎりに対する深い信愛、それこそ命を彼女のために費やす事に何のためらいも抱かないような、大切にしようという気持ちと相まって、この二人のカップルは普段のドタバタな関係からは想像できないくらい深く深く結びついていて、傍から見ていても、時々思わずドキッとするような奈落に片足を突っ込んでいるような、触れてはいけない神聖さすら感じるような絆を感じさせるものがあったわけです。
私は、二人のこの表層は軽々として、しかし深いところでは侵し難いほど通じ合い捧げあった関係が大好きでねえ、近年読んだ本の中でも特別好きなカップルの一つでした。
でも、果たしてこの二人にこれほどの想いが生まれた発端は何だったのか、あのみぎりが、七年という時を待つことに費やすほどの気持ちはどこから生まれたものなのか。そういうものだと疑問にも思わなかったのだけれど、どうやら二人のつながりにはきちんとした理由があり、奇跡があり、つまり二人にはちゃんと掴みとった運命があったのです。そのすべてが明かされるのがこの物語。過去から未来へと繋がる、運命の恋の物語。
その詳細は本編を参照してもらうとして、私はますますこの二人のことを好きになりましたよ。運命によって結ばれる、とは他人任せに聞こえるけれど、彼らの場合は決して誰かから与えられた決まりきった結末ではなく、正気を失うほどに求めて渇望して足掻いて苦しんでそれでも追い求めた果てのことであり、同時にそんな過去からの想いとは棚を別にして、今を生きる狗朗とみぎりが改めて自分たちで始めた関係であり、七年という十代の少女にとっては人生の大半を費やして、待って待って待ち焦がれた果てに取り戻した再会の運命であり、神堂杏花と追儺獅郎というロミオとジュリエットが全霊を賭して掴みとった末に生まれた愛の結晶なのである。
過去からの想いがあってこそ生まれたものであり、しかし過去に縛られない未来の始まりとして生じた「運命」。
そんな二人の運命に、目いっぱいの祝福を。彼らのこれからが幸せでありますように。とても、素敵な物語でした。

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