銀閃の戦乙女と封門の姫6 (一迅社文庫)

【銀閃の戦乙女と封門の姫 6】 瀬尾つかさ/美弥月いつか 一迅社文庫

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ついに始まった大侵攻により王都は陥落し、ゼノの指令中枢である七体―始祖七桂―に広域殱滅スキルを持つフレイを連れ去られた。フレイの広域殱滅スキルをコピーされたらクァント=タンに勝機はない、その前にゼノを討滅する。第一王女エレオノーラの指揮のもとクァント=タンの全王族と機士を中心に結集した連合軍は、最終決戦へと向かう。一方、カイトたちも囚われのフレイの救出と始祖七桂を打倒するため、ゼノの中核へと切り込んでいくのだが、その行く手には最強のゼノ、始祖七桂が立ち塞がる。はたしてカイトはフレイを助け出すことができるのか、そして最悪の侵略者ゼノとの戦争の結末は―。瀬尾つかさが贈る剣と魔法の異世界ファンタジー、ついに終幕!
とっとと表紙飾るヒロイン持ち回り制にしたら良かったのに、フレイで引っ張り続けたせいでシャーリーが割り食っちゃったじゃないか。実質、シリーズ通じてのMVPは紛れも無く彼女だったのに。
というわけで本シリーズもこれが最終巻、最終決戦でありますよ。三千世界を滅ぼしつくし、押し寄せてきたゼノを食い止めるために創造された異世界クァント=タンを舞台に、全時空生命の存亡をかけた戦いが今此処に。
クァント=タンって、いうなればワールド・オブ・キルゾーン。地球を含む残された世界群を一つの城に見立てたならば、クァント=タンは虎口と言っていいでしょう。異世界一つ丸々を、侵略者を誘い込み殲滅するためのキルゾーンとしてカスタマイズして創造し、そこにこれまた戦闘用にカスタマイズされた人類を住まわせる、というのは改めて見ても凄絶を通り越した発想なんだけれど、これですら殆どゼノを破る希望もなく、ほぼ時間稼ぎか自爆覚悟の捨鉢な期待しかされていなかったというのだから、いったいどれだけ絶望的な状況だったのか。まあ、クァント=タンを創造する以前の戦いの被害の凄まじさを考えたら、もう絶望しかなかったのも仕方ないのか。
そんな、もう終わるしかなかった状況をひっくり返すきっかけになったものこそ、カイトの存在だったというけれど、傍から見ている限りではキングクラスのモンスター戦からこっち、ずっと無双状態を続けていたのはシャーリーと梨花の謀将二人であったのは間違いなく。正面戦力としてはソーニャさまや他の王族どころか、カイトやフレイと比べても片手落ちだったシャーリーと梨花ですけれど、戦局を打開し続けたのは常に二人の頭脳と度胸だったのですから大したものです。この場合、頭脳担当が二人揃っていたというのが味噌で、どちらかが機能不全に陥っても即座にカバーとフォローをまかなえてたのが大きいんだよなあ。今回も、シャーリーが決断できなかった時に背中を押したのは梨花でしたし。これ、どちら片一方しかいなかったらまずどこかで綱渡りの縄から転げ落ちていたと思われる。それくらい、ゼノ登場付近から厳しい判断を問われ続けていたわけですし。
この敵のゼノが曲者で、意思の疎通が不可能な異生物、というとどうしても機械的、或いは昆虫的な存在で対応力が突出していても、先手を取るのは頭を使う人間側、というパターンが多いのですけれど、ゼノの場合知略でもシャーリーや梨花の上を行くことがしばしばで、イニシアティブについてはほぼ相手に握られていたんじゃないか、というくらい。シャーリーたちの知謀の冴えは間違いなく一級品だっただけに、相手の手強さの感触は並外れていました。それでも諦めずに、彼女らが食らいついていったからこそ、辛うじて希望の糸が途切れないまま最後まで繋がったのですが。
つまるところ、ゼノの侵攻戦で終始最前線で火花を散らしていたのはシャーリーと梨花だったと言えるので、彼女ら二人がメインだったはずのカイトやフレイやソーニャ様よりも実質活躍していたのは、まあ仕方ないよなあ。
王族差し置いて囚われの姫の役を担った上に触手に蹂躙されるなんて美味しいところまでやらかしたフレイはともかくとして、敵中枢に殴りこんだカイトとソーニャも、結局始祖七桂のシャーリーの想定を上回る対応策のお陰で一番美味しいところではなくなっちゃいましたしw
最後の対決でも、一番美味しかったのはもっとも戦力的に劣り絶望的な戦いを強いられ、健気に覚悟を決めながら起死回生の目を引いたシャーリーでしたし。
一方で、ソーニャ様はというと、ホントにヒロインかというくらい残念脳筋として弄られまくってて、もしかしてこの人作品のマスコットだったんだろうか、という思いが湧いてくるほど、愛され系になってましたよ?
彼女だけは嫁というよりもペット扱いでも違和感がないような……w
ともあれ、文字通りの総力戦となり人類世界の存亡をかけた激戦が存分に繰り広げられる展開は、手放しで燃えました。カイトも頑張ったよ、うん。自爆妖精も、最後に見せてくれましたし。何でもとにかく爆発させずにはいられない性のアルルメルルが、一番肝心の爆発を阻止してみせた、というのは色々と粋だったなあ。
個人的には、同じ一迅社文庫なんだから【魔導書】の面々ももっと前面に出てきて活躍してくれると嬉しかったんですけどね。モリー男爵は一人で頑張ってましたが。まあ、チラッと顔見せてくれるだけでも嬉しかったんですけどね。
エピローグで、梨花が世界相手に盛大にやらかしてたのは爆笑ものでしたけれど。ちゃんとフレイが正妻になりそうですけれど、これはもう、「妹(梨花&シャーリー)からは逃れられない」は決定ですね。ふたりとも有能すぎる。なんにせよ、ほんと最高に面白かったです。次回作も大いに楽しみ♪

シリーズ感想