氷結鏡界のエデン13 楽園現奏―エデン・コード― (富士見ファンタジア文庫)

【氷結鏡界のエデン 13.楽園現奏―エデン・コード―】 細音啓/カスカベアキラ 富士見ファンタジア文庫

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「第七真音律は、すべての魔笛を消滅させる鍵。だけど…」
穢歌の庭で向き合うふたりの少女。ひとりは皇姫の後継者として、祈りを詠う使命を帯びて。ひとりは愛する人を救うため、世界を敵に回して。同じ想いを抱いたはずの鏡を介した実像と虚像。そして、第七真音律を帯びた少年、シェルティスは穢歌の庭を進む。最愛の人を守るという想いを叶えるため―浮遊大陸で希望を胸に抗う者たち、穢歌の庭より悲哀の遠吠えをあげる獣たち、その戦い。魔笛を宿した少年、沁力を持つ少女、ふれ合うことのできないふたりの約束。すべての願いと戦い、決意と希望が交錯する、重層世界ファンタジー、終曲!
これ、ちょっとイグニドがカワイソすぎるじゃないですか。これで本当にシェルティス以外眼中にないくらい病み狂っていたならまだしも、双子に接する愛情といい、何だかんだと知り合いには情を傾けてしまうところといい、目からハイライトが消えているとは思えないくらい元の優しい彼女を保っていたわけですし。彼女が本当に負の感情を抱いていたのは、ユミィだけだったのですから。そのユミィに対してさえ、ある意味必要ないくらい公平に勝負してしまうあたり、この娘の根本は何も変わっていなかったのがわかります。彼女とユミィの違いって本当に置かれてしまった立場だけなんですよね。
イグニドって、結構嫌らしい事も仕掛けてきて決していい印象のモテる相手ではなかったんですけれど、その心情を見てしまうとなあ。本当ならもっと小狡い策もとれたでしょうに。彼女にとって優先するべきは自分ではなく、あくまでシェルティスだったことが痛感させられます。
その献身は無駄にはならなかったけれど、シェルティスにとってユミィは一人である以上、彼女が報われる事はなかったのです。彼女もまたユミィその人であることを思うと、これは本当に切ない。幸いにして、彼女が孤独なまま打ち捨てられる事はなく、新たな家族ともいうべき異篇卿の面々が寄り添ってくれることになるのですが……。うん、異篇卿って一つの目的に向かって強くまとまってはいたけれど、そんな家族的集団には見えなかっただけに、イグニドのために世界を越えて駆けつけてくれたのには、ちょっと感動してしまった。良かったね、ユミエル。
虚像と実像。氷の向こうの鏡界面。鏡合わせの隔たり。ユミィとイグニドの関係はその一つの象徴でありましたけれど、穢歌の庭という場所、そしてセラというすべての元凶となった少女の存在、その想いの形もまた、鏡合わせであるが故の哀しいすれ違いであったことが、その最深部にてシェルティスは目の当たりにする事になります。エルベルト共鳴の真実、そして禁断水晶が託した本当の願いも。世界を滅ぼすに至った根源のどこにも悪意はなく、幽玄種の人類に対する敵意もまた、純然たる正方向の怒りであったのです。
幼女を泣かすとか、絶対許さん!
とか思ってたかどうかは知りませんけどっ。

第七真音律と第七天音律、最初から真実はここにあったわけだ。

今回は総力戦ということで、ようやくというべきかやっとというべきか、第一位の巫女と千年獅が顔見せしてくれました。……巫女が銃火器持って暴れるとか、なんか違うんですけどミカエルさん!
こ、このロボ子、まさか千年もの間、凪にメンテしてもらうの待ってたのか。そんなに全身弄んで欲しかったのか。ってか、さすがに壊れるでしょうに、それ。健気を通り越して若干アホに見えるのは相変わらずか、この赤髪。
あと、ユメルダ先生はさすがに千年前の当人とは違ったか。右流の家名は同じなので、モロに血族ではあるんだろうけど。
驚くべきは、かなりダイレクトに【黄昏色の詠使い】の世界と繋がったことですか。正直、シャオやアマリリスみたいな上位存在を介してしかつながらないと思っていただけに、まさかこうも直結するとは。ってか、カインスさん、あんたまだイヴ探してるの? なんつーか、執念だよなあ。そのうち、人間辞めても探してそうだけれど。
どうやらこれ、最終的にあらゆるシリーズをひとまとめにした集大成的なお話が待ってそうだな。
その前に、まずは次のシリーズ。ネクサスにまつわる話がはじまるようなのですが、そうなるとツァリが今度は本格的に話に絡んでくる事になるのか。彼女については、こちらの世界は旅の途中、みたいな様子でしたし。なんとなく、エリエ込みで次のシリーズにも登場してきそうな予感。
あと、個人的には凪とサラの再会はちゃんと描いて欲しかったなあ。こっちではずっと固いまんまだった皇姫さまが、盛大に壊れる様子を見てみたかった。
逆に満を持して見ることが出来た光景こそ、シェルティスとユミィが触れ合うシーンでしょう。まさに、これを見るための物語だったのですから。感無量。
でも、余韻に浸る間もなく次に移行できるのは、これはこれで心地良いものです。次のシリーズにも大いに心踊らせたいものです。楽しみ楽しみ。

シリーズ感想