VRMMOをカネの力で無双する (HJ文庫)

【VRMMOをカネの力で無双する】 鰤/牙/桑島黎音 HJ文庫

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課金は、能力<チカラ>だ。

ツワブキコンツェルンの御曹司、石蕗一朗はすごいお金持ちである。
ゲーム内での人捜しを手伝ってほしいとハトコの石蕗明日葉にお願いされた彼は、新世代VRMMO「ナローファンタジー・オンライン」の大地に降り立った。
しかし、すべてにおいて頂点を極めなければ気が済まない一朗は、その才能&財力を使い、ゲーム世界で無双しはじめる!
キリヒト軍団には素で吹いてしまった。オンラインゲームって全然知らないんだけれど、同じような光景が現出してたんだろうか。開き直ってキリヒトだけでギルド作った面々の遊び心には色々くすぐられるものがありましたけれど。
さて、本作はタイトル通り、主人公が課金しまくって無双する、と言った内容なのですが、いやこの金の使い方はアリなんじゃね? まずもって、彼が使っている金銭は全部自分で稼いだものであって、財産として労力無く与えられたものではないということです。そして、彼は別にルール違反しているわけじゃないんですよね。このゲームは課金することで様々なボーナスを受けることが可能である。自分で稼いだ金をつぎ込んでルールに則った遊び方をシて何が悪いんだ、と。大人げないとは思わないね、全然思わないね。石蕗氏の遊び方は、粋だよ。
そう、成金の下品なお金の使い方じゃないんですよね、石蕗氏の場合。湯水のように金を使い、金に物を言わせて自分をパワーアップさせているんだけれど、だからといって金の力で他人を貶めるような真似は一切していないし、自分への使い方にしろ意外にも他人からズルい、と不公平感を抱かせるものでもないんですよね。
それは彼が金の力を卑下せず、しかし金の力に増長せず、純粋に金の力を能力の一つとして捉えているからなのかもしれない。だからこそ、石蕗氏は金の力以外の「チカラ」に対しても純粋に評価し、対等に相対する。そこに、嫌味ったらしさの欠片も見当たらない。
この辺りの品性のバランスは何気に難しいと思うんだけれど、石蕗氏は実にスマートである。
しかし、ここまでスマートだと、石蕗氏は主人公とは言いがたいのかもしれないね。何にせよ、完成されすぎている。彼は道標でありトラブルメーカーでありラスボス…乗り越えるべき壁として理想的な存在だ。彼自身は、自分の思うように好きにやっているだけなのだろうけれど、手を差し伸べることと自主性を重んじる両方に長けている彼は、明日葉にとってこれ以上ない保護者でありサポート役であったし、自分がやるべきこと、どうするべきかを迷う彼女に自分で考え決断する機会を与えてくれる存在でもあった。一方で、世良にとっては自信と自負の塊である彼を乗り越えることが、世良にとっての「確かなもの」となり、何も掴めずもがくばかりだった中でようやくつかめた取っ掛かりとなる、いわばシンボルであり目標として機能していた。
他にも、色々な意味でインパクトの強すぎる彼の存在は、様々な人にとってそれぞれに既存の世界観を破壊され、自問自答を促すこととなる。こういうのがカリスマ、とでもいうんだろうか。ほんと、ここまで行くと主人公から逸脱してると思うんだけどね。むしろ、明日葉や世良の方がそれっぽいんだけれど、物語は我が道を行く石蕗氏を中心に描かれていくので、その意味でも面白い作品になっているように見える。
さて、肝心要の世良の性別だけれど、私は女の子イチオシで。こういう静かに燃えてる子は、男の子よりも女の子の方が好みなので。