灰と幻想のグリムガル level.3 思い通りに行かないのが世の中だと割り切るしかなくても (オーバーラップ文庫)

【灰と幻想のグリムガル level.3 思い通りに行かないのが世の中だと割り切るしかなくても】 十文字青/白井鋭利 オーバーラップ文庫

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ハルヒロたちが挑む、初の大規模戦闘(レイドバトル)……!

チョコって、もしかしてあのチョコ……?
思わぬ活躍で有名になったハルヒロと仲間たち。自信を付けた仲間たちと、悩み続けるハルヒロのもとに後輩となる義勇兵達が現れる。そこにはハルヒロの記憶に残る名前を持った少女もいた。そんななか、オルタナの街はオークたちの居座るデッドヘッド監視砦の奪還に向けて動き出していた。報奨金目当てに作戦参加を決めたハルヒロたちは、レンジやチョコたちと共に初の大規模戦闘(RAID)を戦うことになる。
灰の中から生まれた冒険譚は、いま大きな節目を迎える!
ラストシーンのあの挿絵は、素晴らしく効果的だった。あのイラストとのコラボレーションがなかったら、あれほど衝撃的にならなかったかもしれない。
それにしても、この作品については完全に容赦なしモードだなあ。決して展開的に無理矢理にハルヒロたちを追い込んでいるわけじゃない。ひたすらにサイコロの目がファンブルし続けるような極悪な展開をキャラに強いるような作品もあるけれど、ハルヒロたちを見舞う展開はひたすらに公平だ。良くも、悪くも。
ハッキリ言って、ハルヒロたちは予想以上に強くなっていたと思う。彼らがデッドスポットを倒して得た自信は、決して空っぽの根拠のないものなんかではなく、確かな実感とともに得られたものだったように思う。この大規模戦闘でハルヒロたちがみせた強さは本物だった。なにしろ、あれほど隔絶した差があったレンジたちのパーティーに対して、脇に徹していたとはいえ肩を並べて戦うことが出来た上に、一度ならずレンジたちのピンチを救う活躍をみせたのだから。それも、偶然やラッキーによるものではなく、ちゃんとした実力に基づく戦い方で、だ。
本当に、強くなっていたと思う。まともに戦うすべも知らずに、拙いにも程がある見っともない戦い方しか出来なかった頃に比べたら雲泥の差だ。ハルヒロの折々のリーダーとしての判断も、大きな間違いや致命的なミスは見当たらなかった。
にもかかわらず、それがどうした、と言わんばかりに現実は容赦など無く冷淡だった。
失われた過去にすがるかのように訪れた出会いを、一顧だにせず踏みにじり、決して失われてはならない、代わりの存在しない要たるモノを打ち崩す。話の流れの都合など、まるで関係ないのだ。取り返しがつかないなんて、知ったことではないのだ。そう言わんばかりに、差し出した手のひらの上から、大事なものがこぼれ落ちていく。
記憶が無いモノ同士でありながら、話している間に沸き上がってくる阿吽の呼吸。チョコの存在は、もしかしたらこの世界の謎、どうして記憶をなくしたモノたちが義勇兵となるべくこの街に現れるのか、その謎を、ハルヒロたちを正体を含めた謎を追い求めていく鍵になったかもしれないのに……。この物語は、記憶から失われた帰るべき場所を探し求める話とは、根本的に違うのか、と今になってようやく思い知った気がする。彼らにとって、過去はもう振り返る必要のない終わった存在なのだ。チョコは、過去から現れた残滓ではあっても、また共に今を生き、一緒に先に進むことの出来る可能性はあったのかもしれないけれど、あの瞬間以降の、ハルヒロの衝撃を受けながらも、しかしそれ以上取り乱さずに起こった出来事を受け止めていた態度から、ハルヒロにとっての失われた過去の重みが今となってはどの程度のシロモノなのかが、うっすらと透けて見えた気がした。だからこそ、その後の展開のほうがより重たい衝撃となって駆け抜ける。過去ではなく、今を共に生きている仲間の事だからこそ、より冷たい電撃となって背筋を通り抜けていったのでした。
これ、ほんとどうするんだろう。あまりのことに、うめき声しか出てこなかったですよ。まだ、決定的な描写があったわけじゃないから、事実関係決まったわけじゃないんだけれど。振り返ってみると、ちゃんとフラグ立っちゃってたしなあ。
ほんとにもう、気を抜けるもんじゃないわ。面白いったらありゃしない。

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