つくも神は青春をもてなさんと欲す 2 (つくも神は青春をもてなさんと欲すシリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)

【つくも神は青春をもてなさんと欲す 2】 慶野由志/すぶり スーパーダッシュ文庫

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物の修理が得意な高校生・物部惣一は、激動の「村正事件」を乗り越え、茶釜の付喪神・つくもたちと騒がしくも心温まる日々を送っていた。ある日惣一たちは粋華に頼まれ、ある付喪神を鑑定する。つくもの見立てでその正体は『打ち出の小槌』の付喪神と分かるが、突如その小槌を狙った忍者に襲撃される。さらにその後、惣一に不運による深刻な金欠という最大の試練が訪れる。やむなく喫茶店でバイトを始める惣一だが、店長の妹、四画崎比良がなぜか敵意を向けてきて…!?道具を愛する少年と小さなつくも神が贈る心の“おもてなし”学園ファンタジー、第2幕!
待て待て待て、あの伝説の名器をして流行りが廃れたから価値なし、なんてことにはならないだろう。幾らなんでも知名度が高過ぎる。実際、このタイプは古織さんじゃないけれど、見ててはにゃんとなる面白いだけじゃない味のある、乙な名物だと思うんだがなあ。
まあ、失われた名物だけに、実は現存してました、と言われても偽物呼ばわりされてぞんざいな扱いをされてしまったのも無理からぬ事なのかもしれないけれど。って、ググったらほんとに現存しているとされるモノが美術館にあるんだ。まあこれについては、残っていると言われても「えー」と斜めに見ちゃうよなあ、やっぱり。さて、比良ちゃんなんだが、これまたひどい属性がついちゃって。つくもが、元の姿である茶釜らしい「おもてなし」の能力を持っているのに比べて、この娘のそれは合ってるけど違うだろっ、と思わず突っ込んでしまうような能力で。本人の意図するところではない上に、比良ちゃん自身忸怩たるものがあるようで可哀想なんだが、それでもこれは酷い(苦笑
酷いといえば、あの打出の小槌も酷いよなあ。なんか、いいコト言ってるふりしてやってること、ろくでもないじゃないですか。妙に上から目線で試しにかかってますけれど、あんたにそんな試しされる謂れはないし、一方的だし、起こされた障りがガチできついんですもん。金欠ナメんな。お陰で妙なところで人間関係ギスギスしてしまったわけですし。
そこに至るまでの、惣一と、鞘音とつくもの三人のアットホームな雰囲気がとても素敵だったので、一時的にとはいえそれを邪魔されたことでプンプンですよ。
それにしても、鞘音のまた可愛いこと可愛いこと。お嫁さん属性ヒロインのニューカマーですよ。これまでの経緯もあってか、口数が少なく表情も乏しい系の人付き合いが苦手なタイプの娘だったのですけれど、今となってはそれがむしろより一生懸命さ、健気さを醸し出してるんですよね。尽くす系だ。惣一は惣一で、すでに店を切り盛りしているだけあって、独り立ちしている男の子なだけに、古臭い一軒家でちゃぶ台を囲んでいるともう熟達した若夫婦の雰囲気が。つくもがくっついているのも、むしろお子様がコブとしてついているみたいな感じになっちゃってますもの。
個人的には、男の貫目としては鞘音の申し出はあえて受けて甘えるのが懐の深さだったんじゃないかなあ、と思わないでもない。そこで男の意地を張るのは、まあ男の子らしいんだけれど、単なる見栄っ張りだよね。甘えさせてもらった分は、違うことで還元するのが甲斐性ってなもんだったと。まあ、そこはそれ、今回は仕方ないということで。四画崎兄妹と新しく出会うきっかけになったという意味では、大いに実りのある選択だったわけですし。惣一は別に世間知らずでも苦労知らずでもないので、改めてバイトしたからといって、それほど新たな見識や社会の在り方を発見したり身につけたり、ということはなかったとは思うんだけれど、比良という少女にとっては良い出会いになったし、惣一にとっても四画崎さんという独特の感性と、大人らしい懐の深さを持った人と出会えたのは、男の貫目とは何なのかを肌で理解する良い機会になったんでしょうし。四画崎さん、絶対に外に現地ヒロイン居るよな、この人。ある意味、別の物語の主人公みたいな感じの人だし。いや、外に行かなくても、持ち歩いているアレからして、女性人格じゃないの、もしかしてw
それはそれとして、実はこの世界、ド派手なバトル展開をやってる付喪神の裏社会もあるんだよ、と明示しておいて、はっきりあっちとこっちを区切ったのは面白かったなあ。安易にそっちに走らずに、ちゃんと線引してくれたのは、安心もしました。鞘音はあれで、かなり出来る娘だけれど、あんまりバトル展開似合う娘じゃないですからねえ。
このまま、ほのぼの賑やかでアットホームなラブコメを続けて欲しいです。粋華たちも、もっと出番増やしてもらって。せっかく、みんな良いキャラしてるんですから、じっくりみんなでわいわいして欲しいや。

1巻感想