彼女たちのメシがマズい100の理由 6 (角川スニーカー文庫)

【彼女たちのメシがマズい100の理由 6】 高野小鹿/たいしょう田中 角川スニーカー文庫

Amazon

年に1度、告白が許される日―バレンタイン。彼女たちは当たり前のように葉介の家にいた。「ここから先は乙女の企業秘密です!」それを最後に閉められたカーテンから聞こえる恐ろしい声。「味覚音痴」なリリィに「激辛」のカロン。「虫」メシマズの華凪だってチョコをくれるに違いない!そう、メシマズが集まる日―バレンタインでもあるのだ。平穏を懇願する葉介の運命は!?愛内葉介の悩み、それは今日も変わらず毎日の食事!
ああ、めげてないように見えて、何だかんだと紅緒も凹んではいたんだ。そりゃそうだよね。正直に言ってくれ、と頼んだのが自分としても、頑張って作った料理をマズいと言われて平気じゃいられないよね。
しかし、だからと言って優しい嘘で繕われては、葉介と自分との関係にこれからずっと嘘がまとわりついてしまう。
バレンタインという特別なイベントだからこそ、正直に言われても嘘をつかれても紅緒は自分がどれほど傷ついてしまうか自覚し、慄いてしまったのでしょう。逆に考えると、それだけ彼女はバレンタインというイベントを葉介との関係を見直す上で大変重要なものと捉えていて、同時に葉介との関係が自分にとって生涯に関わる事になる、と思い定めていたことになる。
最初から青信号で両思いの二人で、結局二人の間に割って入るものもなく、無駄な抵抗の華凪ですら内心は紅緒の事を認めていて(だからこそ無駄な抵抗をしていたとも言えるのだけれど)、女性キャラは多く登場したけれどその殆どは二人の関係を後押し、応援する側に回っているという、非情に恵まれた環境に居た紅緒と葉介。
さっさとくっつけよ、と言いたくもなるけれど、ぬるま湯だからこそしっかり浸からないと温まらない、とも考えられるわけで。この二人の場合、くっつくとなるともう恋人という関係を通り越して、結婚してからの生活も考慮に入れてかからにゃあならなかったんですよね。もう紅緒は最初からそのつもりっぽかったし、周りの視点も恋人関係になるのはすでに大前提というか眼中に無く、ちゃんと夫婦としてやっていけるか、という観点にすでに入っちゃってたし。姉貴とか、紅緒の母親とかは特に。華凪のあれだって、もう妹としての嫉妬じゃなくて小姑のそれになってましたしねえ。純粋に好きとか恋とかという観点で応援してくれたのはリリィくらいのもんなんじゃないだろうか。
しかしだからこそ、紅緒としては自分のマズイ料理をなんとかしなければ、という使命感に駆られていたのだし、葉介も自覚を持って覚悟を決めるだけの、醸成の時間が必要だったわけだ。
この6巻は、その環境と関係と字画を整えるための時間だったのだろう。それが、概ねメシマズに彩られていた、というのは多難の人生を暗示しているのかもしれない。もっとも、ことメシマズに関しては葉介はもう最初から覚悟完了していた気もするけどね。最初から、一生紅緒のまずい飯を喜んで食う覚悟を。
その覚悟を感じていたからこそ、紅緒はそりゃあいかんだろう、と美味しいご飯を作れるように頑張ってたんだろうけどさ、ずっと。何しろ、父親という前例がすでに居たわけだしねえ。
個人的には、葉介の覚悟に甘えずに、美味しいご飯を、一般的に見ても美味しいと思えるご飯をちゃんと葉介に食べさせてあげたい、と頑張ってた紅緒は、ほんと良いお嫁さんだと思うよ。ほんと、作る飯がマズイ、という以外は瑕疵がまったく見えないパーフェクト嫁だもんなあ、この子。そんな完璧な娘をして、作る飯がマズイというだけで、羨ましい、と言い切れないあたりに、人間の生涯における食事というものの比重を感じ取れる作品でしたw

途中、メシマズ関係ないじゃん、という展開がまま見られて、テーマとしてかなり揺らいだところのあった作品でしたが、それでも良い幼馴染モノだった、と言い述べたい。紅緒、可愛かったです。最後もちゃんと新たなメシマズ要素で〆てくれましたしね。
あと、虫だけは絶対に絶対に無理だから! 特にGとか、アウト!!

シリーズ感想