疾走れ、撃て! 9 (MF文庫J)

【疾走れ、撃て! 9】 神野オキナ/refeia MF文庫J

Amazon

クィーンの提言を受けた突然の戦闘停止。相手は交渉可能な存在なのではないかという期待が世界を駆け巡る。だが現状を仮初めの休戦と見た軍は、理宇たち紫神小隊を第三独立中隊として再編した。中隊長となった理宇の下にはリヴァーナや、先の戦闘で理宇の命を狙ってきた溝呂木のシンパたちまでもが集められた。さらにミヅキの身を心配した父の差し金でアメリカ海兵隊のブレンダもやってきての一騒動…。「ようこそ、我が中隊へ!」虎紅やミヅキと、理宇は覚悟を新たにする。―そして刻限!!ダイダラが咆哮する戦渦に立つ、新感覚軍隊ラブコメ第9弾!

待て、待て待て待て。多様性を喪ってしまえば、その先にあるのは完全な停滞だぞ? 様々なバリエーションがあるからこそ、目新しさというのは産まれてくるものなのに、どうして画一化シなければならないのですか!?
おぱーいの話である。
いやまじで。ミヅキもリヴァーナも、あのブレンダ姐さんもバインバイン揃いだからこそ、少佐のちんまいバディが引き立っていたというのに、何故だ何故だ何故なんだーー!!
個人的には育つ系は全然ありだったんだけれど、少佐については別である。ショックである。衝撃である。失われてしまったのだと涙が出てきた。うぉーーーん。虎紅がいるから別にいいじゃん。

シリーズ最大の衝撃的な展開がラストに待っていたのだけれど、客観的世界の行く末的には瑣事なのでしょう。主観的にも、別に理宇はおぱーい星人でもなかったと思うので、さほど関係はないかもしれないが、それでも私のワールド的にはパラダイムシフトでありました。いっそ、ポールシフト的とすら言っていいくらい、世界の見え方がガラリと変わる展開でした。おのれ、活火山。

ちなみに、私は別に平原派ではありません。若干山脈派寄りですよ? でも、多様性を楽しめるお得な雅観を完備しております。
しかし、まさか少佐のあれが、陰謀論に基づくものだったとは、なんだってーー!? と叫ばずには居られない。運命といえばまさに運命の邂逅であったのでしょうけれど、その出会いがなければずっと少佐はこのままで居られたのだと思うと、偲ぶ涙もありけりなり。まあ、恋する少佐の不器用な可憐さを思えば、この変転も仕方なかったのだと思うのだけれど、はたして今後あの「可憐」さが維持できるのは、甚だ不安である。いやまて、視点を変えてみるならば、無表情不器用系のクーデレなダイナマイトお姉さんが誕生したと思えば、ウハウハじゃね? 

と、いつまでもこだわりについて語っていても話が進まないので、客観的世界の様相に言及するならば、こちらもまさにターニングポイントを迎えている。
相手は交渉不能の異星体。相手を殲滅するまで終わらない生存戦争、或いは絶滅戦争と言っていい戦いに人類がハマり込んでいたのだと思っていた所に、まさかの敵のクイーンからの停戦勧告と、交渉の申し出があった。
全く選択肢がないまま、どちらかが死に絶えるまで戦わなくてはならない、と思っていた所に違う選択肢が現れた、というのは考えてみれば途方も無い希望の光りなはずなのです。正直、官民政軍問わず、長年の戦争で疲弊した人類は、この希望に飛びつきすがりついてもおかしくはなかったんですよね。
でも、頼もしいことに、この世界の各国の政府や軍部は、敵意にしろその逆にしろ、いずれの感情をも脇に置いた冷徹と言っていいくらい冷静な判断を失わず、安易に希望的観測に飛びつかなかったんですよね。これはちょっと意外だった。もっと、意思統一ができずに無茶苦茶な混乱が起こると思っていたのに、停戦は続かず戦争は再開されるという判断がブレずに敷かれ続けていたんですから。この備えがなければ、停戦が終わった段階で人類は二度と立ち直れないダメージを受けていたとしてもおかしくなかったはず。
ここで描かれてる政治や軍部はほんとに冷たくて怖いんですけれど、それ故にプロフェッショナルに徹していて、権益を欲したり野心にしがみついたりという行動はあるにしろ、国の実利を疎外するまでのものではなく、非常時においてはほんと頼もしいんですよね。
でも、それは同時に末端は容赦なく駒扱いで消費されかねない、という危険性も内包していて、実際捨て駒扱いで使い潰された学兵たちも存在し、その傷跡は今なお色濃く残っている。なので、その「駒」の一つである理宇たちは、常に使い潰されることへの危険性を意識して、注意深く慎重に行動しているのも、安心感の一つなのでしょう。警戒心のない主人公たち、というのは傍から見ていてハラハラを通り越して、イライラを貫いて、もう「死ぬがよい」とまで思うケースも度々ありますからねえ。その点、彼らの慎重な立ち回りは、ほんと好感持てます。勿論、どれほど慎重に注意深く立ち回ろうとも、どうにもならない時はあるのですけれど。それをも覚悟に入れているのですから、何というか子供だろうと十代だろうと、社会の荒波は容赦してくれないのよねえ。
その上、英雄やそれ以上の役割を果たせ、と強要されてるわけですから、途方に暮れても仕方ないでしょうに、理宇たちはスれも荒れもせず、すごく健全に前向いたまま頑張ろうとしてるんですから、そりゃあ同世代の仲間たちも、彼らを見守る大人たちも、自分の出来ることを尽くして、一緒に戦おうと思ってくれるわけだ。それこそ、一度は理宇たちの命を狙った連中でさえ、飲み込むほどに。

万能の杖にまつわる謎の、中核と言っていい部分が概ね明らかとなり、輪をかけて壮大な話になってきたところに、ラストのあの展開。もうクライマックスに突入しているのですが、酷いことにならずにハッピーエンドまで走りきって欲しいです。
あの教官カップルが、完全に「この戦いが終わったら結婚するんだ」という流れに乗ってしまっているんで、その辺りのフラグ折りも願いを込めて。まあ、夏華さんが死亡フラグなんてへし折りそうですけれど。素手で。婚活戦士に死亡フラグとか通じなさそうじゃけんw

シリーズ感想