東京レイヴンズ11change:unchange (富士見ファンタジア文庫)

【東京レイヴンズ 11.change:unchange】 あざの耕平/すみ兵 富士見ファンタジア文庫

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新年、東京。春虎を追い続ける夏目は、久しぶりにこの街に帰ってきた。呪術界を揺るがしたあの夜から一年半。かつての仲間たちの現状が気になりながらも、会えば迷惑をかけると己を律する夏目に、秋乃の素朴な言葉が突き刺さる。「夏目はいいの?友達に会えなくていいの?」一方、夜の東京の片隅で、陰陽庁の仕掛けた「餌」に大きな獲物が食いついた。始まる激しい呪術戦。出動した『十二神将』と対峙するのは―。変わりゆくもの、変わらないもの。呪術と陰謀渦巻く東京で、再び運命が動き出す!
天馬のやつが本当にいい仕事するよなあ、こいつ。仲間たちとの出会いはどれも得難いものだったけれど、その中でも天馬という何も特別ではない少年とこうして友達になり、仲間になれたことこそが特別だったんじゃないかと、こうなってみると思えてくる。彼と仲良くなったのって、冬児がたまたま適当に声カケたから、でしかないんですよね。きっかけとしてはただそれだけで、だからこそ大きな運命すら感じてしまう。
鴉羽の時にしても、今回にしても、要となり先へと繋ぐ結び目となっていたのは間違いなく天馬でしたし。あの隠形術の使い方に目覚めた時から、ずっと密かに鍛え続けている、というのも良かったなあ。どうしても甲種前提の力を鍛える方向に行っている他の子たちと違って、天馬が一番乙種の使い方、というか使い様を自然に体得していっている気がする。ある意味、本当の陰陽師に近い道を歩んでいるのかもしれないですね。

というわけで、二部スタートにあたり、春虎と夏目以外の仲間たち、主要人物たちがこの二年、どういう道を選択し、どう過ごしてきたかの歩みを辿る足場固めの回でした。冬児が天扇と逃亡し、京子は学園に戻りながら監視される日々、鈴鹿は研究室に戻った、というのは前巻でもチラリと触れられていましたが、実情はどうなっているのか、というお話。なし崩しにそうなった、というわけじゃなく、鴉羽の事件のあと、一度集まって相談した上で決断した道だったわけですな、それぞれ。みんな目的意識を持っての選択であったが故に、この仲間たちと一切接触が立たれ孤立した状態に置かれながらも、強く心を持ってそれぞれに自分を高め、春虎と夏目の帰還を待つ日々だったわけですが、それでも二年間ずっと孤独に過ごし続けることの辛さは、徐々に各々を苛んでいたのでしょう。特に、事実上監禁状態にあった京子と鈴鹿の疲弊は見るに耐え難いものがありました。
だからこそ、夏目の手紙にかこつけた、天馬のアレは素晴らしかったんだよなあ。閉塞を一気に打破する、素晴らしいメッセージだった。そりゃ、テンションもあがるってなもんですわー。

天海の爺さん、後遺症はかなり重いもので、老齢ということもあり、さらに呪力の封印も解かれぬままである以上、もう全盛期への復帰は叶い難いのか。でも、呪捜部というのは食わせ物揃いのようで、頼りになる御仁、という風はまるで変わらず。ただ、冬児を鍛える師匠役としてはちょっと筋が違うみたいで、冬児が自分の鬼を制御する指導役に選んだ人物は、ぶっちゃけあまりにも予想外過ぎてぶっ飛びました。
よりにもよってこいつかよ!!
この人のポディションほど訳わからんのもないよなあ。これだけ危ない人物にも関わらず、実際何度も危害を加えられているにも関わらず、決定的に敵に回っているわけではないんですよね。位置取りもかなり独特だし、今後の動静が全く読めない人物でもある。にしても、大友先生好きすぎだろう、こいつ。そこまで真似したがるか。

その大友先生だけれど、こっちはこっちで春虎と同じレベルでテロリストとしてはっちゃけ中。京子の星詠みが不安すぎるんですが、Dの闇に飲まれつつあるのかしら。なんかまた濃ゆそうな式神が二人登場してますけれど。いや、大友先生よりもなんか変わっちゃってるのが木暮っちですよ。まさに人が変わったような風情で。ってか、神通剣、本気になった時の強さが尋常じゃないを通り越して異常なんですが。木暮さん、こんなにデタラメだったのか!? ぶっちゃけ、炎魔の人より強くないですか? 火力で押し切る宮地さんよりも応用性ありそうですし。
化け物揃いの十二神将の中で、新加入の山城くんが、相変わらず凡人の才をひた走っているのが微妙に笑える。でも、この作品の場合、未熟だったり地味だったりするのは成長フラグなんですよね。実際、他の十二神将と較べて力も特徴も乏しい中で、いい味を出しつつある。化けてくれそうなんだよなあ、彼。

さて、未だに謎のままの倉橋長官一派の本当の目的。夜光の遺志を継ぐ、と標榜しながらも決して夜光を崇め奉るのが目的でなかったのは、復活した夜光である春虎と完全に敵対状態に入っちゃってる事からも明らか。その真意を探るために相手の懐に飛び込んだ鈴鹿だけれど……そうかー、相馬の姫、多軌子と交友を結ぶことになっちゃったか。多軌子は、ほんとに昔と変わらないまんま。鴉羽の事件を通じてもうちょっとスレちゃうかなあ、と思ってたんだけれど、いい意味でも悪い意味でも純粋なまま。
でもね、人を呪わば穴二つ、じゃないんだけれど、交友を深めることで情に訴え、情によって鈴鹿を縛ろうとする呪は、そのまま多軌子にも及ぶ呪なんですよね。
多軌子の純粋さは、自分の正義を疑わない純粋さは、この呪をものともしないのかもしれないけれど、さて……。
しかし、なるほど、八瀬童子はそういう意味だったのか。相馬家が、あの人物に繋がる血統だった、というのも驚きだけれど。これは、相馬の血、というのは予想以上に重要になってくる予感。秋乃の存在だけならまだしも、鈴鹿もまた「相馬」だったとなると、なおさらに。

そんな血の宿命に縛られている多くの人々の中で、血に縛られない、願いによって結ばれた運命がある。
夏目の出自が本当に何の因縁もないゼロからのものだった、というのはなかなかの驚きでした。春虎の両親の本当の子、というパターンでもやっぱり違ったのか。そして、誰かの生まれ変わりでもなんでもなく、きっと本当のイレギュラーだったわけだ。その娘を、泰純が願いを込めて運命の輪の中に招き入れた、と。ようやく、本当の父娘として胸襟を開けて語り合う二人の姿に、思わずジンとしてしまった。良かったよ、血の繋がりがないとはいえ、夏目はちゃんと土御門の一員で、家族だったんだなあ。

さあ、再び舞台は東京に。天馬が掲げたそれが、新たなる動乱の号砲となるのか。次からこそ、大きく動き出しそうだ。

シリーズ感想