ナイツ&マジック 4 (ヒーロー文庫)

【ナイツ&マジック 4】 天酒之瓢/黒銀 ヒーロー文庫

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西方諸国に、鉄と炎の嵐が吹き荒れる。西方随一の大国であるジャロウデク王国が、突如としてもうひとつの大国クシェペルカ王国へと宣戦を布告した。押し寄せる黒鉄の騎士、さらには未曾有の航空兵器までもが投入され、クシェペルカ王国は滅びの時を迎える。その渦中へと、フレメヴィーラ王国第二王子エムリスはクシェペルカにいる叔母を助けるために飛び込んでゆく。同行したエルネスティ率いる銀鳳騎士団の前には、彼らが作り出し、彼らしか持っていないはずの最新技術を用いた幻晶騎士が敵として立ちはだかった。その正体に気付いた銀鳳騎士団は、ジャロウデク王国への敵意を確かとする。敵を倒し友邦を取り戻すため、エルネスティは鬼面六臂の鎧武者を駆り、銀鳳騎士団へと命を下す。「囚われのお姫様たちを、奪い返しに行きましょう」と――。
やばいよやばいよ、エルくんがこええ! この子、完全に戦争を楽しんでるわー。それも、自分の所業に無自覚なタイプではなく、どうみてもマッド寄り。まあ、考えてみると最初からこの子は一貫して「これ」だったわけで、いまさら戦争ごときでスタンスを変えるはずもないのか。
むしろ、この無邪気な竜の子に好き勝手させるだけの懐の広さと遊び心を持ち合わせたフレメヴィーラ王国の器の方が恐ろしく感じてしまう。エルくんに感化されたから、といえばそれまでだけれど、感化される余地が国体にもそこに住まう人たちにも最初からあったからこそ、エルくんと一緒になってはしゃぎ回る狂乱国家が出来てしまったわけで、素養はあったんですよ、素養は。それが、魔獣番と呼ばれる特殊な在リようにあったのかはわかりませんけれど、もし他の国家だったらもっとエルくんを掣肘する方向に行くか、止めきれなくて振り回される形になってたはずなんですよね。まさか、国を上げて一緒にお祭り騒ぎで暴れだすとか、普通の国ならないからw 幾ら染まってしまったとはいえ、あのエルくんの無茶苦茶さに平気でついていってるんだから、実はエルくんと同じレベルでフレメヴィーラ王国は「おかしい」です。
言わば、ジャロウデク王国は、竜の巣に手を突っ込んでしまったんですな〜〜。
え? フレメヴィーラ王国そのものには手を出していないって? 国防というのは、自分の領地だけ守ってればいいものじゃありません。自分の国に直接手が伸びてくる前に手を打っておくのが、防衛の基本。その意味では、フレメヴィーラの国王陛下は出し惜しみもせず、決断も速いんだから頼もしいよなあ。

面白いのは、技術革新の速度がそのまま戦争の進行速度の激化に繋がってるところなんですよね。このクシェペルカ王国をめぐる戦争の推移、どれだけ短かったんですか。王国の崩壊とそこからの盛り返しのスパンが異様に速い。それもこれも、威力と速度の増大がそのまま事態の激化に直列しているのである。ジャロウデクの飛行船然り、銀鳳騎士団の馬型騎士然り。まさか、この段階で空挺戦術が出てくるとは。そりゃ、クシェペルカも短期で崩壊しますわ。何しろ、街道を塞ぐ砦も、本丸を防衛する城の壁も、二次元的な防衛設備は殆ど関係なくなるわけですし、伝令が行き交うよりも早く襲ってくる機動速度は、体制を整える暇も与えてくれませんし。その上、空挺によって降りてくる戦力が、通常の戦力が太刀打ちできないもの、となったらそりゃ抵抗もなにもあったもんじゃないですよ。
ところが、この空挺戦力も、機能するのは制空権が確保出来ていてこそ。まあ、まさかこんなに早く飛行船を落とす手段を用意してくるとは思わないだろうから、そりゃあ戦力集中しちゃうよなあ。実のところ、空挺戦力というのは正面決戦よりも、戦略単位として使うのが有効なんだけれど……いや、この仕掛なら使いドコロはここ、と判断するのは無理ないわ。司令官だったジャロウデク王国の第二王子は、責められませんよ。この展開を予想しておけ、というのは厳しすぎる。それを言うと、シャロウデク王国の侵攻を迎え撃ったクシェペルカ王国も、判断ミスらしいミスは犯してないんですけれどね。両者に何が足りなかったか、というと相手の手札を全部さらけ出させる情報力が足りなかった、というべきか。それも、国家機密やエルくんの頭の中を暴き切れ、というのは酷な話なので、何が問題なのかというと、戦争を激化させたのは、殆ど全部エルくんのもたらしたブレイクスルーなんですよねえ、まあ怖い。当人はといえば、ロボット同士で戦争できて、大はしゃぎ、という様相なのですが。まあ、ジャロウデクにも、飛行船を開発した危なそうなマッド開発者が控えているようなので、そのうち阿鼻叫喚の開発競争になっていきそうですが、やっぱり怖い。
そんな中で、あちらこちらでラブロマンスも出来上がってきましたよ。エドガーとヘルヴィーは完全に出来上がってますし、キッドにもついにお姫様が登場してしまいましたし、エムリス王子も従妹の子といい雰囲気だし。
キッドなんか、身分違いじゃ、と一瞬思ったんだけれど、よく考えたら彼も大貴族の子息なんだし、そこまで身分違いじゃないんだなあ。
他のカップルと比べると、エルくんとアディのそれは妙に微笑ましく見えてきてしまう。いやでも、年頃の男女としては明らかに変なんだけれどw
大西域戦争はまだはじまったばかり。実のところ、エルくんたち銀鳳騎士団が暴れまわったとはいえ、フレメヴィーラ王国自体は関与していないふりをしているので、本格参戦はしてないんですよね。というわけで、大事になるのはむしろこれから。次は早い目に読ませてほしいなあ。

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