ゴールドラッシュ・オブ・ザ・デッド (富士見ファンタジア文庫)

【ゴールドラッシュ・オブ・ザ・デッド】 永菜葉一/獅子猿 富士見ファンタジア文庫

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黄金―この希少な金属を求め、新大陸西部には一攫千金を夢見る人が次々と集まってきた。黄金狂時代の始まりである。だが、突如として現れた“空飛ぶゾンビ”により、その時代は終焉を迎える。瞬く間に西部は奴らの手に落ちていった…大地を埋めつくすゾンビの群れと、奴らを滅する武器「黄金の銃弾」を操る“秘装銃士”たちとの壮絶な戦いが繰り広げられる中、かつてゾンビにすべてを奪われた少年・ウィルが、黄金の刀を振るう伝説の戦士“忍者”として姿を現す!ゾンビ、秘装銃士、忍者。黄金を力とする者たちによる新たな黄金狂時代の幕開け!―「今、颯爽とハラキリ御免ッ!」
日本人って、この手の明らかに間違えてる「ニンジャー!」のこと大好きだよね。件のニンジャスレイヤー然り、あれは書いてるの生外国人だけれど、変な日本感に基づく変な忍者を見てしまうと、なんだか嬉々としてしまうのが最近の傾向。
とはいえ、日本人が「間違ってる」のを再現しようとすると、どうしてもなんか違う感じになってしまいがちなんだけれど、本作のニンジャーはいい具合に狂ってます。というか、新大陸の西部劇で空飛ぶゾンビとガンマンとニンジャで復讐劇をやろうという時点で、頭煮立ってるんですけれど。空飛ぶゾンビですよ、なにそれ怖い。走ってくるゾンビは怖いけれど、空飛んでくるゾンビはもう怖いを通り越してなんじゃいな、てなもんです。
一応、作者の前作は読んでいるんですが、今回は意図的に箍外してますね。前の作品はもっと普通でした、ヒロインのお姉さん振りたがるところがなかなか可愛いのが特徴といったところで、主人公にはあんまり面白みもありませんでしたしね。ところが、もう今回のこれは根底から書き方を変えていて、とかく掛け合いから地の文から勢いとノリ重視でガンガンぶちぬいていきます。テンションが明らかにおかしい、立ち止まったら死ぬ、という勢いでひたすらに突っ走るその様は、冷静になって振り返るともうあかん、という微妙な切羽詰まり方すら伝わってきて、ついつい煽りに乗ってしまうんですよね。
なんか、ジョジョを意識しているのか、ケヴィン姐さんの喉を枯らさんばかりの凄まじい絶叫解説セリフは、まさに伝説のスピードワゴン御大に匹敵する語り口で、これはもういっそ見事と賞賛してしまうくらいの生解説で、思わず拍手してしまった次第。いや、なかなかこれだけ気合の入った解説は書けませんよ。ケヴィン姐さんのそれを読んでいるだけで、なんだか満足してしまったくらいで。
まあ、ほんとに勢い任せで、中身についてはキャラの掘り下げも含めてかなり投げ捨ててるんですが。しかし、もう勢い以外の何もかもをも投げ捨てている潔さはいっそ気持ちいいです。はっちゃけてやる! という気合とテンションが伝わってきて、もうわりとどうでもよくなりますね。
と、そんな頭を空っぽにして吹っ飛んだまま最後まで終わるのかと思ったら、最後の最後で大どんでん返しというか、認識のパラダイムシフトが。
誰が正義で誰が悪か。何が正しく何が間違っているのか。突然根拠を突き崩されて足元の床がなくなってしまったかのような滑落感。そんな中で、正義も悪もぶちぬいて、復讐というエゴに縋り付き、たとえ間違っているのがコチラだとしても、それでも認めぬ、許さぬ、受け入れぬ、と一切の躊躇いなく切り捨てるその姿は、人間としての有り様を捨て去った、まさに忍者、まさに復讐者、しかしそのエゴこそがまさに人間そのもの。
なかなか悪酔いさせてくれる展開でした。侮れぬ。

永菜葉一作品感想