戦塵の魔弾少女(バレット・ガールズ) (このライトノベルがすごい!文庫)

【戦塵の魔弾少女(バレット・ガールズ)】 雨澄碧/桜沢いづみ このライトノベルがすごい!文庫

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内戦状態の独裁国家・バラトルム聖帝国。廃工場に身を寄せ合い生きていた戦災孤児のリッカと仲間たちは、ある日、とある施設へと保護される。しかし、そこは洗脳と身体改造によって人知を超えた能力を有す魔法強化兵を生み出す悪魔の強制収容施設だった。魔法強化兵へと改造された少女たちは独裁者の兵として硝煙弾雨の血みどろの戦場へ送られる。奪われた自由。奪われた心。正義なき戦争の果てに少女の瞳に映る世界とは――! 「魔法強化兵部隊、戦闘開始! 」衝撃のハード・バトルが幕を開ける!
これはきっと、世界のどこにでもある悲劇のよくある一幕。魔法という要素はあるけれど、それは魔法のパンツァーファウストなんかと同じく、細かく突き詰めた設定を排してわかりやすく特別っぽい力を少女たちに与えるためだけのもので、むしろ安っぽくみえる要素でもあるので、あんまり感心しない。魔法少女、みたいな印象を与えたかったのかどうなのか。ただの生体改造の方が生々しく感じたのだと思うのだけれど。ぶっちゃけ、他に魔法的な要素は殆ど見受けられなかっただけに、尚更に「魔法」というのが浮いて見えた。
それはさておいて、ここで描かれるのは何もわからない子供に銃を持たせて、倫理や常識をその頭のなかから洗い流して都合の良い理屈を植え付け、自分で考えられないようにした上で敵を殺させる、という子供を兵士にする悪虐の記録である。
ただそれだけである。
本当に、ただそれだけの話である。
少女たちの悲惨で報われない、夢も希望もなく、ただただ洗脳されたまま殺し殺され死んでいく様を描いている救いのない物語ですらないお話である。
うん、そこから殆ど何の発展性も生じなかったのは、物語としてはあまり見れたもんじゃなかったなあ。人間性をすり減らすことで苦しむことも、普段の少女らしさに無常観を感じることも、あんまり描けてなかったし。洗脳に抵抗して意思を保っていた隊長の葛藤も、ただ目の前の現実を生き延び、仲間たちを生き延びさせるための対処にリソースを持って行かれて、ただただ必死に殺すことに汲々とすることで、現実を打破する何らかの行動に打ってでたわけじゃありませんしね。極限状態で、少女同士の交流が描かれることもあまりなかったですし。
テーマに対して、殆ど何も訴えてくるものがなかったのは問題だったと思う。これで、本当に最後まで何の救いもないお話だったら、読むだけ疲れるだけのシロモノになってしまっていたかもしれないのだけれど、それだからこそ最後の一抹の光には救われた思いでした。それでも、この娘たちがまともな生活に戻れるかどうかは、怪しいのですけれど。