薔薇のマリア20 .I love you.[noir] (角川スニーカー文庫)

【薔薇のマリア 20.I love you.[noir] 】 十文字青/BUNBUN 角川スニーカー文庫

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“原子の極大魔術士”キング・グッダーに導かれ、九頭竜型超弩級飛行戦艦マキシマムAMドラゴンに乗りこんだマリアたち。危険から脱したと安心する間もなく、グッダーは大量のエルデン市民を乗せたまま地獄へ逆侵攻する。目指すは“世界の終わり”。そしてそこにいる地獄の支配者である帝王を倒すこと。成功すれば悪魔の統率が乱れて侵攻が止まると信じるマリアたちは、最後の力を振り絞り、またしても過酷な道をゆくのだが―。



薔薇のマリア 21.I love you.[rouge] (角川スニーカー文庫)

【薔薇のマリア 21.I love you.[rouge]】 十文字青/BUNBUN 角川スニーカー文庫

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ついに“世界の終わり”に到達したマリアたち。だが、地獄帝王の御所“終わりの果て”はいまだ遠かった。繰り広げられる悪夢のような戦い。死力を尽くして突き進む仲間たち。現実が引き裂かれ、叫び声は途切れ、溢れ返り涸れる涙、その行く先に待っているものとはいったい―!?すべての謎が明かされ、世界の真実がもたらされるとき、マリアたちは究極の選択を迫られる!ロングヒットファンタジーシリーズ、ここに堂々完結…!!

死ぬ、死ぬ、死んでいく、みんなが死んでいく。戦って戦って、戦い抜いて死んでいく。生きようと足掻いて足掻いて、死んでいく。生きようとして、生きようとして、生き残ろうとして、死んでいく。自分が生きるために? そうだろう、そうでもある。でもそれ以上に、みんなで生きるために戦って、その結果として死んでいく。
その死は路傍の死なのか。無意味な死なのか。何事も成し得なかった死なのか。失敗してしてしまった結果なのか。
違うだろう、絶対に違う。彼らの死は無駄死なんかじゃない。悲劇であり、惨劇であり、悲しみ涙すべきものであっても、それは決して無為なものではなかったはずなのだ。
彼らは絶望と戦い、生きて生きて、生き抜くために死んだのだ。
それをどうして無駄と言えよう。どうして、紛い物などと言い切れる。
ポロリポロリと掌の上からこぼれ落ちていくように、殺されていく人たち。だけれど、彼らが最後に伸ばした手は、まだ生きている人たちの足を掴むためではなく、並べてまだ生きている人たちの背中を押すようにして果てて行ったのだ。
先へ。未来へ。
それはもう歩けなくなるような絶望を押しのけるように、生きることを託すように、頑張れと応援するように。
誰もが、一度も足を緩めず、命あるかぎり駆け抜けていった。
これほど、生き足掻くために、生きるために戦って、死んで、生き抜いていった戦いを私は他に知らない。
それどころか、このシリーズが始まって、終わるまでのすべての生と死に、意味があったのだと。いや、SIXの言葉を借りるならば、意味なんかなくても意味を持たせることはできるし、意味を持たせられるってことに意味があるんだってことを、戦いが終わったあとのエピローグの光景を前にして、思い、感じ、胸に染み入る。

世界の真実は、想像を超えていた。このあまりにも生々しく、ダイナミックで匂いすら立ち込めているような、生きることも死ぬことも、あまりにも苦しげで悶えるようだったこの世界の真の姿が、まさかそんなところにあっただなんて、想像だにしなかった。
凄すぎるだろう。
まさか、まさか、よりにもよってこの世界観が、そういう事だったとは。思えば、トマトクンその人が登場時からその存在を以って証拠を提示し続けていたのかもしれない。その名前からして、考えてみれば証拠そのものなのだ。それでいて、彼こそがその厳然とした真実ではなく、自らが感じた末に選びとった真実を身に纏っていたからこそ、気付かなかったのかもしれない。
誰よりも、彼はこの世界で人々と共に生き、愛していたからこそ、読んでいるこっちも、それを疑いもしなかったのだ。
だからこそ、圧倒される。圧巻じゃないか。改めて見れば、同類項の作品は今や多々あふれている。だが、これほどのスケールを打ちたて、その視点を外から挿入されたものではなく、内から生まれたものに寄って描き出した作品が存在しただろうか。単なるファンタジーじゃなかったのだ。なんてこった。十年前だぜ、このシリーズはじまったの。最初、ウィザードリィ互換だって言われてたんだぜ。
まさか、そっちじゃなくてこっちだったとは。
そして、当初からの謎とされていたマリアの性別についても、ついに明らかにされたわけだけれど。これについては想像していた通りだったのだけれど、マリアがそうであった理由がまた度肝を抜かれる内容で、まさかそんな意味があったのか、と。いやでも、この段階でマリアが自発的に頑張ってなかったら、あの場面でマリアがあそこに在る要素なんて殆どなかったんじゃ……。キンググッダーとか、ジュジとか、その辺手配りちゃんとしてたんだろうか。

ともあれね、エピローグで全部報われた気がする。無茶苦茶たくさん死んだけれど、死んじゃったけれど、死んで欲しくない人もあまりにも沢山死んじゃったけれど、悲しかったのだけれど、それでもエピローグで、生き残った人たちの生きて頑張ってる姿を見たらね、これまで死んだ人の死は、何一つ無駄じゃなかったんだって……思うことが出来た。コロネとかね、ルカとかね、消息不明だった子たちのことも、ちゃんと書いてくれて、泣きそうなほど嬉しかった。ユリカやサフィニアが、ベティたちが幸せになれたのも、本当に嬉しかった。
生きてるよ、貴方達は紛い物なんかじゃない、確かに生きて、輝いてるよ。どこにも嘘なんてない、それをこれ以上無く、この物語をもって、戦いをもって、証明してみせたのだ。ディオロットが何を見つけ、何に希望をいだいたか、今実感している。これを守りたかったのか、これと生きたかったのか。
弱くて儚いマリアローズ、しかし勇気を持って戦い生きたマリアローズ。
Brave Heart of RED ROSE
薔薇のマリアよ。
あなたが得た生と愛の物語に、ただただ感謝を。素晴らしい物語に、ありがとうと、言い置きたい。
大好きなシリーズでした。


シリーズ感想