ウォーロック・ウィッチクラフト (講談社ラノベ文庫 か 5-1-1)

【ウォーロック・ウィッチクラフト】 神野オキナ/パセリ 講談社ラノベ文庫

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「お願いします! 少佐、力を貸してください!」
高校一年生の夏坂ハヤトが、入学したばかりの学校の屋上で出会ったのは、フリルやリボンで彩られた不思議な格好をして銃を持った少女。彼女は、校舎を破壊して暴れ回る謎の怪物と戦っていた。呆然と見守るハヤトは、力を貸してほしいと声をかけられてしまう。とまどいながらも、延ばされた手を取ると、ふれあったところから光があふれ……その光が凝縮して現れたのは一発の銃弾だった。それを手にし、少女は怪物へと照準を合わせて――。ミリタリーバトルアクション!
神野さんの新シリーズは、魔法少女でミリタリー。あいや、ミリタリーで魔法少女か?
面白いことに、これフォーマットそのものは徹底して魔法少女モノなんですよね。マスコットキャラが居て、魔王の欠片が人の悪い心を育て、それが怪物となって街を壊し、それを魔法少女になった女の子たちがやっつけて、変わってしまった人の心を戻しながら、欠片を回収していく。ちゃんと敵側の魔法少女もいて、暗躍していたり、と世界観を担い下敷きとなっている設定のフォーマットは、丸々ベタな魔法少女のものなのである。
ところが、そのフォーマットに組み込んでいく素材が、ガチのミリタリーなものだったり、生々しい現実に則したものだったり、ハードなSF要素だったりするものだから、これがまたど偉い歯応えのあるSFミリタリーアクションになっているのである。同じ作者の作品としては【あそびにいくヨ!】よりもガチでハード寄りかもしれない。
何しろ、ライトノベル作家では数少ないガチンコでミリタリー系アクションが書ける作家さんである。【疾走れ、撃て!】なんぞ、そちら方面の傑作と言っていいくらい。それだけ実績積んでいる人なので、軍事方面や政治謀略寄りのお話の突き詰め方については、そりゃあもう容赦なしである。何しろ、魔法少女となる少女たち三人組からして、何も知らない無垢な子どもたちが魔法と銃を握らされて無理やり戦わされる、というものではなく、未来で歴戦の兵士として何年も硝煙の中を潜り抜けてきた強者ドモである。今は中学生女子に戻ってはいるものの、十代の多感な時期を銃火器ぶんまわし、部下を叱咤激励して戦場を駆け回り、二十代の一端の女として生きた経験まで有する、大人としての記憶も持ち合わせた「少女」たちであるので、とてもゆるふわでほえほえー、と呑気にバトンを振り回すような夢見がちな魔法少女のチームを形成できるはずもなく……、これも魔法少女分隊か、魔法少女小隊―ウォーロック・ウィッチクラフト・プラトーン、てな感じである。
そして、未来から過去への時間遡行。それも、生身で時間を渡るのではなく、意識だけ?(記憶だけじゃなく肉体の経験値も継承してる?)過去に渡り、前世ならぬ未来の記憶を取り戻す、というSF設定。その目的は、未来に起こる戦争を阻止すること。この意識だけ過去に戻る、という方式は「やり直し」要素が強いストーリー形式になるんだけれど、すでに最初の段階で歴史は改変され、登場人物たちの知る未来ではなくなっているので、いわゆる「トライアル・アンド・エラー」形式ではないんですよね。まあ別の大きな枠組でずっと「トライアル・アンド・エラー」は行われていたみたいですけれど。ともかく、生身で未来から遡行してくる形式みたいな、現在の自分とばったり、という面倒な要素もなく、周りの人間とのすれ違いもないので、その意味では目的に対してスッキリと向き合える、というスタイルでもあるんだよなあ。でも、家族や身内が十年後だと軒並み戦火に巻き込まれて死んでいるので、やっぱり設定はハードである。何しろ、ハヤトや空奈たちには家族や友人たちをもう二度と死なせない、という強烈な目的意識が生じてますしね。必死です。
魔法少女となる三人の少女たちは、みんな本来の中学生としての彼女たちはそれぞれに思春期や性格からくる難しい側面を抱えた子供たちではあったんですけれど……見事に幼い部分が削ぎ落とされて、人格的に大人びている。それでいて、中学生に戻ったことで大人となり厳しい戦場で喪ってしまった子供らしい側面も取り戻してきているので、いい意味で安定してるんだよなあ。これは、主人公となるハヤトもおんなじで、少女たちよりも記憶がちゃんと戻っていないせいか、より高校生らしい若々しさと、二十代後半で佐官まで昇進した軍人特有の老練さを併せ持った、面白い主人公になっている。
いずれにしても、魔法少女という要素とミリタリー要素、そしてSF要素が非常に高い位置でバランス良く融合したクオリティの高い作品ですよ、これは。すごく面白かった。出来れば、長く続くシリーズになって欲しいですね。

神野オキナ作品感想