ユア・マイ・ヒーロー1 八雲たつ出雲 (講談社ラノベ文庫)

【ユア・マイ・ヒーロー 1.八雲たつ出雲】 幹/ぶーた 講談社ラノベ文庫

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神務省に所属する退魔師の八雲は新任の美少女・聖と共に、星宮市で起こっている事件について隠密捜査を行うことになった。星宮市は霊能特区と呼ばれる地であり、そこにある星宮学園は霊能者養成機関でもある。二人はこの学園に編入し事件の裏にいる者を探ることになったのだが……。学園を統治している生徒会長の宝生と副会長の土門、彼らに目をつけられた八雲と聖の二人は、動きを封じられつつ任務の遂行を目指す。一見、明るく穏やかな学園だが、その裏に隠された真実とは!? “神”を求める人々の闇が、街を覆い尽くしていく!
突然神様になってしまった高校生と、その巫女さんのトラブル三昧の日常を描いた【神様のお仕事】でデビューした幹と書いて(もとき)と読むさんの新シリーズ。第二作も神様にまつわるお話で、もしかして、と思ったら本作も【神様のお仕事】と同じ世界のお話みたいです。
というかね、よく読むと今回のお話って、【神様のお仕事】のヒロインの千鳥さんが仕出かした事の後始末というかトバッチリというか余波というか、ともかく大いに千鳥さんが原因の一端だったりするわけです。
前作では、ある地方都市を舞台にしていて、そこから視点は大きく他所には動かなかったので、この世界の神様の在リようとか、価値観などはその地方都市に御座します神様たちや、巫女さんたちを通じてしかわからなかったんで、あっちの主人公がある日突然神様になってしまった件も、その後のあれこれも、まあそういう事もあるんだろう、と特に深刻に捉えずに眺めてたんですが……実は生きた人間が神様になってしまうって、超大事の大問題だったんじゃないか!
どうりで、当初地元の他の神様たちが、主人公ののほほんとした姿勢に対して、異様にピリピリしてたわけだよ。ほんとに前代未聞だったんだ。千鳥が一体何をやらかしてしまったのかが、今回同じく新しい神様を創造することが国を揺るがす大事件に発展してしまっているのを見て、いまさらながら唖然と振り返ってしまう。しかも、今回の事件からして、千鳥が色々とやらかして食い散らかしていったのが遠因だったりするので、さらにあれやこれや、と影響が。もう何というか、読んでいるあいだじゅう、うちの千鳥が申し訳ありません……と恐縮してしまうような気分で、いやはや……。
今回のヒロインの聖からして、千鳥にえらいトラウマ負わされたらしくて、もう性格も才能も非の打ち所のない素晴らしい清純な天使のような娘だというのに、千鳥のお陰でなんかもうねえ……ごめんなあ、ほんとごめんねえ。
もう、あの若干病んでる巫女さんは……。でも、アマテラスさまにも触らぬ神に祟りなし、扱いされているあたり、どんだけだったんだ、あの娘。しかも、最高神にすら触れるな危険、扱いされてる巫女さんが全身全霊をかけて何をやらかしたかというと、婚活である。婚活である。
……本作の八雲も、聖も、こうして見るとまじめにお勤めに励んでいて、悩み多き青春を送っていて、自らの前に立ちふさがる壁にひたむきに挑んでいて、いやはや健全この上ないね!
才能がないのを言い訳にせず、努力を重ねて現実と向き合い、折り合わせ、しかし引かざるところは絶対に惹かずにヒーロー足らんと血と汗を流してあがき続ける。独善に陥らず、現実に折れず、理想にかまけず、しかし夢を諦めず、とにかく地に足がついたというか、浮ついたところのない身の程を弁え、しかし身の丈に収まるのを良しとしない、常に這いずって前へと進もうとする主人公のヒーロー像は、とてもきれいな泥まみれで、好きですなあ。確かに、猫ちゃんの言うとおり、天剣という唯一無二の特別な要素すら、彼にとっては邪魔かもしれない。
千鳥という特異点に目を眩まされ、自信喪失してしまっている聖にとって、なるほどこの八雲ほど、今一緒にいて為になる相棒はいないんじゃないだろうか。ほんとに素直で頭のいい子なので、どうして彼と組まされたのか、という上の意図も読んだ上で、成長していけそうである。いやしかし、聖ってほんとにいい子だよなあ。近年稀に見る素直純真真面目系ヒロインだ。

今回、舞台となる街は非常事態で普段の様子を隠してしまっていたようなので、事件が解決して普段の姿を取り戻した次回からこそが、本番になりそうな予感。このシリーズも、前作のようにじっくりやって欲しいなあ。

幹作品感想