百錬の覇王と聖約の戦乙女4 (HJ文庫)

【百錬の覇王と聖約の戦乙女 4】 鷹山誠一/ゆきさん HJ文庫

Amazon

“狼”の将来のため様々な改革に取り組みながら、いよいよ美月のいる現代へ帰るための方法を模索し始める勇斗。慰安に訪れた温泉地でヨルゲンが仕掛けた「引き止め美人局作戦」に内心焦りつつも、その決意は固い。だがそんな中、遊牧氏族“豹”が妹国の“角”に侵攻。“豹”を率いるのは、一年前に“狼”を去った義兄・ロプトだった!!勇人は迷いながらも兵を挙げるが!?
あかん、兄やんおもいっきり小物臭が漂ってるやん! 思いっきり現実逃避している上に、自分が認められない現実は全部都合の良い解釈で記憶改変までしちゃってるし。まああの精神面でのブレブレさは、外部から植え付けられた呪詛のせい、と同情も出来るんだけれど、醜態晒しまくってるからなあ。これなら、狼の氏族に居た頃の見栄はってた頃の方が普通に頼もしかったぞ。
これ以上発展性がない上に客観的な視点も欠いちゃってるものだから、これはどうやったって今の油断も慢心もない勇斗には太刀打ち出来ようはずがない。少なくとも、彼は自分が得ている知識を応用はできてるもんねえ。
でも、軍事面での過去からの知識の蓄積を実践したり、適切に運用するのは、言うほど簡単じゃないんだけれどね。
この作品の面白いなあ、と思うのは作戦なんかの元になった史実のネタを惜しげも無くあげて、これを参考にした、と記しているところだったりします。こうした史実の具体例をわざわざ挙げてくれるのは、実際非常にわかりやすくてイメージしやすいと思うんですよね。同時に、そんな史実の模倣が上手く当てはまるのか、と安易さを感じてしまう部分も多少ならずともあるはずです。史実の具体例を作戦に用いる、というのは結構危なっかしい感じもやっぱり否めないんですよね。史実において、こうした作戦が実行された、こういう技術が使われた、というのはそれぞれ歴史の蓄積や経緯があって、そこに結実したものであり、成果と結果だけを良いところ取りして、それで上手くいくか、というとそういうもんでもないですし。でもまあ、本作はその辺ちゃんと丸々のコピーではなく、状況にあわせた適切な改変と応用を心がけている風にはしているので、そんなに引っかかる部分はないと思うのですが。
でも、こうしてネタとして扱われる史実の人物や、作戦なんか、誰でも知ってるような有名なのじゃなくて、なかなか渋いところから持ってくるあたり、美味しいなあと。ヤン・ジシュカなんか、もっと知名度あって然るべき世界的名将ですもんね。こういうのをきっかけにして、名前や功績が知れてくれたらと思うので、ネタとして使ってくれるのは嬉しくすらあったりします。

さて、わりと溜め無く、というかもっと前哨戦として心理戦とか神経戦めいた戦いを強いてきて、トドメに軍事侵攻、というシナリオを思い描いていたので、殆ど前置きなく、力押しで攻めてきたロプト義兄にはちと呆れもしたのですが、ともあれ一気に「豹」との大規模戦闘に突入。お互いの知識を尽くした戦いになるわけですが……ロプト義兄、確かにアレなことになってますけれど、あれほど精強な騎馬軍団を育成した、というだけで褒められていいとは思いますよ。元々、豹の氏族に騎馬軍団を育む土壌があったにせよ。幾ら鐙を使ったって、騎兵というのは簡単に育成できない特殊兵種ですからね。実際、狼ではまだ騎兵団を形成しきれてないわけですし。騎兵の集団運用ってのはホント難しくて、何しろその機動力の分、一度動き出してしまうと指揮官の指示が行き届きにくい兵科でありますから。知識を得たからといってどうこう出来るもんでもないはず。それを、あれだけ上手いこと使っているというだけで、幾ら小物くさくても十分大した将帥ではあるはずなのです。……って、なんで、こんな一生懸命小物兄貴をフォローしてるんだろう(苦笑

ちなみに、今回ヒロイン衆はほぼ賑やかしだったような気がします。ぶっちゃけ、ユルゲンの若頭とかスカーウェルが抑えるところ抑えてて鼎を担ってて目立ってた気がする。ちょっとヒロイン衆は女っ気出しすぎだわなあ。
あと、フェリシアが兄貴から連絡あったのに黙ってたってのは、かなりアウト臭い。事前に豹の王にロプトが就いているのを知っていたか、知らなかったかではとり得る手段がまるで違っていたでしょうし。もっと王権よりも軍規法規が厳しい環境だったら、お咎め無しとはいかなかったんじゃないかなあ、これ。

ともあれ、やっぱり兄貴が小物から脱却できてなかったので、敵の本命はあの蛮族王となるんでしょう。器としても規格外だし、大敵に相応しいのはやっぱり雷の頭領だよなあ。でも、協調性があるようには見えないし、兄貴も今じゃああれだから、ラストのあの展開はむしろ対消滅するんじゃないかと逆に心配になってくるんだがw

2巻 3巻感想