祓魔科教官の補習授業 落第少女に咒術指南 (一迅社文庫)

【祓魔科教官(デモンビーター)の補習授業 落第少女に咒術指南】 すえばしけん/NOCO 一迅社文庫

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異世界との亀裂から現れる異形―魔禍魂を狩る“祓魔技能士”を養成する天原学園。学園に転入してきたフリーの祓魔技能士・日垣悠志朗(18)は、咒術も異能も使えない“常人”なのだが、落第寸前少女3人の補習授業を担当することに!祓魔科の優しい新任教官×クセもの少女たちの学園祓魔バトル!

うははは、これは黒い。ダークサイドまっしぐらじゃないか!
【スクランブル・ウィザード】を好きだった人には、待ちに待ったダーク・すえばしーなんじゃないだろうか。あれも、先生と教え子の教育モノにも関わらず、社会の冷酷非情な暗黒面に踏み込みまくった容赦無い一面が色濃くある作品だったからなあ。
本作も、真っ当な教育・育成モノと見せかけて、人道とか人間性というものに後ろ足で砂を引っ掛けるような、人間として破綻し、壊れてしまった人たちが、物語の中軸でうごめく作品となっている。
何しろ、主人公からしてアレだからなあ。
一見して明らかに壊れてる人間なんて、別に何も怖くないんですよ。怖いのは、普通に接していたら全く破綻している事に気づけない壊れ方をしている人間の方。これがヤバい、本当にヤバい。同じ世界を見て、同じ価値観を有して、同じ気持を共有していると思っていた相手が、まるで感性の異なる怪物だったと知った時の、毛穴が開くようなゾッとする薄ら寒さ。
いやあ、もう読んでて青ざめましたよ。え? ナニイッテンのこの人? とぽかーんとなって、血の引いていく感覚。やばいやばい。
しかも、この壊れ方って、自然にこうなってしまったわけじゃなくて、とてつもなく丁寧に慎重に、外枠が壊れないように繊細に、注意深く、プツリ、プツリ、と致命的なものをちぎって、折って、破壊していく、という偏執的なくらいの情熱をもって、人格を壊していった結果なんですよね。
いや、或いは一度バラバラになってしまったモノを、敢えて元通りにはせずに、大事な部品をわざと抜いて組み立てなおした、というべきなのか。
それが、悪意によってではなく、むしろ愛情によって成されているというのが、余計に肌を泡立たさせてくれる。ヤンデレどころじゃないですよ、いい具合にイカレ狂ってる。
しかし、ここまでイカレ狂っていてこその、人類サイドの切り札なんですよね。こりゃ、確かに普通の“祓魔技能士”とは根本的に存在の在り方が違うわ。どれほど才能があろうと、鍛えに鍛えようと、人類の範疇を越えようと、それでもはやりそれは人間なんですよね。一方で、こいつらは見事に選ばれ反転してしまっている。文字通り人間をやめてしまっている。まるで、人類の決戦存在。絢爛舞踏みたいなもんですわー。
果たして、そんな本当の意味で人間ではなくなってしまっているモノを、人の領域まで引き戻せるものなのか。
スクランブル・ウィザードでは、主人公の十郎はヤサグレてはいたものの、人間としてはまともな部類でしたし、その教え子となったあの子も、小学生ながら「やり手」と言っていい子だったので、あの凄まじい状況を乗り越えることが叶いましたけれど……こっちは、ハードル高すぎですよ。スクランブル・ウィザードで言うなら、能勢っちをまともな人間に戻せ、と言うのと似たレベルに見える。さすがに、あそこまでは致命的に破綻してはいないけれど、何しろこっちには余計な真似をしようとすると邪魔してくる(物理的に死ぬ)人がいるもんなあ。どうすんだ、これ?
とりあえず、落ちこぼれ三人組のうち、メインとなる子以外の二人については、まだ殆ど掘り下げもしておらず、彼女たちにまつわる事情についても触れていないし、三人組がまだ打ち解けているとはいえない段階でもあるので、その辺を進めていかないと話にならないですね。これ、花耶ちゃん一人では絶対にどうにも出来ないですよ。
あと、鈴切先輩と木竜先輩も上手いこと絡んできそう。特に、木竜先輩は良いキャラになりそうなんですよね。出た当初は典型的な、適当にやられるチンピラ役という割り振りだったのに、男キャラでは特に重要かつ美味しいところを担いそう。
ともかく、ラストシーンにはもう完全にヤラレたので、次回以降すごく楽しみです、これは真骨頂が見られそうで、実に楽しみなシリーズの開幕です。

すえばしけん作品感想