魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉9 (MF文庫J)

【魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 9】 川口士/片桐雛太 MF文庫J

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ジスタート王国の次期国王の座をめぐる騒乱を鎮圧するために、自軍を率いて出立したエレン。出向いた先で合流した“雷渦の閃姫”エリザヴェータの側に、行方不明だったティグルを発見する。しかしティグルは記憶を失っており、エリザヴェータの従者“ウルス”と名乗った。エレンのことも思い出せないという。その言葉にショックを隠せないエレンだが、おとなしく引き下がれるわけはない。だが、エリザヴェータもはじめての部下である“ウルス”を手放すつもりはなかった。戦姫同士の激突は避けられないのか。ジスタート国内の陰謀や思惑も加わり、ティグルの運命は嵐よりも大きな動乱に飲み込まれようとしていた。大人気美少女戦記ファンタジー、第9弾!

今回から絵師交代、ということでどうなったか楽しみだったんだけれど、いいんじゃないデスか? ちゃんと誰か分かる範囲で上手いこと自分なりにアレンジしてらっしゃるし。個人的には、ミラのおぱーいがどうなってるかが早く見たい。彼女、丘陵が非常に貧しいという特徴があるのに、前はどう見ても巨乳にしか見えんかったもんなあ。
さて、エリザヴェータ陣営にティグルを発見したことで、一触即発となるエレンとエリザヴェータ。こりゃもう、軍事衝突まっしぐらでしょう、という緊迫具合だったというのに、土壇場でエレンがグッと踏みとどまったのには驚かされた。凄い、ちゃんと戦姫としての立場を見失ってない。
ことがティグルの生存に関することだけに、ここは激発しても仕方ないかと思っていただけに、エレンも、それにエリザヴェータも必要以上に感情に引きずられずに、冷静に引いてみせたのには正直参った。まだまだこの娘さんたちを見縊っていたかも。エレンは特に、先日サーシャを看取ることで大きく戦姫としての自覚を新たにしていたのかもしれない。この件に関しては、エレンも去ることながらエリザヴェータの方も感情的になっていたので、こりゃあかんと思ったんだけれど、エレンだけではなくエリザヴェータも取り乱したまま暴走しなかったのはホント偉かった。この娘も、ぶきっちょだけれど過去から現在進行形でずっと苦労してきたせいか、戦姫の中でも自分を律する事については一際目立つところがあるんですよね。言い方変えると苦労性というかなんというか。エレン並に、とは言わないまでももうちょっといい加減にやれたらいいんだろうけれど、性格的に無理か。環境が許してくれなかったというのもあるし。
しかし、ここでティグルの正体が半ば明らかになったことで、むしろエリザヴェータが開き直ったかのようにティグルを引き止めんと距離感を縮め出してるんですよね。自分のものではない、とはっきり悟ったからこそ、子供が拾ったペットを元の飼い主に返すのを拒むように、必死にしがみつく様は、エリザヴェータという少女がこれまで必死にこらえてきたものが一気に決壊していっているようで、見事にヒロイン株をあげてるんですよね。
これは、記憶が戻らなくてもいずれエリザヴェータの元から去るつもりだったティグルにしても、情が湧くというものでしょう。拾ってもらった恩を感じ、またちょっと突っ張って危なっかしい彼女に心配げに接していたティグルですけれど、むしろエレンたちと顔を合わせて以降の方が、エリザヴェータに親しみを持って接していたような気がします。お忍びで二人で街を散策とか、どんなお姫様デートだ。でも若干これ、妹扱いしているような気配が……。
ちなみに、記憶をなくそうが相変わらずの女殺しのティグルさんですが、実のところメロメロにしているのって女だけじゃなくて、同じ頻度で男の方もその魅力で撃墜しまくってるんですよね。むしろ、シリーズ通して見ると、女性よりも男性キャラの方が陥落率高いんじゃないだろうか。今回も、エリザヴェータの側近のナウムさんをあっさり味方につけちゃってますし、文官筆頭のラザール老もこれは時間の問題ではないかとw

以前からひっかかっていた、エリザヴェータが例の魔物の一体と何やら契約をしてしまっている疑惑だったのですが……これは返品! クーリングオフ可能な事案です! どうも正体を明かさず、しかも一方的に押し付けたもので、エリザヴェータも不気味に思ってかなるべく使わないようにしていたようですから、これはクーリングオフ対象でしょう。あれです、勝手に商品送りつけてあとで代金請求する詐欺行為みたいなもんで。
良かった。エリザヴェータってある意味オルガ並に「良い子」だったので、そんな娘があの連中と繋がっているというのもヤな感じでしたし、騙されているようでしたら尚更ですもんね。
とはいえ、余計なハンデを背負ってしまったのは間違いないようですけれど、やっぱ根性座ってていいわぁ、この子。

一方で、薄っすらと大丈夫か?という怪しい雰囲気が出てきたのがヴァレンティナ。イルダー公が軍を起こしたのまで彼女の策かと思ったら、彼の行動は予想外ってどうも片手落ち。もっと全部掌の上みたいにコントロールしているのかと思ったら、ちょっと見通し甘いところがあるんじゃないかと逆に心配になってきた。匿ってるブリューヌのガヌロンたちについても、イマイチちゃんと把握していないっぽいし。
むしろ、ジスタート王の方がまだ怖いよなあ。何考えてるかさっぱりわからないし。

魔物たちの動向が激しさを増しはじめ、そこにさらにムオジネル王国の蠢動まで確認され、まとまったと思われたブリューヌでも、ガヌロンの手引で乱の予兆が。もしかして、大荒れはむしろここからなのかしら。

シリーズ感想