彼女がフラグをおられたら 世界の真理など、私一人で充分だ (講談社ラノベ文庫)

【彼女がフラグをおられたら 世界の真理など、私一人で充分だ】 竹井10日/CUTEG 講談社ラノベ文庫

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2月14日、聖バレンタインデー。茜や鳴たちクエスト寮女子メンは颯太に渡すチョコに思いをはせ、乙女の決戦の到来を待ちわびていた―しかし当日、誰もいないクエスト寮にただ一人、颯太の姿が!?女子全員の部屋のドアノブに、直接手渡すことの出来なかったチョコを下げていく颯太…伝えられなかった大きく重いメッセージと、限りない感謝の思いを込めて―避け難い運命の奔流が颯太を飲み込み、ついに動き出す!ようやく明かされる“賢者の石”の正体、そして“世界の真理”とは?屹立する巨大な“死亡フラグ”を打ち破り、途方もなく強大な敵に孤独な戦いを挑む颯太は生き残り、彼女たちの元に戻ることはできるのか!?空前絶後の急展開、第9巻登場!!
たっ、たっ、魂消た! ブッタマゲたーー!!
マジか、なにこれ、すげえ!! 急展開どころか、超・展・開!! である。がしかし、いきなり前後の脈絡なく唐突に、と感じさせずに、むしろ「なんてこったっ、そうだったのか!!」と腑に落ちる感すらあったのは、相応の布石がちゃんと敷かれていたからなのだろう。大名侍鳴が初めて正体を明かした時に颯太に見せた平行世界。あれなんぞ、その布石のわかりやすい最たるものですもんね。平行世界があるのもさることながら、どうして鳴がそれを颯太に見せることが可能だったのか。世界の真実と七徳院の「世界監視組織」を標榜する意味が、これ以上無く明快に示されたわけですから。
それにしても、今回ぶっちぎりでヒロインしていたのはこの鳴さんでしたね。そもそも、彼女が颯太に攻略されたのは、颯太の死亡フラグに犯されながら生きる姿勢に心奪われたからで、その意味では今回の颯太のフラグ能力に起因するエピソードでは、一番心身ともに颯太と同じステージに立ち、彼の生き様に共感して彼の苦しみを正確に理解している鳴は、この場面においては一番メインヒロインとしてふさわしかったのではないでしょうか。
泣くのを必死に我慢しながら、同じくじっと感情を堪えている颯太にスープを食べさせている鳴のシーンは、竹井さんがここぞという時に持ってくる、普段の騒がしさが嘘のような、静謐な雰囲気の流れるシーンでねえ、もうヤバかった。
それ以上にヤバかったのは、やはり魂ある人形である瑠璃の、その魂を捧げる儀式と、プレミアム・アンブリエル号の事故の真実でしょう。特に、あの豪華客船の事故の真実がいかなるものだったのか、なぜ颯太だけが生き残り、彼に巨大な死亡フラグが植え付けられ、世界から虐げられ絶望にくれることになったのか。ここで明らかになった真実が、もうたまらんかった。これはズルいよ、泣いちゃうよ。極小数の勇気ある人達の決断、ではなくてそこに居た人たちプレミアム・アンブリエル号の乗員乗客全員の気高き意思、人という存在の選択に、完全に泣かされてしまった。そして、記憶を消されようとなお、約束を守った少女たち。彼女たちのトチ狂ったような颯太への構い方も、あの必死に紡いだ約束を果たしていたのだと思うと……それに、颯太へのエールも、単にその場のノリだけじゃなかったんだなあ。

いやしかし、それにしてもこの「世界の真実」には驚かされた。仰天、とすら言ってもいいかもしれない。それくらい魂消る展開だったからこそ、そちらの超展開に気を取られてしばらく違和感に気が付かなかった。竜騎士原月麦ばあちゃんの真の姿にも度肝を抜かれて、頭がそっちに行っちゃってたもんなあ。婆ちゃん、ハッスルすしぎ、その格好!
うん、ともかくおかしいんですよ。ぶっちゃけ、この「世界の真実」だけでは説明がつかない部分がまだ幾つも散在しているのである。すべてが仮想世界の出来事だから、で納得しようとしたらおかしいことになる。そもそも、天使客船からして、内部からのバグの発生ではなく、外部からの侵攻であるからして、すべてがグリモワールが生み出した量子仮想世界の出来事だから、では片付けられないのである。いわば、あの無数の並行世界によって彩られた仮想世界の出来事は、世界のすべてではなく、むしろ単なる舞台の一つにすぎなかったわけだ。それどころか、扉の一つに過ぎなかったとも言える。
今回の最大の仕掛けは、この二重扉だったのかもしれない。
真理に辿り着いたと思って開いた扉は、その入口にすぎなかったのだから。最奥に至る扉は、まだ見えてすらいない。
そもそも、あの「魔法少女福祉機構」なんか、仮想世界内で生み出された存在じゃなくて、むしろ天使と同じく外側から侵入していた存在っぽいし。
なぜ、颯太の実の姉の存在がこの期に及んでふせられているのか。なぜ、菜波にだけ、当初颯太のフラグ能力が通じなかったのか。どころか、菜波についてはフラグが立ったのは一度だけ、あの告白シーンだけっぽいし。颯太の神竜としての力を考えるなら、菜波のそれの不自然さは際立っている。
というか、そもそもあのプレミアム・アンブリエル号で起こった出来事からして、どういう位置づけなのか錯綜してるんですよね。カグラ号の事故があったから、颯太は仮想世界に介入することになった、とNo,0は言っていたけれど、それが本当の発端でありスタートだったのかというと……微妙に怪しい。
そう、まだ謎は有り余るほど残されている。そして、あとがきでは、ここまでの第一部は第二部の為に用意されていたようなものだ、という担当編集の言葉が書き記されているように、ここがまさに「入り口」「スタート地点」、ようやくこの物語の本当の姿が明らかになる準備が整った、と言っちゃっていいのかもしれない。
ちょいと、テンション上がっちゃって落ちてこないんですけど!!

この火照りを冷ましてなるものか、と怒涛のように第二部スタートは連撃仕様、間をあけずに二ヶ月連続刊行で来月登場である。参ったっ、このがをられ、ここまでまくりあげてくるとは想像してなかっただけに、ちょっとやべえですよっ、ですよっ!

シリーズ感想