俺、ツインテールになります。6 (ガガガ文庫)

【俺、ツインテールになります。6】 水沢夢/春日歩 ガガガ文庫

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憤激の処刑人と、アルティメギル首領の影!

テイルレッドの正体は、男だ――フェニックスギルディに告げられた事実に、驚愕するダークグラスパー。変身しパワーアップした不死鳥と、闇の処刑人。両者の戦いは、いつ終わるともなく続き……。
そんな凄絶な光景とは打って変わり、異世界から帰還した総二たちは、愛香の誕生パーティーに同人誌イベントにと、残りの夏休みを満喫していた。停戦期間が終わり、エレメリアンたちも再び侵攻を開始。修行の成果を発揮し、破壊神テイルブルーを倒そうと頑張るのだが……。
一方ダークグラスパーは、神妙な顔でとある場所へと向かっていた。そこは、"首領の間"。アルティメギル首領と謁見しようとする、彼女の真意は――!?
真価を発揮する最強の反逆者。そして現れる、四頂軍<死の二菱>。新たな脅威が、総二たちの世界に迫ろうとしていた!!

愛、それは哀! と歌い出したくなる、エレメリアンたちの業であり生き様に、思わず涙こぼれ落ちる。
プテラギルティ、そのあまりにも気高く優しい生き様に、わりとマジ泣きしてしまった件について。
本当にもう、このエレメリアンたちの非業には胸を突かれる。彼らには愛があり友情があり信義があり信念がある。その全てが本物で、熱く滾る魂の結露であり、その尊さには目が潰れそうな輝きがある。
しかし、それでありながら、彼らはその愛の根源である「属性力」を人から奪わなければならないと宿命づけられているのだ。そして、どれほど「属性力」を奪おうと、それは決して本当の意味で得られない。
「わかるか……貴様だけではない。エレメリアンとはそういう存在だ。人の本質にどれだけ迫ろうと、人にはなれぬ。人の営み、人の心……求めても望んでも、思いを馳せることしか出来ぬ」
「だが私は、そんな自分を憐れだとは思わぬ! それでも私たちは、生きてゆくのだ!!」
まさに求不得苦、どれほど望んでも得られぬ苦しみのさなかに生きている。
しかし、彼らはそれでも誇り高く、おのが属性のままに生きているのだ、戦っているのだ。その上でなお、その属性に溺れきらず、その属性に相応しき愛を、友情を、他者への慈しみを失わずに守りぬいている。
だからだろう、図らずも彼らに最も共感し、その気高さを知るのは彼らエレメリアンと拳を交え、その侵攻から世界を守る者、ツインテールを愛する「テイルレッド」なのだ。
だからこそ、エレメリアンたちは「テイルレッド」をこよなく愛し、たとえ力及ばず討ち滅ぼされることになっても、どこか満足気に果てていく。それどころか、一人の属性に迷いし少女の行く末を、愛した属性に殉じるようにして、テイルレッドに託して身を捧げるような真似をする輩まで存在する。
その報われぬと知りながらも愛に殉じ、また友情が故に涙を呑んで友を見送るその姿に、代わりに涙して何が悪い!!

今回はダークグラスパーのメイン回だったわけですけれど、かけがえのない相棒であるメガ・ネをひどい目に合わされ裏切られたとはいえ、アルティメギルって職場環境としてはかなりホワイトだっただけに、反逆という形を取らざるを得なかったのは、辛いなあ。いや、辛いのは残されたダークグラスパーの部下たちの方か。あれだけダークグラスパーにひどい目に合わされながら、いざとなるとちゃんとダークグラスパーのことを心配してくれた上に、彼女が反逆者となって逃亡する事になっても彼女に敵意を募らせるどころか、むしろ自分たちの上司であった彼女への対応に問題があったのではなかったかと後悔し、彼女の行く末を真剣に慮ってくれるのだから、これほどよい部下たちを持つことができる幸運を、こうして捨てなければならないなんて、痛恨の極みじゃないでしょうか。

ただ、彼らエレメリアンという存在の根源に根ざす宿業にして悲哀たる宿命に対して、希望として出現したのがあのフェニックスギルティだと考えれば、この先まだ大いなる大どんでん返しが待っている可能性もあるんですよね。なぜ、彼女がアルティメギル首領から、ツインテイルズよりも優先する討滅対象として重要視されているのかも、注視に値する。決して、彼女がツインテールに仇なすポニーテイルだからだけではない、と思いたい。思いたいじゃないか、あのエレメリアンたちにも、救いがあるのだと。

思わず敵方であるエレメリアンたちについてばかり語ってしまいましたが、勿論敵方だけが熱くても、燃えたぎるものじゃありません。切磋琢磨、敵であるアルティメギルも、主人公サイドであるツインテイルズも、双方がおのた愛と信念を輝かせ、ぶつかり合い、理解しあってしのぎを削るからこそ、こんなにも熱い熱い、涙を誘われるほど胸打たれる熱い展開を呼ぶのです。
プテラギルティとテイルブラックの、あのお互いをリスペクトし合った熱い熱い戦いは、シリーズの中でも屈指のバトルでした。涙ナシには見送れぬ、心と心のふれあいでした。
そして、プテラギルティの最期を彩った、ある一体のエレメリアンの何も語らぬ友情の証。

冷静になって振り返ると、端から端まで変態的なことしか言ってないしやっていないにも関わらず、やっぱりどうして、これほど真っ直ぐで清々しい熱量を迸らせる快作は、他にはありません。
今、一番爽快なバカ、灼熱にして敬するべき馬鹿たちの物語がこれなのです。

シリーズ感想