赫竜王の盟約騎士 (一迅社文庫)

【赫竜王(イグニス)の盟約騎士】 手島史詞/八坂ミナト 一迅社文庫

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どこからともなく現れた竜の群れに襲われたアルキミア王国は、竜を斬るほど強くなる竜剣を創り、竜剣の使い手を養成する学園を開き対抗した。それから数年、竜との戦争が続くアルキミアに、竜と王家に対する復讐を願う少年ジルと咲夜が現れ、指揮統率の才覚を持つ竜剣使いのティナと出会う。ティナの理想とジルの現実、二人の想いがぶつかりあうとき、新たな歴史が始まる!
竜を倒し、その核を剣に取り込むと剣が強化されて強くなっていく、というシステムは非常にゲーム的だなあ、と思うんですが、折角死ぬ思いをして、実際結構人死を出しながらも竜を倒して、これで剣を強化できるのがたった一人だけ、というのはかなり揉めそうな気がする。
作中では、今のところ何となくその戦闘におけるMVPが雰囲気で選び出されて、特に揉める事なく収まっているけれど、それは主人公サイドのジルにしても咲夜にしてもティナにしても、それぞれに竜剣以外に拠り所となる力があり、単に強くなって生き残り竜を狩るという目的以外の思惑を持って動いているからで、他のチームはかなりもめてそうな気がするなあ。竜との戦いはかなり死亡率も高いし、竜剣を強くすることがダイレクトに生存率に関わってきそうなものだし。
とまあ、世界観のシステムは非常にゲーム的なのだけれど、その枠組から半分足を踏み外し、また向いている方向も違っているのが、この主人公たちである。人間を襲う竜たちを倒して、世界を救え、という定められたエンドマークを端から無視しているわけですからね。むしろ、そのシナリオを構築した側の人間たちに復讐を誓い、或いは抗おうとしているのが主人公たちなわけですから。
しかし、その為にはやはり力が必要、竜を倒し、剣聖と呼ばれる竜狩りの極みに立つような力が必要であり、また人間を滅びに向かわせている竜たちに対する憎悪もまた他の人間たちと変わらず、という意味でシナリオを逸脱することを最終目的としながら、現状ではシナリオに沿って動いてはいるんですよね。
まあ、ラストで速攻で竜ではなく、人間がラスボスになっているのですけれど。
肝心の敵である竜にしても、相対した老竜の理性的な物言いといい、王家の怪しい動きと言い、この竜の襲来による世界の危機そのものについても、何らかの陰謀が張り巡らされている気配があるのですが、王家への復讐にひた走るにつれて、その真相にたどり着いていく、という流れになるのかな。

とりあえず、主人公のジルが内心かなり冷徹で他人に対して突き放したようなことを考えながら、実際の行動ではついつい甘い対応を繰り返して、あれこれ助けて回ってしまっているあたりは、復讐の徒になりきれていないのがありありと見えて、存外可愛らしさすら感じてしまうところです。自分では徹しているつもりでいるあたり、無理しているというわけじゃないんだけれど、本来の柄じゃないんだろうなあ、今のスタイル。実際、その点ツッコまれてたりもしますし。
一方でメインヒロインのティナにしても、ポンコツと出来る子の両サイドに足を引っ掛けて股裂き状態になっているような子で、なんちゅうか面白い。むしろ主人公的なのはジルよりも彼女の方なのかもしれない。その立場にしても、性格にしても、能力にしても、思想にしても。
事実上、彼女こそがみんなを牽引していく立ち位置になるので、下手をすると前作と同様、主人公のハーレムじゃなくて、ヒロインである彼女が中心のハレム形式になるんじゃないかという期待で、ちょいとワクワク♪
とりあえず、スタートということで情報の展開に比重がとられていた感もありますが、どんどん動き出して行く次回以降が楽しみなシリーズ開幕編でした、と。

手島史詞作品感想