絶対城先輩の妖怪学講座 四 (メディアワークス文庫)

【絶対城先輩の妖怪学講座 四】 峰守ひろかず/水口十 メディアワークス文庫

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『大日本護法息滅会』。東勢大学で最近問題となっている新興宗教団体である。織口准教授によると教祖は理工学部のOBとのこと。大学側からの相談に傍観を決め込む絶対城だったが、教祖が『憑きもの使い』との情報に、早速教団へ妖怪調査に向かう。
しかし、いつも絶対城に協力してくれる杵松が別行動を取ると言い出し何やら様子がおかしい。仕方なく礼音と二人で教団本部に到着すると、そこで待ち受けていたのは長身痩躯の青年教祖、罵王院光陰。
対峙した絶対城は教義の矛盾を突き、見事教団の正体を暴いたかに見えたが、その瞬間、礼音の身体に異変が起こり……。
もしかして、この絶対城先輩って……チョロい?
気むずかしく狷介でひねくれ者で、と性格も面倒くさそうに見える絶対城先輩だけれど、存外可愛らしくてマメなところもある、というのは前回のお話でよくわかったつもりだったんですけれど、今回の絶対城先輩ってそれどころじゃなかったような……。
ちょ、ちょっと礼音さん。あんた、目が節穴じゃないですか? 幾らなんでも女子力少なすぎやしませんか? 実は鈍感なのってあんたの方じゃないんですか?
これ、明らかに絶対城先輩、あんたのこと好き好きじゃないですか。傍から見てるとよく分かるのですが、絶対城先輩の礼音への扱いが劇的に変わってるんですよ。いや、変わっているというと違うのかもしれませんけれど、確かに前までも礼音のことは口ではぞんざいに言いながらも、結構大切に扱っていたのですが、それはどちらかというとまだ絶対城先輩の性格によるもののように見えました。なんだかんだときっちり者でマメで優しい先輩は、身内である礼音の身の安全やメンタル面には結構気を使ってたんですよね。礼音と来たら、自分からあっけらかんとトラブルに首を突っ込むくせに、わりと落ち込みやすいところもありますし。まあ、リカバリーも早いというか易いんですけれど。だからまあ、この危なっかしい後輩に対して、絶対城先輩は乱暴に使い倒すようにしながら、実際はかなり繊細に接していたように思います。
とまあ、ここまでは大切に扱いつつも、あくまで後輩の範囲だったと思うんですよ。礼音が絶対城先輩のことを意識するくらいには、先輩の方も礼音のことを意識はしてたと思いますけれどね。
でも、今回における先輩の礼音の扱いを見ていると、ちょっとそれどころじゃないような素振りが、あからさまに……。相変わらず礼音は、パカーっと口をあけて気がついてないというか気にもしてないようなのですが、先輩から礼音に対して、お前もっとちゃんと女らしく振る舞え、という光線がビシビシと放たれてるのです。まともに服も持っていない礼音に、ちゃんとしたドレスを贈ったりしてるのなんぞその最たるもので、他にも礼音からの恐る恐るのデート(仮)のお誘いにかなり前のめりにデート(本気)として了承してたり、偽装としての恋人設定に先輩のほうが実はノリノリだったり、となんか傍目の仏頂面とは裏腹に、中身の方浮かれてたり色呆けてたりしませんか、先輩!?
先輩の数少ない友人であり、礼音の他では唯一と言っていい相棒である杵松さんが、今回の一件では妙な動向を見せて先輩と礼音から距離を置いていたせいもあってか、普段よりも余計に先輩が寂しそうにしていたのも、礼音に余計に構っていた原因の一つではあるんでしょうけれど、それにしても先輩のアプローチはなかなか笑えましたよ、礼音が女子としては目も当てられないポンコツっぷりで、それらを受け止め損ねていたせいで。まあ、効果がなかったわけではなく、礼音の方もちゃんと理解してないながらも、何となく距離を縮めて行こうという素振りが見えたので、成果はあったんでしょうけれど。
まともな人間づきあいが出来なさそうな絶対城先輩と、食わせ物ながらもまともな人に見える杵松さん、この二人がどうして友人関係になったのか、その馴れ初めから今に至る信頼関係が築かれるまでのお話が語られて、その意味でもなかなか面白く興味深いエピソードでした。思ってた以上に杵松さんの影響力って大きかったのね。意外と親しくなった相手には依存するというわけではないけれど、結構のめり込む傾向が先輩にあるのはよくわかった。クラウス先生についても、前に対立した際は先輩のメンタルが面倒なことになったし。寂しがり屋かッ!
そのクラウス先生は今回も色々と引っ掻き回してくれた気がしますけれど、この人敵として立ちまわると本当に厄介というか面倒くさいというか鬱陶しいんだけれど、味方となるとやっぱり面倒ではあるんだけれど頼もしさが段違いだわな。絶対城先輩だけで十分頼もしいんだけれど、クラウス先生が助言をくれると安定感が違う。

肝心の怪異については、相変わらず前半の常識的かつ民俗学的見地からの怪異現象の解体から、後半のとんでも展開のギャップが楽しい。もう、普通に本物の妖怪だった、という方が安心できるようなぶっ飛んだ存在が出てくるもんなあ。普通に、黒幕の正体はそれまで登場した人物の中から予想していたのに、あれはちょっと予想の斜め上過ぎましたよw

杵松さん、以前からの実はこの人物語全体を通しての黒幕なんじゃ、という疑惑については概ね払拭できたと思うのですけれど、ちょっと違う方面で微妙に怪しい素振りが、ラストなんかでも垣間見えてきたような……。
まさかの三角関係フラグですか?

シリーズ感想