ネトゲ廃悪魔の願い叶えます。 (ファミ通文庫)

【ネトゲ廃悪魔の願い叶えます。】 初心音コマ/シロタカ ファミ通文庫

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元・天才魔法使い。悪魔たちのVRライフ支援はじめます。

ピノ・メルフォートは稀代の天才魔法使い……のはずだった。なんと名門メルフォート家の魔力は、悪魔と契約し手にいれたものだったのだ! 魔力の返済を求める悪魔の少女ファナミナ。名誉を取り戻すため返済を決意するピノたが、担保に魔法の才能を奪われた上、求められた代償は――この世界フィルエストラをゲームに仕立てアバターを使い遊んでいる悪魔の要求を叶えること!
村人Aや貴族になりきった悪魔の願いとは? VRライフ支援型ファンタジー!
MMORPGモノ、異世界転生モノ全盛期の昨今ですけれど、これは発想というか目の付け所が虚を突いていて、面白い!!
これって、つまるところゲーム世界側の人間の視点で、プレイヤーである悪魔たちに関わっていく話なんですよね。しかも、運営のお手伝いとしてプレイヤーたちのゲーム環境を改善するために。尤も、ファンタジー世界の住人であるピノくんは、ゲーム云々という話は具体的には良く理解していないものだから、大小様々な誤解や勘違いをそのままに状況改善作業に乗り出していくのだけれど、頭のいい子なので本質的な部分は鋭く的を射ているものだから、同じ悪魔サイドからはあまりアプローチできない、ゲーム世界の住人だからこその視点からの解決策を提示していったりして、単なるお悩み相談には留まらない面白さが飛び跳ねている作品でありました。
ってか、これは悪魔側にしてもピノくんたちメルフォート家の人間たちやフィルエストラの住人たちにしても、キャラ立ちすぎでしょう。めちゃくちゃ笑ったわ!!
ピノくん、天才設定で実際頭の回転も早いんだけれど、思わず「ちょっと待てー!!」と叫んでしまいそうな事をドヤ顔でやらかしてしまうので、彼の一族の契約者であるファルミナの苦労が偲ばれる。ツッコミ、大変ですね。全然言うこと聞いてくれないし、この一族。
まあこのファルミナからして、ピノくんへの過保護っぷりは……気持ち悪いくらいなんですが。つい昨日今日契約した間柄ではなく、ピノくんの祖父の代からずっと契約している悪魔であり、ピノくんのことは赤ん坊の頃から見守ってきて、オムツも替えてお風呂も一緒に入っていたような仲なので、実の姉弟か母親気分か、ともかく家族同然の関係なんですよね……ヤミ金業者のくせにw
まあその御蔭で、仕事と家族との関係の間でしんどい思いをすることになってしまうのですが。元々ビジネスライクの関係だから、お仕事全うできないと契約者としてピノくんたちと一緒に居られないし、しかし借金を取り立てるとピノくんたちを苦しめるハメになる。実はかなり際どい立場だったはずなんで、もしピノくんが積極的に自分が借金返すと宣言しなければ、ファルミナの苦しみは重たいものになっていたかもしれない。えらくコメディタッチな軽い調子で始まった借金返済話だけれど、ピノ自身、何だかんだと一族の借金を自分が背負ったのは、ファルミナのため、というのが大きな理由なので、優しい子なんですよ。調子に乗りやすい尊大な小僧ですが。
でも、ただ尊大で偉そうで調子乗っているだけの小僧なら、その拠り所である魔法を全く使えなくなった時に心へし折れそうなものなのですが、一時落ち込んだものの、ピノくんはめげることなく前向きにガンガンやったるぜーー、と突き進んでいったのは正直、感心しました。いや、グチグチ泣き言を言わず、言い訳せず、ファルミナを恨むような事もせず、矜持を失わなず偉そうに胸張ったままだったのは、カッコ良かったですよ。ちびっ子のくせにカッコ良かったですよ。
ゲームプレイヤーである悪魔たちの問題解決にしても、単に表層の相談事や悩み事を教科書的に解決するのではなく、それぞれの問題の深層にしっかり踏み込んで、対処療法ではなく根本的な解決に持っていくあたりは、相談解決モノとしても良くねりこんでいたと思うし、先述しましたがゲーム世界側の住人だからこその視点で悪魔個人個人の抱えている問題に切り込んでいくところなんぞは、非常に面白かったです。
キャラ同士のすっとぼけた掛け合いも楽しくて、何だかんだとベタベタなピノくんとフェルミナの関係にもニマニマさせてもらいましたし、これは面白かったなあ。予想外の良作でした。

初心音コマ作品感想