サービス&バトラー2 (講談社ラノベ文庫)

【サービス&バトラー 2】 望月唯一/成沢空 講談社ラノベ文庫

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俺が陽菜お嬢様の執事になってから一ヵ月半。執事としての生活にも慣れてきた俺は、陽菜と、同じく陽菜に仕える同僚である月城と一緒に、迫る体育祭の実行委員会に参加することになった。第二テニス部のメンバーたちともども、慣れない事務仕事に奮闘する俺。そして、俺は準備の一環として、月城を買い物デートに誘うが……!?
「くそ……俺がもっとイケメンに生まれてさえいれば……!」
「いや、水瀬君は性格のほうをなんとかした方がいいと思う」
「俺がイケメンだったら、この性格でも許されたはず」
「それはない」
テニス×執事×お嬢様な学園ラブコメ、メイドも加わって第二弾!
あのね、街で男女が一緒に歩いていて、その二人が手を繋いで歩いてたら、絶対デートです。100人に聞いたら100人がデートって答えますから。
ただの買い出しです、なわけがないでしょうがーーっ!!
いやいや、こんなにマジデートっぽいデートはあんまりお目にかかった事がありませんよ、というくらいに真っ当なデートでした……なのに、本当にただの体育祭の買い出しだというのは、納得できん!!
それにしても、1巻の頃から思ってたことだけれど、ことヒロイン力に関しては陽菜お嬢よりも圧倒的に月城芹葉の方が上回ってるんですよね、これ。彼女については一応、メイドという事になっているけれど、読んでいる限りではメイド属性は殆どありませんね、これ。それよりも、一流のテニスプレイヤーとしての位置づけの方が強いように思うのです。彼女の内面を描くときも、メイドというのは単なるアルバイトの一つとしての位置づけで、まず彼女の中心となっているのがテニスプレイヤーとしてのそれであり、彼女の頑ななくらいの頑張り屋としての芯となり、同時に苦しめる原因となっているのもプレイヤーとしての月城芹葉なわけです。
それは同時に、まず執事ではなくテニスプレイヤーである水瀬直哉と立ち位置が同じ、という事でもあるんですね。水瀬と芹葉は、テニスプレイヤーとしても一流のそれとして同じ高さからそれを見ていて、メイドと執事という職場においても同僚であり、同級生としても一緒のところにいて、今度は体育祭の実行委員としてもコンビを組む形になり……自然と彼女にとって水瀬は最大の理解者となっていっているのです。それこそ、彼の言動を通して、自分自身が意識していなかった心底をも浮かび上がらせてしまうほどの。

傍目にもしっかり者で真面目な頑張り屋、親しい人からは頑固者で意地っ張り、と対応こそ柔らかくても納得できなければ容易にウンと頷かないタイプであろう彼女、月城芹葉が何故か水瀬のあっけらかんとしたセクハラ混じりの押しの強さに対しては、困った顔をしながら何だかんだと押し切られて受け入れてしまうのか。
イジられることに無駄な抵抗をしながら、結局従順と言っていい結論に収束するのか。
少なくとも、メイドだからじゃないですよ。メイドは全然関係ないです。メイド、ほんとに関係なかったなあ。
こういうキッチリと壁を作る子ほど、認めた相手には素直になってしまう、内側に入ることを許してしまうのですが、その過程とも言うべき葛藤が、無駄な抵抗とか申し訳程度に嫌がってみたりとかいう態度に出ちゃってたんですかねえ。
その終着点として、プレイヤー、同僚、同級生、あらゆる立ち位置で同じ視点から共感し、感化され、結果としてあらゆる側面からの自分を曝け出された結果、彼女の周りに張り巡らされた壁は、テニスプレイヤーという一部分だけでなく、月城芹葉という女の子そのもの全部の壁を乗り越えられ、内側に受け入れちゃった結果がアレである。全部許しちゃう、身も心も許しちゃう、てなもんだわなあ。
この娘みたいなタイプは、こうなるともう完全に尽くすタイプです。なんであろうと、どんな要求だろうと、すべて許してくれそうです。これをして、芹葉のお母さんは自分の娘を愛人タイプ、と言ってたのかもしれませんけれど、ここまで威力を高めてしまうと、ちょっと割って入る余地がなさそうな……。【盟約のリヴァイアサン】の十條地織姫を彷彿とさせる無敵のヒロイン力すぎて、ちょっと今のお嬢様だとパンチ不足だぞ、これ。

お話自体は月城芹葉にスポットをあて、コミカルに学園生活の日常風景を彼女中心に描きつつ、予定されたテニスの試合に収束させるように、芹葉の内面をじっくりと掘り下げ、水瀬のアプローチによって解体し、行き詰まったそれを新しく再構成させる、というスタンスで……実際のところ派手さは皆無です。
が、これがすこぶる面白い。軽快なエピソードも、心の内側に手を突っ込んでいくパートにしても、思わず読み耽って没頭してしまうほど、引きこまれてしまいました。1巻でも感じたことなんですが、この作者さん、単純に「上手い」ですわ。必殺技を持たなくても、基本技だけで有無を言わさずねじ伏せられるかのような妙がある。
逸材ですよ、この望月さん。

1巻感想