世界の終わりの世界録<アンコール>1 再来の騎士 (MF文庫J)

【世界の終わりの世界録<アンコール> 1.再来の騎士】 細音啓/ふゆの春秋 MF文庫J

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伝説の英勇エルラインが遺した、世界の終焉と再来とを記した至宝「世界録」。その在り処を世界中の国や旅団が探し求める世界録大争奪時代―騎士志望の少年レンは、彼の英勇生き写しの容姿ながら剣才に恵まれず「偽英勇」とバカにされる日々を送っていた。そんな彼の前に現れた、封印より目覚めし伝説の竜姫キリシェ。レンをエルライン本人と勘違いし、外見だけだと失望したキリシェだったが、一方でレンの中に秘めた可能性を見出すことに。そして、かつて英勇と共に世界を救った大天使フィアや先代魔王エリーゼとの世界録をめぐる旅へと少年を誘う。「わたしと、行くか?」―これは、英雄たちが奏でる狂騒への序曲。今、偽英勇の少年と伝説が邂逅する!
フィア先輩が肉食系過ぎる!! まだ人間のふりをしていた時は清楚で優しくて包容力のあるまさに天使みたいな女性だったのに、体裁繕わなくなったら途端にガツガツしだしましたよ、この人!? しかも、後方支援回復系かと思ったらバリバリの……。なんかヒロインとしてではない方向性で色々持ってっちゃってる気がするよ?
最初からアンコールとは此れ如何に、というタイトルだけれど、実際RPGのシリーズ第二作で、パーティーメンバーが主人公以外全員前作のラスボスバトルの参加メンバー、みたいな感じなんですよね。主人公以外強くてニューゲーム、てなもんか。とはいえ、それぞれ理由あって他のメンバーも最盛期からは著しく力を落としてしまっているのですが、それでもかつての世界最強パーティーのメンバーなわけですから、凡百とは比べ物にならないわけで彼女たちに守ってもらえるので通常なら容易に突っ込めないような危険なフィールドや事件にも首を突っ込める。レベルだの経験値だのといったステータスが存在する世界観じゃないんですが、本来なら対峙する事も叶わないような格の違う敵と戦うという経験が、著しい成長を促すというのは珍しい話じゃありません。その意味では、レンの境遇って凄まじく恵まれてるんですよね。伝説の英勇のそっくりさんということで偽物扱いされ、実力を正当に評価してもらえる不遇を託って来た身の上を鑑みても、お釣りが来るくらいの環境なんだよなあ。とはいえ、彼自身が非常に努力家で、不当に扱われ続けてきたからこそ余計な慢心は抱かず浮つくこともなく、謙虚でひたむきな性格の好ましい人物なので、その腐らずに頑張り続けたことがちゃんと報われた事が素直にうれしくなるんですけどね。
それに……キルシェたちも、やばかったら自分たちが何とかするから、という心持ちでまだ一人前にもなっていないレンを危地に連れだしてしまうのですが、肝心なとき三人共居ないし!
結果として、半人前には分不相応の死地を、レンはたった一人で挑むことになってしまうのである。主人公以外最強パーティー、しかしイベント戦闘の時は離脱するので、ソロで頑張ってボスキャラ倒してください、てなもんである。おいおい。
まあレンも、他のメンバーに釣り合うだけの力を示したいという気持ちもあって、前向きに一対一の対ボス戦に挑んでいくのですが、完全に実力で圧倒される相手を攻略するのはまさに綱渡りの駆け引きで、そのあたりはなかなか面白かった。
ちょっと気になったのは、キルシェも含めてフィアもエリーゼも、先のパートナーであったエルラインに対しての思い入れをあんまり感じないところなんですよね。レンにエルラインの姿を重ねてみるような真似をしないようにしている、と思えばいいのかもしれませんけれど、殆どエルラインの事を思い出さずにレンに掛り切りというのは、若くして孤独に亡くなってしまったエルラインがちょっと可哀想になってしまった。
ぶっちゃけ、この巻は主だったキャラの顔見世興行と大まかな世界観の紹介であって、多くのキャラクターを投入してるのも相まって、本格的に動き出すのは次回以降になるんじゃないでしょうか。
あと、イラストなんですけれど、細音さんの作品は淡い感じのタッチの人がやっぱり似合うと、最初のシリーズの竹岡美穂さんのデザインのピッタリさもあってか印象としてずっと張り付いていたのですが、ふゆのさんはいい具合にしっくり来ますねえ、これ。

細音啓作品感想