問題児たちが異世界から来るそうですよ? 撃て、星の光より速く! (角川スニーカー文庫)

【問題児たちが異世界から来るそうですよ? 撃て、星の光より速く!】 竜ノ湖太郎/天之有 角川スニーカー文庫

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「―さあ、最終考察を始めよう」
打倒魔王アジ=ダカーハに向けて最後の作戦を立てる“ノーネーム”。その戦いで一人、また一人と散っていく同士たち。激しさを増す戦いの中で暗躍を開始する“ウロボロス”。主催者たちは徐々に追い詰められながらも決死の作戦に出る。“ノーネーム”は、逆廻十六夜は果たして“人類最終試練”を打ち倒すことが出来るのか!?連盟旗編&アジ=ダカーハ編の最終戦、開幕!
まさに試練! それは災厄などではなく、人類に課せられた試練だった。その「人類最終試練(ラスト・エンブリオ)」の名は魔王「アジ=ダカーハ」。
おのが絶対悪と定義することで、逆説的に正義を証明する者。
――“我、絶対悪なり。故に、正義は汝に在り”――
踏み越えよ、我が屍の上こそ絶対正義である。

倒される役割として用意された魔王という存在、それを自ら背負ったアジ=ダカーハ魔王閣下については「暴虐の三頭龍」でも熱く語りましたけれど、この最終決戦での閣下の気高く誇り高い絶対悪としての御姿は熱いなんてもんじゃなかった。まさに無敵、木っ端を蹴散らすように蹂躙する存在だった登場時よりも、むしろ主人公サイドが万全に態勢を敷き、戦術を練り、考察を深め、必勝を以って撃って出てきたのを迎え撃ったこの時こそ、さらにその雄々しさを、圧倒的なまでの存在感を感じさせられたように思う。まさに、格が違う。その力を以って、智を以って、理性を以って、主催者たちの必勝の策を文字通り上から叩き潰し、捻り潰し、真っ向から受けて立った上で蹴散らしていく。
それは元から備わったスペックの差によって無機質に叩き潰していくのとは違うのです。主催者側も限界を突破し、閣下の想像を超える形で力を発揮していくのですが、それをねじ伏せるのはまさにアジ=ダカーハの力ではなく、意思の力、絶対悪の旗を背負った者の気概であり、誇りであり、悪神としての自負であり、滅び行く人類の為に涙した大切な人への想いそのもの。だからこそ、主催者たちの限界を突破した力を、さらに限界を突破し、進化し、上回ることで彼らに更なる試練を課していく。これほど、人類を苛烈に愛した魔王が居るだろうか。
クライマックスに至ってから、そうジャックとの戦いで神の許しを見せた瞬間から、彼が体現しようとしていたモノの真の姿を目の当たりにした瞬間から、こみ上げてくるものに耐え切れず、泣きっぱなしでした。
彼こそ真の神であり、魔王であり、漢でありました。読み終えたあとの、カラー口絵で描かれたその異貌の後ろ姿、その背に浮かんだ絶対悪の旗印に、芯から震えるばかりです。
魔王も、それに立ち向かう者たちも、残らず全力を出し尽くし、命を燃やし尽くした史上に燦然と輝く熱戦でした。飛鳥も、耀も、もう十六夜に頼りきらず、己の血と涙を振り絞って戦いました。ジャックは……今回のサブタイトルである「撃て、星の光よりも速く!」、これはジャックを指したタイトルだったんですね。
マンドラも、誰も彼も、命、燃やしすぎだよ。魂からの咆哮が轟き渡る、物凄い決戦でした。
だからこそ、ラストシーン。そのままアジ=ダカーハが思ったように、十六夜に与える展開でも良かったのに。無敵であるからこそ、恐怖と、それを乗り越える勇気を知らなかった十六夜が、ついにそれを手に入れる展開でも良かったのに……どうやら、物語は彼にそんな報奨も与えてくれない、過酷な展開を要求しているようだ。何が起こったのか、まだわからない。想像もつかない。だけれど、これだけはわかる。ここから十六夜の本当の試練がはじまるのだ。

今回読んでいて、思わず「うぇ!?」と声が漏れたのが、「殿下」の仲間であり頭脳担当とも言うべき役割を担っていた少女りんの、その本名が明らかにされたシーンである。
なぜその名を持っている娘が、ここに居る!?
厳密にはまだ彼女当人かは定かではないんだけれど。それに、殿下の仲間たちと十六夜って、まだ対面してなかったんだっけ。なんか、耀と飛鳥と十六夜の関連性も含めて、悪辣な何かが横たわってる気がする。
最大の試練だった魔王アジ=ダカーハ閣下こそ退けたものの、ジンとペストは未だ殿下たちに囚われたまま。サンドラも、混世魔王の支配下に。遊興屋という怪しい存在が暗躍し、自体は混迷を深めていく。次で第一部完となるそうだけれど、果たしてどういう展開が待っているのか。想像も付かないや。

シリーズ感想