深き迷宮と蒼の勇者 -銀閃の戦乙女と封門の姫外伝 (一迅社文庫)

【深き迷宮と蒼の勇者 銀閃の戦乙女と封門の姫外伝】 瀬尾つかさ/美弥月いつか 一迅社文庫

Amazon

異世界クァント=タンで繰り広げられたすべてを滅ぼす凶生物ゼノとの死闘。ゼノとの戦いはもっと前から始まっていた。エアリア界の魔法を操る少年、法鷹和馬は勇者の血統をもつ青髪の少女あかり・クラインと出会い、迷宮の中で発見された和馬の記憶喪失の妹エーリエとともに深き迷宮、その最深部を目指し攻略に挑んでいた。数多の魔物が闊歩する迷宮の奥底に潜む陰謀と、世界を滅ぼす災厄の正体とは?!『銀閃の戦乙女と封門の姫』の前日譚『放課後ランダムダンジョン』が、加筆のうえ装いも新たに再登場!瀬尾つかさ書き下ろし、『銀閃の戦乙女と封門の姫』の後日談となる物語も収録!
【銀閃の戦乙女と封門の姫】の最終決戦にて颯爽と参戦して、縦横無尽の活躍を見せた蒼の勇者あかり・クライン(既婚・人妻)が、旦那となるお相手と出会い結ばれるまでのお話、というと語弊があるか。正確には、ゼノ戦争の前史。【銀閃の戦乙女と封門の姫】にていくども語られることになる「ゲート・ブレイク現象」と「英雄部隊の最後の戦い」の当事者であり、再びゼノが侵攻してくるまでの一連の出来事を担うことになる、英雄部隊の生き残りと蒼の勇者の後継者の物語である。
作中の時系列的にも、作品の出版時期についてもこちらの方が本当は速く、本作は新装版ということになるのだけれど、自分が読むのはコチラが後発。エリカお母さんもメンバーだったという英雄部隊の活躍については、ずっと気になってたし、ゲート・ブレイク現象から異世界クァント=タンで戦備が整えられるまでの具体的な過程も薄っすらと既に終わった話として語られるばかりだったので、こうして当事者の視点から語られる物語は疑問や好奇心を解消させてくれるという意味では、まさに痒い所に手の届く作品だった。新装版は助かったなあ。
なんでダンジョンなんかに潜る事になってたんだ? という最大の疑問についてもちゃんと答えが用意されていたし。
まだ十代の子供にも関わらず、重すぎる過去と心の傷を負ってしまった和馬やあかり、そしてエーリエ。年齢的にはまだ幼いと言っていいくらいの子供なのに、もう微塵も子供として生きる猶予も余裕も与えられていない彼らが、可哀想でならない。大人であるケンの忸怩たる思いもわかるというものだ。なのに、さらに彼らを戦場へと引っ張り込まなければ、人類が滅びてしまうという矛盾。重責というにも程がある負担である。否応もなく子供で居られなくなった彼らだからこそ、お互いに出会うことが出来たのは何よりの幸いだったのだろう。負担も重責も心の傷も、重すぎる真実も一緒に共有でき、一緒に背負うことが出来、人生を共に歩むことが出来、一緒に戦うことが出来る支え合える相手と出会えたということは、何よりの幸いだったのだろう。あまりにも悲惨で救いのない事実ばかりの中で、こればかりは運命の巡り合わせだったように思う。
エーリエについては、もっと悲惨な顛末になっても仕方なかっただけに、最悪の事態にならずに済んで本当に良かった。救われたと思って、期待を踏みにじられたら立ち直れないよ、これ。
一巻完結ということで、和馬とあかりがイチャイチャするような余裕はあんまりなくて、この蒼の勇者というぼんやり娘が、この朴念仁をどうやって攻略したかについてはざっくり端折られてしまったのはちょいと残念。まああかりが想像以上に奥手だったので、あかりが攻略という形にはならなかったみたいだけれど。これ、エーリエ苦労したんだろうなあ。その苦労をねぎらうためじゃないけれど、彼女についても責任負っちゃえばいいのに。エーリエもごちゃごちゃ言ってないで。
ちゃんと妹含めて、皆まとめて娶ってしまった実績の持ち主が、クァント=タンの方に見本として現れてくれたんだから。まあ、あっちにはラスボス属性の妹と黒幕属性の妹姫様がタッグを組んで暗躍するという怖すぎる肉食系ヒロインの支配領域なので、あかりとエーリエに同じ真似をしろ、というのも難しいというか可哀想なのだけれど。でも、人妻とか言っておいて、あかりにまだ手を出してなかったとか、当時の切羽詰まった事情もあるでしょうが、そりゃあかんでしょう、和馬さん!!

瀬尾つかさ作品感想