絶深海のソラリス (MF文庫J)

【絶深海のソラリス】 らきるち/あさぎり MF文庫J

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《水使い》それは22世紀の人類が生み出した″深海踏破の異能″――。山城ミナトは水使いの訓練生を指導する教官として、母校であるアカデミーに帰ってきた。そんな彼の教え子は二人。落ちこぼれでもマイペースな幼馴染の星野ナツカと、性格に難はあるが水使いとして至宝の才能を生まれ持つクロエ=ナイトレイ。時には反発を見せながらも前に進もうとする彼女たちを見て、ミナトは教官であることに楽しみを感じ始めていた。しかし、深海に沈む都市に″S.O.S″が鳴り響いた時――平和だったミナトの日常は終わりを告げる。【深海】×【絶望】 戦慄の本格パニックノベルが登場。――この《結末》を、僕達はまだ、知らない。
あばばばば。あかん、これはあかん。ダメージが半端ない。仕事中にも思い出して鬱ってしまうほど精神的にメタメタにされてしまった。これはあかん。
まったくノーマークだったのですが、【好きなライトノベルを投票しよう!! 2014年上期】でガンガンオススメされていた上に、内容が海洋パニックものということもあり、これは見落としていたと入手したのですが、見落としていたにも程がありました。

ネタバレ含むので、下に隔離します。



これはな〜、んあ〜、あかん、思い起こすのもしんどい。本作が秀逸なのは、敢えて本番となる事件の勃発に至るまでに巻の半分近くを費やして、日常シーンを描いた事にあるのでしょう。ここで描かれてるほのぼのとしたラブコメちっくなシーンがまた秀逸なんですわ。教官として優秀かつ遊び心満載で人をおちょくったり弄ったりするのが大好きという面白い主人公ミナト。それぞれ問題を抱えながらも、ミナトと関わることで能力的にも人間的にもどんどんと成長していくヒロインたち。もうね、アクシデントなしにこのまま普通に教官と生徒たちの海洋学園ラブコメものをやっても、抜群に面白くなったんじゃないだろうかという出来栄えで、それだけキャラクターへの感情移入、ああこの娘たち好きだなあ、頑張ってほしいなあと嫌っちゅうほど思い入れを注入させられたわけですよ。させられてしまったわけですよ。
あとで、その分ダメージ乗算させられるというのを知らないまま。
ちょっと舐めてたというか、甘く見ていたと言われても仕方ないと思う。ここまで効果的に、読み手であるコチラの精神にダメージ与えてくるとは思わなかった。
この手のパニックものにありがちな、緊急時に人間性の悪質な部分が露呈してしまう、という展開が無かったのも大きい。大概にして、悪役というか、無神経だったり自分本位の振る舞いをしてヘイトを集めるようなどうしようもない人間が出てくるもんなんだけれど、この作品、そういう悪い子いないんですよ。みんなイイ子で、それどころか絶体絶命になるほど人間の尊い部分、かけがえのない光を輝かせるような子たちばかりで、それが余計に傷を深くえぐるのです。がりごり抉るのです。
人間としての素晴らしさを輝かせれば輝かせるほどに、人間としてまともな姿で死ねない事が衝撃的でえげつないんですよ。まいった、もうこれはへこんだ。
その上、この惨劇へと至ってしまった最初の判断から間違っていた上に、全部無駄な犠牲だったとわかってしまった日には……。

状況がはじまってしまってからの展開もまた秀逸で、正直順番が完全に予想外だったんですよね。戦力を考えると、順当すぎるくらい順当な順番かもしれないけれど、物語として見るならば「え?」と思わず声が出てしまうほど意外な先頭バッターで、少なからず読んでる方である自分も、その死に様含めて動揺して、狼狽えるのを否めなかったのは大きいです。ここからもう冷静に読むとか不可能だったもんなあ。

もう読み終えたあとは暗澹たる気分に苛まれて、参りました。これで、完結じゃなくてはじまりでしかない、というのを匂わせているあたりに、なんか恨めしい気持ちすら湧いてきます。続くとして、どうも登場が予定されてるような伏線が敷かれているキャラの話題がちらほらありましたけれど、出てくんな、と思ってしまいます。出番あると、それはそれで死んでしまいそうじゃないですか。
いずれにしても、これだけの事になってしまった以上、生き残った人ももう二度と前半のような明るい日常は過ごせないだろう、と思うと深く重たいため息がこぼれる限り。続いても、ほのぼのニヤニヤ出来るシーンとかないんだろうなあ。あっても、もう無心で楽しめないから一緒なんですけど。あったらあったで、後半ズタズタにされると知っててニマニマとか出来ないですから!

評判に違わぬ、衝撃作でした。衝撃的すぎました。あうー。