落第騎士の英雄譚(キャバルリィ)5 (GA文庫)

【落第騎士の英雄譚(キャバルリィ) 5】 海空りく/をん GA文庫

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『ついに、ここへ来たんだ……』
暁学園の強引な参加表明により、波乱含みとなった七星剣武祭。それでも、夢見た大舞台を前に《落第騎士》黒鉄一輝の心は高揚していた。平然とした態度で大会参加者に交じる暁メンバーや、ステラの到着遅れといった不安要素がありつつも、初戦の相手、前回七星剣王・諸星雄大との交流を経て、一輝は全てを出し切る戦いをあらためて誓う。
だがそんな彼の前に《風の剣帝》黒鉄王馬が突如現れる。しかも王馬の圧倒的な力に立ち向かおうとする一輝を、思わぬ体調不良が襲い!?
盤外で渦巻く思惑、消えない不安要素、そのすべてを断ち切って頂点を目指す、誓いの第5巻!
兄貴ッ! 兄貴ッ! そうか、この作品なにが足りないのかと思ったら(いや、別に足りないと思ったことはないのだけれど)、兄貴キャラが居なかったのか! 実兄である王馬はなんか勘違いをこじらせているような、最強キャラのわりに小物っぽいので頭から外すとして、アリスは実績や頼もしさや立ち位置からすると兄貴キャラなんだけれど、この人はオネエだもんで違ったんで、時に主人公の壁となり先導者となり次のステージへと至るための架け橋となるべき大いなる敬スべき先達としての、兄貴分としてのキャラクターが居なかったんですよね。ぶっちゃけ、一輝は苦労してきた過去もあってか成熟した人間性の持ち主で、この手の自分を丸ごとひっくるめてぶつけられるような兄貴キャラって必要なさげだったんですよね。それ以上に、それだけの格・器を持ったキャラクターを出せるのか、という疑問があったわけで。さらには、前回から学園外での不正規戦、ルール無用の本物の実戦、殺し合いとしての戦いへと足を踏み入れてしまったわけで、今更正規の戦いで、学生レベルの試合で、充足出来るのかという疑念がつきまとっていたわけですが……。
居たよ、兄貴が居たよ。諸星雄大というトビっきりの漢が居たよ!!
いきなり初戦で前回の優勝者とか、どんな展開だよ、と思ってたんだけれど、本当に出し惜しみ無しのもてなしともいうべき人選でした。優勝者というと、またぞろ今まで頂点に立ち続けた負け知らずの偉そうなキャラかと思ってたら、この人は確かに昔から音に鳴らした強者ではあったものの、一度は再起不能になって挫折し、そこから不屈の闘志で這い上がってきた文字通りの叩き上げの人であり、最強の一文字を血と汗で掴みとった男なわけですよ。それも、自分一人の拘りや意地の為ではない、内にも外にも理由を持ち、原動力を持ち、それを正しく駆動させているまさに剣王と呼ぶにふさわしい逸材。
こういう人は、「ば、馬鹿なッ!」とか言わないから。絶対的優位や相手を格下に見る立ち位置にあっても、逆に圧倒的不利に置かれたり、立場が逆転してしまうような展開に見舞われても、微塵も揺るぎなくただカッコいい「兄貴」で居てくれるんで、頼もしいったらありゃしない。
こういう人と戦うことは、勝つにしても負けるにしても、どんな形であれ主人公に一つの壁を突破させるような、より一層人間そのものを磨かせてくれるような、そんな戦いとなってくれるので、その意味では一輝に一山越えさせる為には、これ以上ない相手だったのでしょう。ただ、一輝に今までの壁をブレイクスルーさせるためだけなら、どんな相手でも凡試合になってしまったと思う。この諸星の兄貴だったからこそ、ある意味無茶苦茶だったこの試合も、お互いが輝ける素晴らしい試合になったのでしょう。いやあ、最高の兄貴でした。惚れた。

しかし、諸星の兄ちゃんに対して、あの実兄の小物臭は何なんだろう。実力的には実際に圧倒しているのだろうけれど、他のキャラクターが主な脇役も含めて信念の中に厚みのある他者との共感を有しているのに対して、この人のそれは薄っぺらいし安っぽい。言うなれば、独り善がりなガキの妄言レベルなんですよね。こういうキャラこそ、ぐうの音も出ないほど圧倒的に叩き潰してもらわないと、スッキリしないですわ。この程度の輩に立ちはだかれたくない。生徒会長や諸星の兄やんとの一戦が素晴らしかっただけに、尚更に。こいつこそ、「ば、馬鹿なッ、ありえん!」とか喚くのがお似合いなんだよなあ。
暁学園で、一輝が本当に敵認定しているのが別の相手で実は王馬眼中にないあたり、色々と察せられてしまいますが。
肝心の暁学園も、どうやら玉石混淆っぽいみたいですけれど。

ラスト、ステラ様が荒ぶっておられる!! やばい、姫様遅れて登場してきてそんなド派手にぶちまけちゃってからに、美味しいところ全部持ってく気だ!!
ただでさえテンション落ちずにくすぶっていたところに、また火種にガソリンぶちまけて、ワクワクさせてくれたところで次回に、とか生殺しすぎるw

シリーズ感想