銀河女子中学生ダイアリー(1) お姫様ひろいました。 (ファミ通文庫)

【銀河女子中学生ダイアリー 1.お姫様ひろいました。】 庄司卓/伍長 ファミ通文庫

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天才少女と国を奪われた王女の出会いが宇宙を変える!?

小型超光速宇宙船【エクゥイッド】を駆り宇宙【スペース】デブリ破砕や資源【レアマテリアル】回収の技術を競うスポーツ、ロガーヘッド。射白トモエはそのデビュー戦を迎えていた。ノリで動くトモエと、憎まれ口を叩きながらも的確にサポートする幼馴染みのサヤ。二人で凄まじいスコアを叩きだす――が、乱入した謎の船により試合は無効!
しかもその船に乗っていた少女は逃亡中のシュリンゲンジーフ王国の姫様を助けるため、トモエ達を探していたようで……?
庄司卓のゆるふわスペースオペラ発進!
この下町のお茶の間から何光年も離れた宇宙とが直結しているスペースオペラは、庄司さんの真骨頂だわなあ。トモエのあの無謬性は、正しくヤマモト・ヨーコの系譜を受け継いだ主人公であると同時に、地上での日常と遠大なる宇宙での日常が全く同じ位相で描かれているあたりは【グロリアス・ドーン】の系譜でもあり。人類の技術レベルが本来なら地球圏を脱するか否かくらいなのに、外宇宙から持ち込まれた小型超光速宇宙船【エクゥイッド】という要素だけが技術レベルが突出していて、同時に個人レベル、それこそ中学生が乗っているくらいのところまで普及している、というチグハグな雰囲気は、【グロリアス・ドーン】でもそうだったけれど、実に面白い。国家や組織の思惑抜きで、宇宙という場所が一般人にとって身近になってるんですよね。これは、総合的に人類文明の技術レベルが向上して、一般人の行動範囲が宇宙まで広がった、というのとはまた少し違った空気感があるんですよね。今回、作品のコンセプトとして自宅の庭先からひょいと気軽に宇宙に上がっていくような、一昔前のスペオペみたいな日常と宇宙が繋がっている作品がやりたかった、という旨があとがきでも書かれていらっしゃいましたけれど、よく雰囲気出てたんじゃないかと。
厳密な航宙管制敷かれていて、いちいち出航するのに計画書提出して管制官とお約束のやりとりをするスペオペもまたいいんですけれど、こういう自転車的自家用車的感覚のも……って、本作でもちゃんと宇宙に上がるときには管制受けてるんですけどね。特定の港や発着場から離着陸しているわけじゃないのに、管制網の整備具合についてはこれ瞠目に値するのかもしれない。
面白いのが、これまで庄司さんが手がけてきたスペオペに出てきた宇宙船って、そのサイズがどれも尋常でなく大きいものばかりで、【グロリアス・ドーン】なんかでは太陽系をスッポリと収容できる規模の宇宙船も出てきたくらいで(それですら、決して最大レベルではなかった)、まさに宇宙の広さ遠大さに合わせたように、地球型惑星の感性に引っ張られない大きさを保っていたものなのですが、この【銀河女子中学生ダイアリー】ではまったく逆転して、【エクゥイッド】という二人乗りまでがせいぜいの本当に小さな宇宙船が席捲しているのであります。というか、地球人が保有している超高速恒星間宇宙船がこれしかないんですよね。凄いよね、大型バイクとか小型の手漕ぎボートくらいの大きさの宇宙船で、ひょいひょいっと気軽に何光年も先に飛んでっちゃうんだから。と、同時に大型の恒星間航行の出来る宇宙船が存在しないものだから、地球人類が総じて宇宙にあがるような開拓時代が到来しているわけでもない、日常の延長線上にポンと宇宙という行動範囲が出来た、みたいな感じが良く出ているのが、なんかこそばゆい。
それでいて、国ごと他の惑星に移っちゃったみたいな「シュリンゲンジーフ王国」みたいな例もあるわけで。
まあこの、スペオペとしての世界観の仕立て方については、ベテラン作家の面目躍如ってもんでしょう。面白い。
キャラクターの方は、少なくとも主人公に近しい世代の子たちは、ほぼ総じて女の子オンリー。自由人な主人公のトモエに対する、相方のサキちゃんの嬉し恥ずかしな嫁っぷりがこれ素晴らしいです。トモエに振り回されて顔を真っ赤にして「バカバカ」と怒っているのが、別の角度から見ると惚れた弱みで尽くすことに恍惚となってるようにしか見えないもんなあ。痒いところまで手が届く以心伝心ぶりといい、堅物の委員長タイプに見えて可愛げの塊なところといい、凄まじい鉄板ヒロイン振りであります、サキちゃん。この二人に惚れ込んで、影に日向に支援する謀略家系黒幕系ラスボス系カノジョこと打出マリカがまたいい味出していて、裏で片っ端から手を打ってくれるこの安心感(笑
アリーサ、ヒルダのちょっとポンコツの気配のするライバルチーム組や、事態の中心となってくるであろうお姫様と従者コンビと、もう一巻からキャラクターは出揃った上で、スペオペらしい宇宙規模の陰謀が進みだしているのもしっかりと描かれ、作品のスタートとしては掴みも十分だったんじゃないでしょうか。面白かった!
【ヤマモト・ヨーコ】の手直しや新作が中心だったこの数年、新作シリーズはわりと久々になるのでかなり期待が募っています♪

庄司卓作品感想