時槻風乃と黒い童話の夜 第2集 (メディアワークス文庫)

【時槻風乃と黒い童話の夜 2】 甲田学人/三日月かける メディアワークス文庫

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――少女達にとって生きることは『痛み』だ。現代社会に蘇る恐怖の童話ファンタジー第2幕。

「奈緒。わたし、可愛い?」
京本奈緒は、嘘が嫌いだ。その潔癖とも言える『嘘嫌い』のせいで親しい友達も少ない。だが唯一、天城紅美子だけは中学校からの親友と呼べる存在だった。
紅美子は奈緒が知る限り最上の美少女だが、過度の寂しがり屋と浅慮な言動のため、同性からは嫌われていた。
そんな紅美子の嘘や隠し事のないあけすけな言動は、奈緒にとっては心地よかった。
だが事件は唐突に起きてしまう。そして闇夜を歩く時槻風乃に出会い、二人の少女の間に黒い影が落ちる――。
「白雪姫」「ラプンツェル」など、現代社会を舞台に紡がれる恐怖の童話ファンタジー。
「白雪姫」と「ラプンツェル」というと、【断章のグリム】ではクライマックス、すなわち阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられた惨劇の元ネタとなった童話だったのだけれど、〈泡禍〉が介在しないこのシリーズでは純粋に人間の暗黒面が、少女たちを追い込んでいきます、と言い切れてしまえば楽なのだけれど、彼女たちを破綻するまで、破滅するまで追い詰めてしまったのは単なる悪意や負の感情じゃないんですよね。
強いて言うなら、幼い頃から家族が少女たちに強いてきた人格形成が、本来輝かしいものとして立脚するはずだった大切な人との「絆」を、逆に破滅への導火線へと変貌させてしまった、というべきか。彼女らにとって、結ぶに至った「絆」があまりにも強固でありすぎたが故の悲劇だったのか。
いずれにしても「白雪姫」にしても「ラプンツェル」にしても、決して「絆」を蔑ろにして相手を裏切る物語ではなかったのだ。両方共、最後までお互いの中の友情は本物であり、誰よりも、そう誰よりも大切な人だったというのは間違いなく……だからこそ起こってしまった出来事であり、だからこその惨たらしい結末だった。あまりにも、救いがない。
誰が白雪姫で、誰が継母の女王か。誰がラプンツェルで、誰が塔の魔女だったのかは実際に読んで確かめて欲しい。相変わらず、物語における配役は絶妙と言っていい。すべてが終わってしまったあとに童話の登場人物を当てはめてみれば、それは童話の登場人物の悲劇を現代における形に変えて、身震いするほどに再現されている。それは確かに現代の白雪姫で、現代のラプンツェルだったのだ。

それにしても、一巻からずっと続いているのだけれど、一連の少女たちの悲劇の発端となっている狂いを生じさせているのって、総じて家庭環境が原因だったりするんですよね。何らかの形で幼いころから少女たちに精神的な圧迫や思想の強制がつづけられた結果、どこかいびつな人格形成がなされてしまい、それが破滅を引き込んでしまっている。親や家庭環境というものが、どれほど子供に大きな影響を与えるものなのかがつきつけられているかのようだ。
今回に関しては、特に「ラプンツェル」が酷いなんてものじゃなくて、これほど惨たらしい子供の人格を無視した親としての在りようは見るに耐えなくて、あの手の平返しのはしごを外すシーンには反吐が出そう、という表現が相応しい。あれは本当にくそったれだった。あまりにも救われないよ。

風乃は、今回は言うほど導火線に火をつける役としては派手な動きを見せていなかったように思う。むしろ、洸平の方が起爆剤になってしまってるんですよね。彼が原因でもなんでもないんだけれど、偶然なのか何なのか、彼がその場面にただ居たこと、存在そのものが破滅の引き金となってしまっている、というのは、同じような悲劇を食い止めようとしていた彼の願いからすると、随分ときつい顛末なんじゃないだろうか。

1巻感想