フルメタル・パニック!アナザー8 (富士見ファンタジア文庫)

【フルメタル・パニック!アナザー 8】  大黒尚人/四季童子 富士見ファンタジア文庫

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舞台は決戦の地へ―『カエサル・プロジェクト』を追って新生D.O.M.S.は、旧ソ連のガルナスタン共和国にたどり着いた。そこで達也とアデリーナは、この国の若者たちと思わぬ邂逅をとげる。ガルナスタン大統領の息子オルカンと、その友人ソラヤ―祖国の明日に惑う青年たちとの束の間の交流をよそに、世界は激しく揺れ動いていた。中央アジアの荒涼たる大地に交差する、理想、野心、そして愛。錯綜する謀略は、戦火を加速させていく。愛別離苦のSFミリタリーアクション、終演序曲!!
菊乃の新生D.O.M.S.の制服姿が思いの外よく似合う! ってか、年齢のわりに色気がありすぎだよ。一瞬、マオ姐さんが復帰したのかと思っちゃったじゃないか。というわけで正式に菊乃がチームに加わり、達也とアデリーナの間に一石を投じる事になるのかと期待したのだけれど、菊乃本人はやる気満々な一方で達也とアデリーナに余裕が全然なかったもんだから、色っぽい雰囲気にはさっぱりならず。達也は、ついに人間を自分の手で殺してしまった事に、自分の戦闘データが兵器に転用されて戦争で惨禍を広げていることについて完全に前のめりになってしまっていて、他の事に目を向ける余裕はさっぱりないようだし、アデリーナはアデリーナで達也から平和で穏やかな帰るべき場所を奪ってしまったんじゃないかという罪悪感、怯えに苛まれていて、菊乃のちょっかいに対してもまともに反応出来てないんですよね。達也に対して腰が引けてしまっている。
このすれ違いは主人公たちだけじゃなくて、ガルナスタン共和国のオルカンとソラヤの方でも起こっていて、こちらはさらに深刻な事態にハマり込んでしまっている。このゲストキャラクターたちについては、以前西アフリカのマランパ共和国の件で、悲惨な結末に陥ってしまっているだけに、あれの二の舞いだけは避けて欲しいのだけれど、すでに今回の段階で瀬戸際まで突っ込んじゃってるんだよなあ。
兎にも角にも、アデリーナにしてもソラヤにしても、こうまでこじれてしまったのは彼女たちが男心をわかってないからだよ、うんw 少なくとも貴女たち自身が思っているよりも、彼ら男の子たちにとって貴女たちの価値は絶大で、だからこそ自分を軽く見てそこから男の子たちの決意やら判断基準を蔑ろにされてしまうと、びっくりするくらい男の子たちは傷ついてしまうわけだ。繊細なのよ。
アデリーナもねえ、帰るべき場所を奪ってしまった、彼を殺し合いの場に引き入れてしまった、なんてうじうじ今更悩んでても仕方ないのですよ、今更どうにもならないんだし、それを選んだのは達也なんだから。なんで達也が日本での生活に背を向けて、こっちに来てしまったのかをちゃんと考えてない。
彼女は自信を持ってこう思うべきなのだ。達也の帰るべき場所は「私」なんだ、と。
その意味では、彼女に達也にとっての自分自身の価値をこれでもかと思い知らせるには、今回のラストの展開はむしろ幸いなのかもしれない。この娘は、言ってもわからないタイプなので、嫌というほどシチュエーションで叩き込んで無理やりにでも理解させないと、入力できなさそうだし。
なので、菊乃は不憫といえば不憫なんだよなあ。まあ当人は概ね了解した上で食いついているようなのですが。言動の割には見返りをあんまり求めていないっぽいところは、肉食系っぽさとは裏腹に献身的なんだよなあ。

図らずも、この時期ウクライナ情勢の大暗転という、旧ソ連地域での紛争が勃発して現実と小説が被ってしまうという顛末になってしまったわけですが、色んな意味で現実に引っ張られずに踏ん張ってやって欲しいですね。

シリーズ感想