スカイ・ワールド (8) (富士見ファンタジア文庫)

【スカイ・ワールド 8】 瀬尾つかさ/武藤此史 富士見ファンタジア文庫

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スカイワールド―それは魔法と科学技術が同居する世界で、無数に浮かぶ島から島へと飛空挺で旅をするオンラインRPG。アリス救出の糸口があるとされる、第三軌道『バロックの牢獄』の攻略を開始したジュンたち。そこは緊急脱出を始めとする、テレポート魔法一切禁止の高難度ダンジョンだった。そんな中、踏み入れたとたんに罠とモンスターが大量に襲いかかってくる、チートフロアに挑む面々。手も足も出ない状況に、ジュンはあることを思いつく。それは誰も試さなかった、この世界を逆手に取った手段で―!?世界を愛する心が導く、熱きオンライン冒険ファンタジー!!
うわぁ、これは自分には廃ゲーマーとか絶対に無理だというのがよく分かる。ゲームで何度もトライアル・アンド・エラーを繰り返して攻略法を導き出していく、という気の長い手段に耐えられないですよ、きっと。大規模レイドダンジョンフィールドでは、何度も死んで死んでを繰り返してちょっとずつダンジョンの奥へと進む方法、現れる敵の攻略法を見つけ出していくそうですけれど、艦これのイベントで粗方攻略情報が出揃ったあとで、あとは単に準備を整えてアタックを繰り返せばいい、という段階に至ってすら、途中で気力が尽きてしまう程度の自分ではとてもとても。
まあ、こういうのは他にやりたい事が一切なくて、ただただひたすらにそのゲームにのみ集中でき、夢中になれる環境があれば、まったく苦にならないんでしょうね。廃ゲーマーというのは、まさにそのゲーム以外に何も必要としていない環境、状況を手にすることの出来た人たちが成る事のできる存在なんだろうなあ。
その結晶とも言うのが、あの大学八年生なのでしょう。
自分は結局、あれもこれもとしたいことが山と積もって消化するのも儘ならないから、集中できんのよねえ。せめて、それをやっている間くらいは集中して、終わったらきっぱり切り替えて、というのが出来れば、もっと効率的に消化出来ると思うんだけれど。
ジュンもこの手の一極集中で、他をまったく省みない廃ゲーマーなのは間違いないのだろうけれど、幸か不幸か彼がハマっているゲームというのは、仲間と組んで世界を攻略していくオンラインRPGで、人間関係も重要になってくるせいか、案外と対人関係も気を遣うことが出来、ひいてはそれが女性陣との繊細さが要求される距離感の構築にも一役買っているんだろうけれど……だからこそ、リアルに戻った時にゲームと関係ないところでこれだけの人間関係を維持発展させていく事が出来るものなのか、心配になってくるところです。カスミさんとか現実世界の方がなんか難しそうだもんなあ。むしろ、あっちに帰った時はエリとかヒカルの方が頼もしそう。どちらにせよ、サクヤが居てくれないと始まらなさそう、というのはありますけどね。さて、ジュンとサクヤが組むと現実世界でもハチャメチャな事を始めそうで、実に恐ろしいのですけれど。
でも、このスカイ・ワールドの世界では、二人が組めば何が起こっても恐ろしくない無敵感は、果てがないと言っていいくらいのものでした。それこそ、ゲーム上の制約なんかでも無視してしまいそうな万能感が存在したわけです。
だからこそ、だからこそのこの展開だったんだろうなあ。
巷で昨今よく使われるようになった「チート」という言葉は、つまるところ「ズル」という意味です。その意味では、アリスを封印し、今ジュンたちの前に敵として厳然と現れたこの存在は、ジュンたちと同じステージに立つ事から拒絶した、まさにズルの塊なんですよね。相手をルールで縛っておきながら、自分は易易とルールを無視して制限を超えた結果を強要してくる。これを卑怯と言わずしてなんというのか。
だからこそ、ゲーム上のルールに則りながら、その範疇を飛び越える結果を引っこ抜いてくるようなジュンとサクヤのコンビは、このチートの存在に真っ向から立ち向かえる唯一の希望だったと思ったのに。
アリスというもう一方の制約外の存在を手に入れたものの、それ以上のものを失ってしまったジュンたちに、果たして希望はあるのか。いや、希望の有る無しを抜きにして、なんとしてもやり遂げなくてはならない状況になってしまったのですけれど。

しかし、こういう話になってくると、変に「ズル」い能力やオーバースペックを持っている人よりも、制約のもとにありながらも無双状態と言っていい結果を導き出す人のほうがよっぽど凄い感がある。具体的には、あの小学生w
リュカさんがもう小学生というレベルじゃないんですけれど。登場時から繰り返し言われていることですけれど、彼女に関しては巻を重ねるごとにその度合が深刻化しているというか、もう人類史の偉人レベルに到達してしまっている気が。この小学生、中身も本当に小学生か? 
ある意味、サクヤよりも便利キャラ、無敵キャラすぎて、戦闘力がないというハンデを無視して、彼女さえ居たら万事なんとかなるんじゃないか、とすら思えてくるんですけれど。

さて、あらすじにもあった今回の話の肝心の要素であるゲームのシステムを現実に近くなったことを逆手にとって全く新しい手段で云々、というのは、てっきり【ログ・ホライズン】みたいな常識のパラダイムシフト、レベルの事を期待してしまっていたので、え?それ!?という感じになってしまいました。いや、それはちょっと高望みしすぎてたのか。


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